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②③『白獅子夢物語』

♰23 エリオット。

 それは強烈な一撃だった。女性で強烈な一撃を喰らうなんて、二人目だ。
 ベルベス隊長の膝蹴りを溝に喰らった時は、人生一番の衝撃と痛みを味わった。
 今回は事故で、彼女は必死に謝る。
 国を世界を救うと伝説のある異世界の少女。聖少女。キオリって可愛い響きの名前の女の子。
 神々しいほど美しい少女を想像していたけれど、実際"運命"に選ばれたのは小さな少女。
 年相応に気弱で俯きがちな顔は明るい茶髪に包まれていると更に小さく見えてしまう。
 仲良くなろうと話し掛けても緊張で強張ってしまい、なかなかチャンスがなかった。
 今日は訓練を欠席したからキオリ様に会えず、どうしたら仲良くなれるかと考えながら昼休みのサッカーをしてたら、うっかり窓にシュートしてしまった。
 エドワード達に罵声を喰らいながら、走ってボールを取りに行けば、階段そばにキオリ様がいた。
 リフティングをする女性は初めて見る。
 異例の女騎士隊長であるベルベス隊長も、サッカーはしない。
 ……あの人は飛んでくるものは反射的に一刀両断してしまうから。
 三回、ベンチで仮眠をとっていた彼女に誤って飛ばしたら、寝惚けた彼女に切り落とされた。
 それ以来、彼女の仮眠中は誰も近付かなくなった。とても綺麗なんだけれど、同時に怖い人だ。
 キオリ様は真逆だった。おしとやかな女の子とは違うけれど。
 膝で白いサッカーボールを宙に蹴り上げる。ポンポン、とリズミカルだ。数が増えるにつれて、目を輝かせていき笑顔になっていた。

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