見出し画像

スカイリムプレイ日記~狩人ちゃん~ #52

こちらの続きです

『乱心』①


 ソリチュードの伝統的な祭、『オラフ王の焚刑』は盛り上がり、街の人々も吟遊詩人の大学に続々と集まっています。
 そんな中、ウッドエルフの物乞いが話しかけてきました。彼に1Gを渡すと、感謝の意と共に自らを『デルヴェニン』と名乗り、妙な話を始めました。

「我が主は俺を見捨てた!民を見捨てた!もう何年も俺に会おうともしない…休暇の邪魔だといって!手を貸してくれないか?」
 どうやら彼は仕えていた主人に見捨てられ、物乞いとして生活せざるを得なくなってしまったようです。それが本当だとしたら明らかな不当解雇です。なんとかしてあげましょう。
「その主人はどこにいるんですか?」
「最後にお会いした時、あの方はブルー・パレスの友人を訪ねていた。だが、あの首長ほど俗物的な者などいやしない。いや…比べるのもばかばかしい」

散々な言いよう

「あの方は宮殿の立ち入り禁止となっている棟に入り、古い友人と話をした。最後に二人がお茶を飲んでから何年も経つそうだ」
 立ち入り禁止の棟に入ったということは、そのまま衛兵に捕らえられてしまったのではないでしょうか。
「あの方はブルー・パレスの『ペラギウスの羽』にいる。扉には鍵がかかっている。あぁ、それから、寛骨を持って行ってくれ…大切なものだ。これがないとペラギウスの羽には入れない」
 寛骨?ペラギウスの羽?何がなんだかわかりませんが、とりあえず渡された骨を荷物にしまいました。しかしこれが鍵というわけでもなさそうです。

「とりあえず努力してみますが、説得できるとは限りませんよ。もう働く気がないと言われてしまったら…もしかしたら新しい主人を探した方が早いかもしれません」
 そう言ってみますが、デルヴェニンさんは断固として首を縦に振りません。
「あの方の導きがなければ、故郷はバラバラになるだろう。北が南に戦をしかけてしまう!聖なる炎は揺らめき、消えてしまう!戻ってきてもらわねばならない。あの方は大した人物だ。だが称賛されることはほとんどない。広大な双子の帝国を支配し、民衆の心も支配している。誰もが知りながら、その名を呼べるものは少ない!」

無名の王国の王様か何かでしょうか?

「だが…自分もその名を呼ぶことを禁じられている。気が散るからだそうだ。そして、あの方の怒りに火をつけた者には悲劇が待っている。だが、見ればすぐわかる。俺をこんな風にしたのもあの方なんだ!」

愛憎まみえてますね…

 デルヴェニンさんと別れた私は、ブルーパレスには向かわずに祭会場へ戻りました。執政のファルクさんには多くの借しがあるので頼めば『ペラギウスの羽』の鍵を借りられるとは思いますが、もう夜も遅いのでそれは明日にして、今夜は祭りを楽しむことにしたのです。

 すると焚刑を行う広場で、ウナという女性と知り合いました。ウナさんは偶然にもブルーパレスで使用人として働いているというので、「ペラギウスの羽に入りたいんですが…」と頼んでみました。
 ウナさんはそれまで祭りを楽しんでいた顔を険しくしかめ、「絶対に無理です」と首を横に振りました。
「あそこは危険だし、ファルクにも嫌われていますし、毎年エルディがクモ退治に行くような場所ですよ」
 エルディさんはウナさんと同じブルー・パレスの使用人ですね。そんな場所があのブルー・パレスに…とはいえこれで引き下がるわけにはいきません。
「どうしても入らなければならないんです。お願いします!」
 私はブルーパレスに出入りしているエリシフ首長御用達の御用聞き狩人ですから、使用人のウナさんがそう邪険にはできないはずです。そのように人の足元を見て無理なお願いをする私に、ウナさんは渋々鍵を渡してくれました。
「どうしてもと言うなら…ただ、亡霊には気をつけて!一度、突然現れたことがありますが…あまりの恐怖に一週間はおびえていました」

亡霊?

 どうやら『ペラギウスの羽』は亡霊騒ぎにより、開かずの扉となってしまっているようです。もしかしてデルヴェニンさんの主人とも何か関係があるのでしょうか?

 祭にドルテの姿がないので家へ呼びに行くと、もう眠っていました。就寝時間を守るいい子です。

あとでお菓子あげよう

 祭は十分楽しんだので、服を着替えてブルー・パレスに向かうことにします。

吟遊詩人っぽい服をチョイス!

『ペラギウスの羽』

 ブルーパレスに入り、謁見の間につながる階段に向かって右側の扉。ここが『ペラギウスの羽』と呼ばれる、立ち入り禁止の棟です。ウナさんから借りた鍵を使って中に入ると――

おじゃましまーす
きっ汚い!
暗い!
蜘蛛の巣だらけ…

 かつては立派な部屋やバーカウンターがあったようですが、すべて放置され荒れ放題です。手入れを拒否され、打ち捨てられた場所。こんなところでいまだにデルヴェニンさんの主人が休暇を楽しんでいるとはにわかに信じられないのですが…

 階段を上がり、曇った窓から光の差しこむ廊下を進んでいくと――

「ペリー、ペリー、もっと紅茶を」


!?

 突然目の前が霧で覆われた、うすら寒い原っぱに変わりました。もちろん建物を出た記憶はありません。しかしここは枯れた木で囲まれ、乾いた砂と石の上に、痩せて生気のない草が無造作に茂る、岩場の中の荒れ地です。
 さらに私の服も、持ち物もすべてなくなり、身に覚えのない上等な服や帽子、靴を身に着けていました。

 荒れ地の中央には野外に置くにはあまりにも不自然な、大きなテーブルが置いてあり、並べられたチーズやワイン、様々なご馳走を前に二人の男が座っていました。

 「いや、それはできない。少しも引っかからない。それに、やる事がたくさんあってな…」
 椅子に座って背中を丸めている男が、疲れ切った声で言います。
「ものすごい数の不快な奴らを相手にするんだ。反対ばかりする者。愚か者。中傷する者。いいか、死刑執行人はもう三日も寝てないんだ!」
 くたびれた男の嘆きを受けて、玉座の前で立つ白い髭の男が大きな声でわめきました。
「お前は自分に厳しすぎるぞ。親愛なるペラギウス。狂乱の中で人を殺めた者よ。お前がいなかったら人民は何をしたらよいのだ?舞うか?歌うか?笑うか?長生きして?」

ご馳走がたくさん…

 なんの話かは全くわかりませんが、玉座の男が元気のない男を励ましてあげているようです。そこでやっと気が付きました。彼らのどちらかが、デルヴェニンさんの主人なのだということに。

「お前は最高のセプティム王だったぞ。いや、まぁ、マーティンの次に最高か。だが奴は龍神になったからな。卑怯な奴さ。」

セプティム王?

 座っている彼がかつてのセプティム王、ペラギウスだとしたら、ここは時空が歪んだ空間、あるいは彼らはどちらも亡霊ということなのでしょうか。

「あの卑しむべき事件のせいであそこにいたんだ。素晴らしいひと時だったぞ!蝶、血、きつね、切り取られた首…ああ、それとチーズ!チーズのためなら死んでもいい」
 支離滅裂です。少なくとも玉座の前で演説を打つ白髪の男は、完全に正気を失っているとしか思えません。
 その男が叫びます。
「フルック!さて、そっちがその気なら…お暇させてもらおうかな。ごきげんよう。聞こえたか!?」
 ペラギウスはうつむき、陰鬱とした声で答えます。
「そうだ、行け。きりのない課題や責務の邪魔をしないでくれ…」

消えた…

 ペラギウスは青い炎と共に姿を消しました。
 残された玉座の男に近づいてよく見れば、その目は瞳がなく真っ白で、見た事のない仕立ての洋服を着ています。確かに人の姿形で目の前に立ってはいますが、人ならざる者であることは見るだけでわかります。

 声をかけると、いきなり大きな声で𠮟りつけられました。
「無礼な!旧友を10年や20年もてなすぐらい、いいじゃないか」

よくない。

「あの、ここはどこなんでしょうか」
「ペラギウスの心の中だよ、間抜け」
「ペラギウスの心の中…?あれは誰なんですか?」
「定命の者は好奇心で身を滅ぼすな。どうしても知りたいなら教えてやる。ペラギウス3世だ。狂王と呼ばれていたか?タムリエルの皇帝だったのは400年前ほど前の話か。おそらくお前もペラギウスの宣告の事は知っているな?死の床で…あぁ、思い出したぞ。奴は禁止したのだ…死を!そうだ!死が違法になったのだ!」

それは手遅れですね

 さきほどまでここにいたペラギウス3世の心の中で、ペラギウス3世本人を10年20年かけてもてなしていた、と。これ以上深く考えてはいけない、防衛本能がそう訴えます。

「ここには伝言を届けにきただけなんです」
「本当かぁぁぁ!?ふむふむ、早く教えてくれ。唱歌か?召喚か?待て、わかったぞ!アルゴニアンの愛人の背中に書かれた脅迫文か!あれはいいな。どうだ?定命の者よ、早く言ってくれ。私の時間は無限じゃないんだぞ!…本当は…無限だ、ちょっとしたジョークだな」
 難しすぎます…
「冗談はさておき、早く教えてくれ」
「休暇を切り上げるよう説得しろと頼まれたんです」
「本当か?誰がそんなことを?待て!言うな!当ててやろう。モラグか?いや、リトル・ティムか。玩具屋の息子の。ライサンダス王の亡霊か?あるいは、そうだ!スタンリーだな。あのバルウォールから来たしゃべるグレープフルーツだよ。どう考えてもそんなはずはないか。だろう?はっ!どうてもいい!正直知りたいとも思わんよ。お楽しみをぶち壊すこともない。だがもっと大事な事は…ちっぽけちんけな使い捨ての小さき者が、本当に私を説得できるかだな?そんなのは…馬鹿げている。誰が相手か分かっているのか?」

 『誰が相手か』?そう問われれば、この異常な状況、定命の者という言い回しから、この人がなんらかのデイドラ王であることは確定でしょう。サングインとの『思い出の夜』に起きた状況とよく似ています。

 しかし目の前のデイドラ王の立ち振る舞いや支離滅裂な言動はどうにも常軌を逸していて、これ以上深入りは危険だと判断しました。
「私が知っていることは、あなたの民が帰還を望んでいることだけです」
 そう答えると、
「ふわああああ…」

ふわああて

 男は大きなあくびをしました。
「あぁ、失礼。何か言ったか?悪いな。我に返ってみると、無性に…退屈だ!本当さ。お前は狂乱のデイドラの王子、シェオゴラスの前に立っているのに、ただの…伝令だと?嘆かわしいな」

シェオゴラス?

 シェオゴラスといえば、召喚士ソロンが信仰していたデイドラ王です。ソロンは周囲の人間を巻き込んで狂気に陥り、シェオゴラスに近づきたいがために試行錯誤した末、デイドラの『セイント』や『セデューサー』の召喚を成功させていました。

 ソロンはソリチュードの下水道に潜んで彼の世界への交信を試みていたわけですが、まさか目的の対象がその目と鼻の先で10年も20年もペラギウスにお茶をふるまっていたとは。もしもソロンが私より先にデルヴェニンさんのお願いを聞いていたら…どうなっていたのでしょうか。

 しかし、そんなことは今はどうでもいいことです。シェオゴラスの意味不明な言動を聞き続けるのも疲れてきました。
「それで、休暇は終わるんですか?まだ続けるんですか?」
「さて、そいつは難しい問題だな。そうだろう?正直なところ、頭が変になったデイドラにはどれほど休息が必要なのだ?」

自覚あったんだ…

「だからこうしよう。私は去る。そうだ、もういい。休日は…もう終わった。退屈な日常に戻ろう」
 おや、これは思いのほか色よい返事がもらえました。しかしほっとする間もなく、シェオゴラスは続けました。

「というわけで、一つだけ条件がある」
「じょ、条件?」
「まずお前が出口を見つけてくれ。頑張れよ」
「あ、なんだ、そんなことですか。シンプルですね」
 もっと無理難題を仕掛けられることを覚悟していたので、拍子抜けしてしまいました。しかしシェオゴラスは少しばかり緊張を解いた私を見透かしたように「そうか?」としたり顔です。
「周りを見る気になったか?あえて言うが、ここはソリチュードの植物園ではない。お前はここがどこかわかるか?本当はどこにいるか分かるか?」
「ここは…」
「偽りの緑が茂った皇帝ペラギウス3世の心へようこそ。そうだ!お前は死者の心の中にいるのだ。狂乱の中で人を殺めた王の心さ」
 ペラギウス3世の心の中――さきほど姿を消したあの男は、もうすでに死んでいる。ないはずの世界にどうやって入ったのかもわからないのに、どうやって出ろというのでしょう。
「考えていることは分かるぞ。剣と呪文と隠密とそのほかのくだらない事全部を使えばこの難局を乗り切れるのかとな…そうだろう?あるいは…」
 シェオゴラスは一層声を荒げて

「ワバジャック!」
 
と叫びました。
「どうだ?どうだ?こいつは予測不能だったよな?」

ワバジャック?

 シェオゴラスはひとしきり笑うと、満足したように玉座に腰を下ろしました。
「あの、ワバジャックとは一体なんのことですか?」
「悪いが、今は魚フライを頬張ってて忙しいんだ。とっても気難しくなるうまさだぞ!」

どゆこと?

 私の問いかけにはこれ以上答える気がないようです。

どうしろっていうのよ~

 とにかく、この空間を一人で走り回って出口を探し出すしかありません。果たして私は無事にソリチュードへ帰れるのでしょうか。

次へ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?