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ニコルソン・ベイカー『中二階』

※これは、書評やレビューではないです※

私は、このタイトルをとてもよく覚えている。学生時代に図書カードを貰ったとき、書店で普段手に取らないようなジャンルや、読んだことのない著者のものをなるべくランダムに、被らないように選択するのが好きだった時期がある。

その時期に見つけた1冊が、翻訳家の方のエッセイだった。確か、白い表紙にマスコットキャラクターのようなシールがポツンと置かれているような、シンプルだけどとても気になるもので、思わず手に取り、中を捲ると読みやすい文章に感じたので購入した。

このエッセイが、私にはとても新鮮で、面白かった。作家の作品は少し気取っていたり堅苦しく感じることが多かったその時期の私には、わかりやすく、どんな出来事も楽しめるように伝えてくれる記録のようで心が躍った。

このエッセイを書いた方が翻訳したものを読みたい!!!それが、ニコルソン・ベイカー作『中二階』だったので、私は覚えて、それを手にした。

本屋で見つけたのか、ネットで購入したのかは覚えていないが、まだ、電子書籍を私が利用していないときだった。

今はもう手元に無いので、覚えている感想は「生活を自分のペースで楽しんでいて、どんなときも退屈しない主人公のお話」ということぐらい。

10代だった私には、正直に言って、翻訳した方のエッセイのほうが面白く感じた。小説の中の主人公は、観たことがない映画『アメリ』の主役のように遠く、翻訳家のエッセイは、自分は体験したことがなくても日本のどこかで起こりえる出来事のように受け止められた。

そのときの私は、そんなに読書が好きという訳ではなく、読解力や知識を養いたいという目的でやや義務的に本を手にしていたので、楽しく、エッセイという読み物にひきこまれた経験がとても嬉しかった。

本当は、そのエッセイを書いた方に感動を伝えたかったぐらい。

でも、そのエッセイの中でも、その方が翻訳という仕事に日常を捧げていることが学生の私にも十分に感じられ、その作品を手にすることが最もよいことのように思われた。

出来れば、その作品を読んで、感想文やオススメ文を残したかった。

でも、私には、やはり翻訳者のエッセイの方が面白かった。

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