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【感想】劇団人間嫌い/かわいいチャージ24

岩井さんの書かれる脚本は、良い。とても良い。私にとっていい演劇は、ハッとするセリフが殊更にさらっと日常の中に有る様のまま舞台に乗ること。「みんな令和に期待しすぎなんだよ」痺れたわぁ

劇中、ひたすらに画面がずっと『可愛い』。
なんかほんと、最近のおなご様、可愛すぎない??レベル高すぎじゃない??

その可愛さは本来、自分を元気にしてくれるお給仕スポットであったはずなのに。

スマホは形そのものと同じように世界を小さく映す。圧倒的ビジュが手元にあるのにそれは自分のものではなく、自己否定感を産み続ける悪魔として心に巣食う。

『可愛い』になりたいだけなのに、それは気づいたら私たちを雁字搦めにする包帯のようになって久しい。いつのまにか、本来の姿を忘れて醜く、歪んだアイラインよりどす黒く、いつまでも終わらないダウンタイムのようにグロい。

でも終始舞台上はラメがキラキラとして美しい。

その可愛さに理屈はない。
『可愛い』という感情は、だれのためでなくていい。
かといって『自分を守るため』などの武器にしなくてもいい。

『なんのために可愛くなるのか?』は、
もはや『なんのために生きるのか?』とニアリーイコールであると感じた。

生きるのに、理由なんていらない。だれの許可も評価もいらない。

すなわち自分を勝ち取るということだ。
他者の人生からの奪還。同時に生まれる、自分で自分をしあわせに導く責任を引き受けて立つこと。その恐怖すら受け入れること。

ラストも大変私の好みでポロポロリ。
特別な大団円なんか要らない、生活にバズりなんて本当は存在しない。

私たちは大きく絶望しては小さな希望と出会い、自身への嫌悪と許諾を繰り返しながらも生きていく。そんな私たちはめちゃくちゃ、可愛い。

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