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【短編】 サーカス

「はい、飛んで。」  その掛け声と共に、綱で繋がれただけの頼りなく見窄らしい、横長の棒を両手にしっかりと握って、梨花は震える両足を、地上7メートルの高さに設えられた粗末な板の外に投げ出した。落下する体が弧を描いて再び上空へと投げ出されるのが解る。全身が緊張で強張り、耳の奥が膨張する。頭のどこかが痺れて恐怖に目が眩む。地上にいるインストラクターは容赦なく冷淡な声で次の指示を出す。 「はい、両足を上げて。」  両腕に最大の力を込める。限界ギリギリでようやく両足が上がり、それと同時

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