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②〇『白獅子夢物語』

♰20 ノヴァ。

 一目見た瞬間、愛し合いたいと思った。
 自分のためにしか生きていなかったから、初めてだった。
 愛して――――彼女に愛されたいと、願ってしまった。

「……キオリ様?」

 彼女の部屋に戻れば、高齢の侍女に髪をとかされながら俯いていたから首を傾げる。
 彼女が顔を上げると、艶やかな栗色の長い髪が、健康的な肌色を見せる胸元を滑り落ちた。
 俺を栗色の瞳で見上げると、少し曇った顔のまま微笑んだ。

「あ、ノヴァさん。おかえりなさい」
「キオリ様、動かないでください」
「ハイ……」

 髪の毛を編まれている彼女は、侍女に従い俯く。
 笑みに元気がない。原因を考えながら俺は歩み寄り、ソファに座る彼女の足元に膝をついて顔を覗いてみた。
 彼女は、きょとんと丸めた目を瞬く。

「……なにか、あったのか?」
「?」
「……エドワード達に、なにかされたか?」
「いえ。いい人、だと思いますよ」

 ぱちくりと瞬きする彼女は、平然と笑う。部屋に送ると言い出したエドワード達に嫌な思いをされたわけではないらしい。

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