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茨木のり子のことば「賑々しきなかの」

茨木のり子さん。うるっときた。
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賑々しきなかの

言葉が多すぎる
というより
言葉らしきものが多すぎる
というより
言葉といえるほどのものが無い

この不毛 この荒野
賑々しきなかの亡国のきざし
さびしいなあ
うるさいなあ
顔ひんまがる

時として
たっぷり充電
すっきり放たれた日本語に逢着(ほうちゃく)
身ぶるいしてよろこぶ我が反応を見れば
日々を侵されはじめている
顔ひんまがる寂寥(せきりょう)の
ゆえなしとはせず

アンテナは
絶えず受信したがっている
ふかい嘉悦を与えてくれる言葉を
砂漠で一杯の水にありついたような
忘れはてていたものを
瞬時に思い出させてくれるような

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