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ワニくんの耳  その1

ワニの耳って、どこにあるのかしってる?

ワニはね、目の上にある小さなふたつの穴が、耳なんですよ。
でも丘のうえでワニくんをまっているネズミくんは、この耳のことをしりませんでした。

きょうはたこあげをするやくそくをしたのに、ワニくんは、まだきません。

「ワニくん、おそいなぁ」

たいくつになったネズミくんは、土のうえにワニくんのかおをかきはじめました。

「ワニくんの口は大きくって、目はぎょろっとしていて、トンネルみたいなはながあって、耳は・・・、あれっ?ワニくんの耳ってどんなかたちだったっけ?うーん、ワニくんの耳、ワニくんの耳・・・」

ネズミくんが、かんがえていると、ようやくワニくんがきました。

「おくれてごめんね、ネズミくん」

ネズミくんは、ワニくんのかおをじろじろとみました

「ワニくん、きみって耳がないんだ」

(ぼくに耳がないだって?)

ワニくんは、びっくりしました。

「ワニくんは、いままできこえるふりをしてたんだね。だから、いつもとんちんかんなことばかりいってたんだ」

(ぼくが、いつもとんちんかんなことばかりいってるだって?)

ワニくんは、ますますびっくりしましたが、とにかくなにかしゃべろうと口をあけました。
すると、ネズミくんは

「ワニくんったら、きこえるふりなんかしなくてもいいんだよ」

といって、かなしそうにくびをふりました。

「あのねーネズミくん。あのねー」

ようやくワニくんがしゃべりはじめました。
それなのに、せっかちなネズミくんは

「あっ、そうだ。ぼくが、ワニくんの耳をつくってあげるよ。ちょっとまってて」

といって、どこかにいってしまったのです。

しばらくすると、ネズミくんがもどってきました。

りょう手になにかをもっています。

「ほら、みてごらん。これは、ぬいぐるみのクマの耳だよ。こっちは、あかい手ぶくろで、それに三角形のつみきもあるんだ。
ワニくんは、どの耳がいい?」

「あのねー、ネズミくん。あのねー」

ネズミくんは、ぜんぜんきいていません。

「耳のいちは、このへんがいいかな?それとももっと上がいいかな?口のよこは、おかしいよね?」

ネズミくんは、ぬいぐるみの耳やあかい手ぶくろ、そしてつみきをワニくんのあたまのてっぺんにつけたり、目のよこにつけたりしました。
でも、どれもすこしへんです。

「みっつともワニくんにはにあわないや。やっぱりほんものじゃないとだめなのかなぁ?」

「あのねー、ネズミくん。あのねー」

ネズミくんは、こんどもきいていません。

「うーん」

ネズミくんは、はなれてみたり、ちかづいてみたりしながら、ワニくんのかおをみていました。

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