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①⑨『白獅子夢物語』

♰19 子犬か少女か。


「……理解できていない子どもに、酷なことをなさる必要があるのですか?」

 三人の部下に挟まれて、送られる少女を紅い瞳で捉えながら、ベルベスは疑問を口にする。

「おや、ベス。君らしくない。神の森の中の捜索が君の洞察力を下げるほどの疲労を与えたのなら、休暇をやろうか?」

 赤い紅茶を啜りながら、アルリック陛下は美しい微笑を浮かべながら皮肉を言う。
 ベルベスは微動だにせず、アルリック陛下の答えを待つ。

「君にはなにもわかっていない子どもに見えたのかい? 確かに彼女は年相応に理解力に欠けた子どもに見える。少々自己主張にも欠けているな、人見知りだろう。恐らくいい家庭で育ったわけではないのだろうな。出来るなら"運命"には、救世主らしい人格の少女を選んでほしかった」

 伝説の聖少女を観察結果をアルリックは話し出す。
 横に立つベルベスもノヴァも、黙って聞いた。

「緊張に耐えるように自分の手を握り絞めていた彼女は、それでも私達を見ていた。観察するかのように、ね。まるで私達が信用に値するか、息を潜めて見定めていた。俯きがちでも彼女の瞳は、真っ直ぐに見てくる。瞳の中を覗いて心を見透かそうとするかのようにね」

 先程まで隣に座っていた少女は、国王を前にして緊張して縮こまっているようにも見えたが、時々向けられた瞳は怖じ気付いていなかった。
 白と淡い橙色のドレスを着た栗色の長い髪の少女の瞳に、アルリックは強い意志を見付けたのだ。

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