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⑥『白獅子夢物語』

♰06 魔法。


夕方になると、空が橙色に染まる。でも、やっぱり太陽は見えなかった。
 湖に浸かりながら、短剣で削って作った櫛で髪をとかす。
 シャンプーの代わりに細かく刻んだアロエのおかげか、すっきりしたし、するりと髪の毛の間を簡単にすり抜けてくれた。
 ちょっと上機嫌になって口笛を吹く。

「レオくんは水浴びしないの?」

 背を向けて寝そべるレオを誘う。
 けど、レオはただ尻尾を振るだけで振り返ってくれなかった。

「水が怖いのー? 猫ちゃん」

 ニヤニヤして言ってみたら、いきなりバケツをひっくり返したようなって表現がぴったりなほどの大量の水が降ってきた。
 大雨かとギョッとするけど、空は橙色。雨雲は見当たらない。
 レオは濡れていないけど、振り返れば水面が激しく揺れていた。
 なんだ、今の。首を傾げても、答えはわからなかった。

「……あれ?」

 目を開くと、朝だった。
 レオがあたしの頭を囲うように丸まって眠っている。
 夜には必ず、あの男の人と会えると思ったのに、会えなかった。あたしが熟睡したせいかな。
ちょっと、残念。

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