『彼と彼女の約束』3 こんなにも魅力的なのだと

第二章 こんなにも魅力的なのだと

 
「SOS団史を作るわよ!」
 またいつもの、突然の思いつきというやつである。文芸部室にやってくるなり、ハルヒの奴は高らかにそう宣言し、ずんずんと歩いて、団長専用席の前に仁王立ちした。腕を組み、自信満々といった顔つきをしている。自分の言うことは常に正しいと思いこんでいる類の顔。
 一応、聞いてみておいてやる。
「SOS団史?」
「そう。ここでそろそろあたしたちの偉大なる業績を記した歴史書を作るべきだと思うの」
「偉大なる?」
「そうよ。あたしたちの華麗で壮大な偉業は、歴史に残すべきなのよ」
 華麗で壮大な――ときた。ただの奇行の間違いだろ。アホか、と思ったが、俺の対面に座る腰巾着は、大変素晴らしいかと、とさっそく追従の姿勢を見せている。他の面子はどうかと思えば、長門はハルヒに対して一瞥もくれずに本を読んでいるし、朝比奈さんは困ったような曖昧な笑顔を浮かべている。つまりは誰も反対はしていない。となると、いいかげんこれまでのことから学習している俺も、黙っているより他は無い。ハルヒの奴がやりたいようにやらせておくに限る。どうせメインでなんかやるのは俺なわけだからして、余計な苦労をわざわざ背負い込む必要はないのだ。まったく、嫌な慣れだとは自分でも思うが。
「というわけでSOS団史の編纂を行います! 期限は二月末まで! あ、みくるちゃん、締め切り黒板に書いて」
「はーい」
 言われるまま、朝比奈さんはチョークで黒板に丸っこいかわいらしい字で、二月末まで、と書いた。
「団史を作るのはいいんだが、どういうこと書くんだ?」
 尋ねると、ハルヒの奴はあごに手をやって、うーんと唸ってから。
「まずは結成からね。それはあたしが書くわ。いかに崇高な目的を掲げて結成したか、ドラマティックに仕上げてあげる」
「歴史をドラマティックにしてどうすんだ……」
「いいじゃない。歴史は勝者が作るものなのよ」
 ふんぞり返るハルヒ。勝者とかなんとかわけがわからないが、まあいつものことだから放っておこう――俺はとりあえず何も言わず聞き流すことにした。
「あとは活動記録に、団員の紹介でしょ。関係者のコメントも欲しいところよね」
「そうだな」
「なるべく厚くしたいのよねー。やっぱりある程度の厚みがないと威厳みたいなのがないし」
「そうだな」
「写真は多めにしたいわね。あ、前の文芸部誌もそのまま載せちゃってもいいわよね。輝かしい活動の記録なわけだし」
「そうだな」
「……団員のプロフィールということで、生まれてから今日までの軌跡を写真付きでキョンだけ赤裸々に書くってのはどうかしらね」
「そうだな――って、ん?」
 答えてから、俺はハルヒの方を見やった。ハルヒはにっこり笑っている。にっこりと、殺意たっぷりな顔で。
「えーと、ハルヒさん?」
「なーに? 話を聞いてないお馬鹿さん」
「いや聞いてたぞちゃんと」
 聞き流していただけで。
「聞き流してただけで?」
「そうそう――って違う」
 まるで心を読んだかのようなハルヒの言葉に、俺は慌てる他なかった。ついうっかり認めてしまったが、必死で取り繕う。
「お前が変なこと言ってないから普通に同意してただけだって。誤解だ。無実だ。言いがかりだ」
「…………」
 じーっと、ハルヒがにらみつけてくる。信用されていないのが、目を見るだけでわかる。さてどう言い訳をしようか――などと考えていると、
「ま、いいわ」
 思いの外あっさりと、ハルヒは引き下がった。
「どうせいつものことだし」
 溜息混じりの呆れたような声だった。そんないつも聞き流している覚えは無いのだが。四割くらいは真面目に聞いてる、と思う。言うだけ無駄だから何も言わないが。
「聴くべき時に聴くべきことを聴き逃して、こうして人生の落伍者になっていくのね。だから勉強できないのよ」
「おい」
「まあ人生の敗北者はほっといて」
「おい」
「真面目な話、団員紹介については伝記みたいにまとめるのもいいかなあって思うのよねー。最初期メンバーとなれば、後世では伝説級の存在になるわけだし。後世の指針として、いかにあたしたちが偉業を成し遂げるべく集まったかも重要になると思うの」
 目をきらっきらさせてまくしたてるハルヒ。ハルヒの中ではSOS団は卒業後も永久に存続するものだと思っているらしい。伝説とか後世とか、こいつの頭の中はどうなっているんだろうね。というかそもそも、集まったという辺りもツッコミどころ満載なわけだが。
 俺は視線を動かして、朝比奈さんの方を見た。まさに拉致されてきたとしか言いようのない彼女は、そのことをすっかりと忘れきっているような顔で、小首を傾げていた。
「伝記……ですか?」
「そー。子どもの頃のエピソードとか写真とか載せてみたら面白いと思うんだけど」
「え、えーと、それは流石に、恥ずかしいような……」
「そーお? そんなに恥ずかしがることじゃないと思うんだけど」
「……恥ずかしいですよう」
 言いながら、朝比奈さんが視線をこちらに向けてくる。
 助けてください――そんな目だった。
 よし。胸中でうなずいてから、俺はハルヒに対して、言った。
「おいハルヒ。流石に子どもの頃の写真とかは止めようぜ。恥ずかしい」
「あんたそんな恥ずかしい子ども時代送ってたの?」
「なんでそうなる」
 思わず半眼になってうめく。
「だってキョンだし」
「……」
 こみ上げてくるものがあったが、それは我慢した。俺は朝比奈さんを助けたい。そのために口を挟んだわけであるので――
 一度深呼吸して、俺は続けた。
「いいかハルヒ。後世に残すにしても、それが本当に必要なのかよく考えないといかん。よく考えてみろ。どういう奴が読むかわからないんだ。朝比奈さんの子どもの頃の写真を見てよからぬことを考える奴が出てきたらどうする。悪用する奴が出てきたらどうする」
「……そうね。しそうな奴が目の前に居るけど、そういう危険性は確かにあるわね。みくるちゃんを守らないといけない、というのは確かにそうね。しそうなの目の前に居るけど。みくるちゃんの身に危険が迫るとかあってはならないことね。しそうなの目の前に居るけど」
「…………」
 叫びたくなるのは我慢した。俺は理性ある人間である。感情を抑えてこそ、理性ある人間であると言える。耐えるべく、俺は目を閉じた。あえて視界を塞ぎ、その上で深呼吸をする。なんとなく、落ち着いてくるような気がする。
「写真は諦めるしかないかー。みくるちゃんの身の安全の方が大事だものね」
 とりあえず、納得はしたらしい。一度ハルヒとはしっかりと話をしないといけないような気がするが、今回はハルヒの思いつきを止めることはできそうだった。
 朝比奈さんが、ほっとしたように胸をなでおろし、ありがとう、とばかりに微笑みをこちらに向けてきた。
 よしよし。俺は朝比奈さんの微笑みに、微笑みで返事をして、胸中でガッツポーズをした。朝比奈さんに頼られ、朝比奈さんのために何かできることの、なんと嬉しいことか。今日のことは俺の偉大な業績に数えていいかもしれない。
 視線をハルヒに戻すと、ハルヒは腕を組んで、少し口を尖らせた状態で、うーん、と唸った。
「団員紹介についてはまた別の方法を考えるわね。で、他に書く内容についてだけど」
 
 
「あっはっはっはっは! 見てよみくるちゃん、この泣き顔! しかも下半身丸出し! あっはっはっは!」
「……わー……」
 大笑いするハルヒと、顔を真っ赤にしつつも凝視している朝比奈さん。二人が見ているのは、俺の小さい頃の写真が収められたアルバムである。
 場所は変わって、俺の家、俺の部屋。学校が終わってそのまま、何故か俺の家で部室での話し合いの続きが行われることになった。
 わーわー言いながらも幼いころの俺の恥ずかしい写真から目を離さない朝比奈さんに、死にたさが限界突破しながらも、俺はハルヒを怒鳴りつけた。
「お前、朝比奈さんに何見せてんだ!」
「あんたのおねしょ記念写真」
「なんで見てんだ!」
「妹ちゃんが持ってきてくれたから」
「なんで持ってきてんだ!」
「なんか面白いものある? って聞いたら持ってきてくれたの」
「……」
 顔をしかめ、天を仰ぐ。色々と――そう、本当に色々とだ。色々と言いたいことがある。山盛りだ。盛りだくさんだ。てんこ盛りだが、全部を言うときりがない。多分。
 そういうわけで、俺は半ばあきらめの境地に至りながら、うめくように口を開いた。
「お前、うちに来た目的、なんだか覚えてんのか?」
「目的? そりゃああんたのちっちゃい時の写真見て笑うことだけど」
「違うだろ!」
 思わず叫ぶ。が、ハルヒは何も気にした様子はなく、はいはい、と軽い調子で答えた。
「そんな叫ばないでよ」
「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ。わかってんだったらそんなもん見てないでさっさと話詰めようぜ。もっと話しましょって言ったのお前だろ」
「はいはい。わかったわよ」
 アルバムを閉じ、ハルヒは俺のベッドの上に放った。
「で、何決めよっか」
「考えてねえのかよ!」
「そんなこと言われても実際何決めればいいのよ。大体はさっき決めたでしょ」
「……」
 言葉もない、というのはこのことだろうか。こいつは何を言っているのだろう。少し考えてから、俺はふと思い浮かんだ疑問を口にした。
「もしかして、と思うんだが」
「うん」
「本当は俺の小さい頃の写真が見たかった、とかじゃないよな」
「……」
 ハルヒは答えなかった。だがにっこりと笑った。それが答えなのだろう。にっこりと笑っていたハルヒは、少し間をあけてから、少ししなを作って、言った。
「だって、みくるちゃんが見たいって言うんだもの」
「あたしですか!?」
 悲鳴に近い声を上げ、朝比奈さんはふるふると慌てた様子で首を横に振った。
 わかってますよ、と頷いてみせてから、俺はハルヒへと視線を戻した。
「……」
「で、SOS団史についてだけど」
「おい」
「なによう。いいじゃないのそれくらい、減るもんじゃなし」
「俺が恥ずかしい思いをしてるんだが?」
「うーん。こうなるとみんなのも見たくなってくるわねえ」
「おい聞け」
「有希とか古泉くんとか、どういう子どもだったのか見てみたいし、今度アルバム持ってきてよ」
 無視すんなよ、と思いつつ、俺は話を振られた長門と古泉の方を見た。長門は相変わらずの無表情だったが、今までのほほんとニヤケ面を浮かべていた古泉は、流石に困ったように表情を崩した。
「いや、僕もそれは流石にちょっと……」
「ええっ。古泉くんもまさか恥ずかしい過去が?」
「いえ、おねしょとかはしてないんですが」
「……」
 さりげなく馬鹿にされたような気がして、俺は古泉をにらみつけた。だが古泉は無視した。ハルヒは、なお古泉に迫った。
「じゃあいいじゃないの」
「え、いやあ、でも……」
 珍しくしどろもどろになる古泉。
 ざまあみろ。お前も恥ずかしい目にあえ。
 ニヤリと笑う。
 と――
「……?」
 ふと、長門の視線に気がついた。無言で、俺のことをじっと見つめてきている。
「長門?」
 問いかける。だが、長門は答えなかった。そして、長門は俺から視線を逸らした。その視線は、今度は朝比奈さんに注がれている。もっとも、当の本人は、ハルヒと古泉のやりとりを、きょとんとした顔で眺めていて、まったく気づいていないようであった。
(なんだ……?)
 何を考えているのかはわからないが、長門は明らかに何かを考えているようだった。俺と朝比奈さんを見て、何を考えているのだろう。無機質な瞳の色からは、何も、わからなかった。
 
 
「写真を撮りたい?」
 聞き返すと、長門はこくん、と小さく頷いた。
 俺は、思わず隣を見た。隣に座る朝比奈さんもまた、俺の方を見た。二人で顔を見合わせてから、再度俺たちは長門の方を向いた。
 数日後の日曜日である。久々に何も無い日曜日を謳歌しようと思っていた俺のもとにかかってきた一本の電話――長門からの呼び出しによって、俺はここ、長門宅にやってきたのである。マンションにやってきた時に、同じように呼び出されたという朝比奈さんと出会い、そして今、二人で長門と向かい合って座っている。何事かと思って話を聞いてみれば、長門の口から飛び出したのは、「写真を撮りたい」という言葉。意味がわからず、聞き返した、というわけである。
「どういうことだ?」
 さらに尋ねる。写真を撮りたい、というだけでは、いくらなんでもわけがわからなさすぎる。説明が必要だ。俺と朝比奈さん、二人で呼ばれた理由を説明してもらわなければならない。
 少し間をおいて――どう話せばよいか考えたのだろうか――長門はゆっくりと口を開いた。
「先日、涼宮ハルヒがわたしの幼いころの写真を見たいと言った」
 ふむ――と頷いて、俺は続く長門の言葉に耳を傾けた。
「しかしわたしには、幼いころの写真は存在しない。ゆえに、涼宮ハルヒに見せるために写真を用意する必要がある。そのために、あなたと朝比奈みくるの協力を要請する」
「……」
「……」
 再び、俺と朝比奈さんは顔を見合わせた。それから、再び長門に尋ねる。
「なんで俺たちなんだ?」
「わたしには、家族が居ない。家族の視点での写真が撮れない」
「……そう言われてもなあ」
 うめいて、俺は後頭部に手をやった。
「俺たちも家族ってわけじゃないし」
「……お父さん」
「ん?」
「お母さん」
「え?」
「あなたと朝比奈みくるに、わたしの両親になって欲しい」
「……はい?」
 なんだって?
俺と朝比奈さんになんだって?
「わたしの両親になって欲しい」
「……」
 俺は何も言えなかった。眉間にしわを寄せ、口を半開きにして、ただただ長門を見つめることしかできなかった。
「本気で言ってるのか?」
「本気」
 こくり、と長門は小さく頷いた。
 わかってはいた。こいつがそういう冗談は言わないってことは。それでも確認しておきたかったのは、冗談であって欲しいと思っていたからでもある。
「写真を撮ること自体はいいんだが、両親てなんだ両親て」
「そのままの意味。写真を撮るにあたって、両親役が必要」
「そりゃあ、幼いころの写真ってなったら親は必要だろうけど。それをなんで俺たちがやらないといけないんだ? そもそもお前だったらそれっぽい写真なんて撮るまでもなく作れるんじゃないのか?」
疑問を口にすると、長門は珍しく考え込むような素振りを見せた。少し間の後、長門はゆっくりと口を開いた。
「作成は可能。しかし――」
 不意に、テーブルの上に写真が一枚現れた、何も無い虚空から生み出された一枚の写真。おそるおそる俺は、それに手を伸ばした。
 何の変哲もない写真だ。若い男女と幼い少女が写っている。
 だが。
「なんか、変? だな?」
 写真に写っている男女の顔、ポーズ、そういったものがどこか固く、妙な違和感を覚える。まるで無理矢理に形だけを作っているような、そんな印象を受ける。違和感がないのは、幼い少女だけだった。眼前の相手をまるでそのままダウンサイジングしたかのような顔をしている少女。彼女だけは自然に写っている。表情は自然なのかはともかくとして。
 ふむ、とうなってから、意見を求めるべく、俺は隣の朝比奈さんに声をかけた。
「ねえ朝比奈さ――ん?」
 声が最後上擦ったような感じになってしまったのは、隣に居る朝比奈さんがおかしなことになっていたからだ。朝比奈さんは口をきゅっと結び、顔を赤くした状態で固まっている。どことなく虚ろな目をしている。どうしたと言うのだろう。
「あの、朝比奈さん?」
 再び声をかける。すると朝比奈さんは、弾かれたようにびくっと身じろぎして、慌てた様子で、
「はいっ。あたしは子どもは二人くらい欲しいですっ」
 そんな、妙なことを口走ったのだった。
「……えーと、朝比奈さん?」
「えっ? あ、すみません、あたし……」
 あたし、の後が非常に気になったが、俺は気にしないことにして、朝比奈さんに改めて写真を見せた。
「これ、どう思います?」
「はいっ、えっと……」
 余程動転しているのか、上擦った声だった。なんだかなあ、と思いつつ、彼女の言葉を待つ。
「ええと。ちょっと、変な感じしますね。なんだか、お人形さん? みたいと言いますか」
 ふむ、と俺はうなった。朝比奈さんも俺と同意見らしい。
 改めて、長門の方を見やる。
「これが、あなたたちに協力して欲しい理由」
「……」
「わたしという個体には、感情が存在していない。必要最低限のコミュニケーションしかとれないわたしでは、人間の親愛の情を完全に再現することはできない」
「……」
 感情は無い……? 嘘つけ、と思ったが口にはしないでおく。それよりも大事なことを先に聞かないといけない。
「そうは言っても……写真を撮るにしても、姿とか色々問題があるだろ」
「外見については問題ない。わたしについては、外見を幼児に変更できる。あなたたちについては、写真にする際に操作する」
「つまり外見は後で変えるから、俺たちは普通に写れってことか」
「そう」
「……」
 俺は目を閉じ、うめいた。長門に頼られるってのいうのは嬉しいが、内容が内容だ。父親役をやれ、と言われても、どういうものが父親なのか、俺にはさっぱりとわからない。写真に写るだけとはいえ、父親と娘というのはどういう風に写真を撮るものなのだろうか。
 それに、母親役が朝比奈さん、というのも、なんとも恥ずかしい。長門を相手に演技をする姿を見られるというわけで、少し――というかかなり、恥ずかしい。
 それは朝比奈さんも同じ気持ちのようだった。もう想像してしまっているのか、顔をさっきよりも真っ赤にしている。目が合うと、恥ずかしそうにして朝比奈さんは縮こまってしまった。
 これは、俺が朝比奈さんの分も言わないと駄目なやつだな、きっと。
 そう判断して、俺はこめかみのあたりを指でぽりぽりと掻きながら、言った。
「長門、えーとな? お前の頼みには応えてやりたいんだが、その、どうにも恥ずかしいし、家族写真というのも、俺たちにはちょっと――」
 そこまで言ったところで、長門が割り込むように、言った。
「わたしのこと、嫌い?」
「……うっ」
「……」
 その言葉には、何も言えなくなってしまい――
 俺と朝比奈さんは思わず顔を見合わせて、そして、そろってうなだれるより他に、なかった。
 
 
「……やっぱりああいう物言いは反則だと思うんですけどね」
 何度目かの不満。言っても仕方のないことであると自分でもわかっているのだが、どうにも釈然としない。
「そうですね」
 隣から聞こえてくる、苦笑混じりの、これも何度目かの同意の言葉。
「どこで覚えたんでしょうね、あんなの」
 カメラを構えながら、やはり何度目かのぼやき。
「本で覚えたんじゃないですか?」
 ひらひらと手を振りながら、朝比奈さんはこちらを見ないままにそう答えた。
 カメラのファインダー越しに見つめる長門は、手を振る朝比奈さんに向かって、床にちょこんと座って、幼児らしく手を振っている。顔は相変わらず無表情だったが。まずは三歳くらいから、とかで、見た目は完全に幼児になっている。幼児服(長門の用意した十年ちょっと前の古いカタログに載っていたもので、朝比奈さんが選んだものをいつもの宇宙人パワーで身にまとったのである)もばっちりで、完全に幼いころの長門有希と言うにふさわしい姿だ。
「……」
 無言で、シャッターを押す。カシャ、という音がする。このカメラも、長門が用意したものだ。デジタルカメラ。買ってきたのか、長門が作ったのかはわからないが、まあ、普通のカメラだ。
長門に促されるまま、写真を撮っている。
「だっこ」
よちよちと――文字通りそんな擬音が似合いそうな感じで、長門がこちらに歩み寄ってくる。両手を上げて、朝比奈さんへとだっこを求めている。
「はいはい」
 撮影を始めた最初こそ戸惑っていた朝比奈さんであったが、何枚か撮っていくうちに、何故か母性が目覚めてしまったらしい。両手を広げて長門を迎え入れようとする姿は、まるで本当の母親のようだ。見た目のイメージに違わず、幼い子供が好きなのかもしれない。
「はーい、お母さんですよー」
 ぎゅっと長門を抱きしめる朝比奈さんの顔は、ほくほくの、満面の笑みだ。あなた前まで長門にびびってませんでしたっけ、と問いかけたくなるくらいに、朝比奈さんは幼児長門にメロメロだ。
抱きかかえて、ぽんぽんと背中を叩いている姿など、思わず感心してしまう。
 ふむ、と思って、俺はカメラを構えた。母親に甘える子どもの姿、これは絵になる、と思ったからである。パシャリと撮ると、朝比奈さんは、ふふ、と笑った。
「今度こそ、キョンくんの番ですよ」
「ええっ……」
 カメラごと身を引く。朝比奈さんは俺に、長門をだっこしろと言っているのだ。今度こそ、というのは無論、俺が今までにそれを何度も拒否してきたからである。いくら見た目は幼児になっているからと言って、長門は長門である。男の俺がそんな、嫁入り前の娘を抱きしめるなど、あってはならないことである。
「いやでも朝比奈さん、流石にそれは俺がやるのはまずいと思うんですよ、やっぱり」
「ええー。でも、キョンくんはお父さん役なんですから、しないと変ですよ」
「父親役でも出来ることと出来ないことはあります」
 きっぱりと言い切る。不満そうに口を尖らせて、朝比奈さんが俺を睨んでくる。腕の中の長門も、俺のことをきらきらとしている――というようなことはないいつもどおりの無機質な目で見つめてくる。
「そんな目で見ても出来ないものは出来ません!」
 そう断言して、俺はぷい、とそっぽを向いた。二人分の視線が注がれるのが痛いくらいに気配で知れたが、無視をする。
「でも、お父さんとの写真もある程度ないといけないと思いますよ」
「……」
「ちゃんと協力してくださいね」
「……」
 なんだかまるで、大人版の方を相手にしているみたいだった。最近少しずつ大人びてきているな、と思っているのだが、実際、その通りであったようだ。あの大人版に段々と近づいていくのを目の当たりにすると、あの彼女はやはり正しい朝比奈みくる大人版であった、ということを再認識する。もっとも、大人になっても多少抜けているところがあるのは変わらないので、かわいらしさはこのままずっと残るわけなのであるが。
 返事をしないまま、俺は目線だけを二人に戻した。
 と――
「……ごはん」
 長門がぽつりとつぶやくように言った。
「あ、そうですね。そろそろお昼ごはんにしましょうか」
 にこりと朝比奈さんが笑うと、未だだっこされている長門は、こくり、と小さく頷いた。
「それじゃあ、あたしが用意しますから、ちょっと待っててくださいね」
 長門を下ろして、朝比奈さんはすっくと立ち上がった。ポケットからヘアゴムを取り出し、髪を後ろでまとめながら、朝比奈さんはキッチンへと向かった。その後ろ姿に、長門が声をかける。
「キッチンにあるものは、なんでも使ってくれて構わない」
「わかりましたー」
 にこりと笑う朝比奈さんを見送る。自然と緩んでいた頬に気づいて、慌てて引き締める。長門に見られていなかったか、不安を覚えつつも長門の方を見やる。だが長門はこちらを見てもいなかった。ほっとしていると、長門はこちらを見ないままに、言った。
「朝比奈みくるはいい母親になる」
 わけがわからず、聞き返す。
「あん?」
 長門はこちらを向いた。何故か小首を傾げてから、答えのつもりなのか、言い直した。
「朝比奈みくるは、いいお嫁さんになる?」
 なぜ疑問形――という疑問はあったが、それで、なんとなく長門の意図するところはわかった気がする。
「ひょっとしてと思うんだが。褒めてる、んだよな?」
 訊くと、その通りだ、とばかりに長門は頷いた。
「女性を褒める時、そう言えばいいと学んだ」
「何から」
「小説」
「あ、そう」
 間違ってる? と目が問いかけてきたので、間違ってはいないぞ、と答えると、長門はまた小首を傾げた。
「あー、まあ褒め言葉としては間違ってないんだが、お前が言うと思わなかったもんでな。すまん」
「……そう」
言ってからでは遅いのだが、怒るかと思ったが、長門は怒らなかった。見た目的には。
「気分を害したなら本当にすまん」
「害してない」
「そうか……。できればさっきの言葉は、直接朝比奈さんに言った方がいいと思うぞ」
 俺の言葉に、長門はこくんと頷いた。
「あなたは――」
「?」
「あなたはそう思わない?」
「……俺?」
 何故急にそんなことを聞くのか、理由がわからない。まさか自分の感じたことに自信が持てないだとでも言うのだろうか。長門の意図は、表情からはわからない。
 わからなかったが、別に話して困るようなことではない。俺は素直に話すことにした。
「俺も、朝比奈さんはいい嫁さんになると思うよ。母親としてもさ」
「そう。あなたは言わないの?」
「えっ。いや……そういうのは俺が言うことじゃないと思うし」
「……」
 目を細めて、長門は睨むようにこちらを見つめてきた。微妙に、怒っているように見えた。
「なんだよ」
「……」
 長門は何も言わなかった。何も言わずに、俺から視線を逸らした。
 なんなんだ、いったい。疑問符を浮かべて、俺は首を傾げる以外になかった。
 
 
 ただ待っているというのも暇なので、長門が一人で遊んでいるところ、という体での写真を撮っていると、
「お待たせしましたー」
 という声と共に、朝比奈さんが戻ってきた。抱えたお盆には、湯気の立つパスタが盛られた皿が二つ。スライスされたソーセージにピーマン、玉ねぎ、ケチャップが絡んで赤くなった麺。
「ナポリタンですか?」
「はい。長門さんにはこういうのがいいかなあって思いまして」
 テーブルの上に皿が並べられ、俺と長門は、それぞれの前についた。
「朝比奈さんの分は?」
「向こうにあります。持ちきれなかったので」
「あ、なら俺が持ってきますよ」
「あ、いえ。座っててください。すぐ持ってきますから」
 にこりと笑って、朝比奈さんはパタパタと小走りで再びキッチンへと向かった。
「……」
 ああいうところも、本当に母親みたいだ。結婚したら、家庭的で、いい奥さんになるだろう、間違いなく。揺れるポニーテールも健康的で非常にたまらない。実に最高だ。
 また頬が緩みかけたのに気づいて、慌ててきゅっと引き締める。いけないいけない。どうも朝比奈さんを見てると顔がにやけてしまう。
 と、視線を感じた。
「……」
 フォークを手に持ったまま、長門がこちらを見ていた。
「……なんだよ」
「なんでもない」
 どうやら、見られていたらしい。うめいて、俺は誤魔化すようにカメラを構えた。
「撮るぞ―」
 そう言って、フォークを持ったままこちらをじーっと見つめてくる長門を撮る。
 ちっとは笑えよ、と思うが、長門だから仕方がないか、と思いなおしてシャッターを押す。
 というところで朝比奈さんが自分の分の皿を持って戻ってきたので、三人で食事をとることになった。
 食事もばっちり写真に撮ろうということで、少々行儀は悪いものの、俺はカメラを持ったままの食事になった。
「しかし美味いですね、このナポリタン」
 ソーセージにフォークを刺しながらそう言うと、朝比奈さんはにこりと笑った。
「うふ。ありがとうございます」
 そんなやりとりの横で、長門は淡々と、黙々と食べている。
 三歳児の食い方じゃないんだよなあ、などと思いながらも、俺はカメラを構えた。三歳児の身体つきではあるが、食い方は整っているし、口の周りなどを汚すこともない。こんな三歳児など居るか、と思うが、長門だし、まあ、というところだ。
「ほれ、食ってるとこ撮るぞ」
 そう言って、ちょうど長門が口にフォークを運んでいるところを撮り、そのまま頬張っているところなども撮る。
「長門、美味いか?」
 訊くと、返事の変わりか、長門はこく、と小さく頷いた。
「よかったです」
 嬉しそうに、朝比奈さんがまた笑う。長門は、皿の上でフォークをくるくると回し、麺を絡めながら、
「朝比奈みくるは、よいお嫁さんになる」
 唐突な言葉に、朝比奈さんは一瞬、きょとんとした。まさか長門の口からそんな言葉が出るとは思わなかったに違いない。
 長門は何も気にせずに、続けた。
「彼もそう言っていた」
 と、俺の方を見る。急にこちらに振られて、俺は焦った。何言ってんだ長門お前。長門を睨むも、長門はいつも通りまったく意に介していない。
この野郎、と思っていると、
「……」
 朝比奈さんが何か言いたげな顔をこちらに向けてきた。顔を赤くして、恥ずかしそうに俺を見る。
 なんだろうこれ。どうすればいいんだ――迷いながらも、俺は思ったことを正直に言った。
「ええと、朝比奈さんは家庭的で、ほんとに、いい奥さんになると思います」
「……あ、ありがとうございます」
 耳まで赤くして、朝比奈さんは恥ずかしそうにうつむいた。
 なんだか妙に雰囲気になりつつも、食事を終える。
 食事の後片付けも、撮影しながらだ。重ねた皿をキッチンに持っていこうとする長門有希(三歳)、洗い物をしている母親の足にしがみつく長門有希(三歳)というような構図で、何枚も撮る。
 その後も、撮影は続いていく。
 長門を中心に撮影するわけだが、どうしても朝比奈さんと一緒に写ることが多い。父親(役)が撮っているのだから当然であるのだが。そうなると自然、朝比奈さんの色々な顔も撮ることになってしまう。それは普段とはまるで違う顔だった。かわいらしく、どこかくすぐったそうに彼女は笑う。
 母親になったら、朝比奈さんはこんな風に笑うのか。
 子どもができたら、朝比奈さんはこんなにも、かわいらしくなるのか。
 写真を撮りながら、俺はこっそりと朝比奈さんだけの写真も撮った。長門の用意したカメラだということはわかっていたが、家族写真を撮るというのが目的なのだから構わないだろう、そんな気持ちだった。
 後で、なんとかして譲ってもらおう。心からそう思った。
 やがて、朝比奈さんは疲れたのか、長門を抱きかかえたまま、うとうととし始めた。
「朝比奈さん?」
 声をかけると、彼女は目をこすりながら返事をした。
「ふぁい?」
 とろんとした目、これはもう大分眠いのだろう。
「いい。寝させる」
 朝比奈さんの腕の中の長門が、相変わらずの無表情のままでそう言った。
「いいのか?」
 問いかけると、長門はこくりと頷いた。
「わたしも寝る」
「おう」
 欠片も眠そうに見えないんだが、お前眠れるのか?
 心の中で浮かんだ言葉をぐっと飲み込んでから、俺は朝比奈さんに再度声をかけた。
「朝比奈さん、寝るなら横になりましょ」
「うん……」
「わたしも一緒に寝る」
「うん。一緒にお昼寝しましょう……」
 そう言って朝比奈さんは抱きかかえていた長門をラグマットの上に横にし、朝比奈さんもそのまま横になった。
「……上に何かかけておいた方がいいよな」
 部屋の中はいくら暖房が効いているとはいえ、そのままでは風邪をひいてしまうかもしれない。長門はともかくとして。
 そう言って立ち上がると、長門はそれを聞いてか、横になったままで言った。
「向こうの部屋にタオルケットが出してある」
「おう」
 答えて、俺はリビングを出た。
 長門の言う向こうの部屋、というのがよくわからなかったが、これみよがしに扉が開いていて、中央に畳まれたタオルケットが鎮座していた部屋があったのですぐにわかった。青い、薄手のタオルケット。
 タオルケットを抱えて戻ってくると、朝比奈さんはもうすでに規則正しい寝息を立てていた。その横に横たわっている長門は、無表情で天井を凝視しており、見ようによってはなんとも怖い有様だった。
「持ってきたぞ」
 声をかけると、まるでホラー映画の動く人形であるかのように、長門はゆっくりと顔だけをこちらに向けた。
「……いやお前、それなんか怖いぞ」
「……」
「……まあいいや。お前も寝ろよ」
 こくん、と長門は頷いた。そして、朝比奈さんに抱きつくようにぴたりとくっついた。
「……」
「何?」
「いいや、なんでも」
 タオルケットを広げ、二人にかける。
「……」
 かけると、もぞもぞと長門が動いた。朝比奈さんにさらにくっつくつもりらしい。
「…………」
 うらやましい――などとは思っていない。念のため。
 努めて心を無にして、俺は床に置いていたカメラを手に取った。
 膝立ちになって、朝比奈さんの寝顔、長門の寝顔、それぞれを単独で、また、同じフレームで収めたものを何枚か。
 撮り終えてから、俺はカメラを床に置いて、そのままその近くに腰を下ろして一息ついた。
「……」
 無言で、眠っている二人を眺める。俺の座っている位置からは、朝比奈さんの顔がよく見えた。朝比奈さんにくっついているせいで、長門は後頭部しか見えない。
 思わず笑みがこぼれるほどに、朝比奈さんはよく寝ている。幸せそうに、安らかに寝息を立てている。幼子と寝ていると、本当に母親のように見える。
 将来、誰かと結婚したら、彼女はやはりこういう顔をして、眠るのだろうか。子どもを抱いて、眠るのだろうか。遠い未来で。
 そんなことを考えたら、少し、胸が苦しくなった。
 胸を締めつける何かを吐き出すように、息を吐く。ゆっくりと。溜息に似たそれを、俺は静かに吐いた。
 考えたくはない。朝比奈さんが誰かと結婚することなんてことを。でもそれでも、彼女は未来人で、いつか別れないといけない時が来る。大人になった時にはもう、俺は朝比奈さんには会えない。朝比奈さんは、過去の俺に――高校1年生の俺に――再び会うのだろうが、この先の俺は、大人になった朝比奈さんには、多分会えない。
「……」
 俺は、カメラを手に取った。再び膝立ちになって、カメラを朝比奈さんに向ける。
 ズームにして、彼女の顔を大きく撮る。
朝比奈さんには悪いけれど、長門に頼んでこの写真ももらおう。
(でも盗撮だよな、これ)
 ばれたら、怒られるどころじゃすまないだろうな。
 胸中で苦笑して、俺はもう一度朝比奈さんの寝顔を撮影した。
 
 
 いつのまにか、眠っていたらしかった。
 ぺちぺちと頬を叩かれる痛みで目が覚めた。
 目を開けると、長門が無表情で俺の頬を叩いているのが目に入った。
「……なんだよ」
 半眼になって尋ねると、長門はようやくそこで手をひっこめた。
「起こして欲しいと頼まれた」
「……次からは他の方法で起こせ」
「わかった」
 長門がうなずくを見てから、半身を起き上がらせる。記憶がないのだが、いつのまに眠っていたのだろう。そしていつのまにか、下半身にタオルケットがかけられている。
 カシャ。
 シャッター音がした。音がした方を見ると、カメラを持った朝比奈さんが居た。
「朝比奈さん」
 名を呼ぶと、彼女はくすくすと笑い、
「おはようございます、キョンくん」
「……おはようございます」
 寝起きを撮るとは、朝比奈さん……。そう言えば昔も寝起きだか寝顔を撮られた気がする。たまにこういう悪戯をしてくるところがかわいらしくて良い。
「今、何時ですか?」
「四時くらいです」
「ですか」
 いつ寝たのかは覚えていないが、眠ったのはだいたい、一時間くらいだろうか。最後に時計を見た時は、三時前だったはずだ。
「これ、朝比奈さんが?」
 タオルケットの裾をつかんで示すと、朝比奈さんは、ええ、と頷いた。
「起きたらお腹出して寝てたから」
 くすくす、と朝比奈さんが笑みをこぼす。
「なっ……」
 腹を出して……だと? そんな恥ずかしい姿を朝比奈さんに?
「風邪ひいちゃいますよ。気をつけてくださいね」
 とそこで、急に朝比奈さんはうつむいた。
 うつむいて、ちらちらとこちらを見ながら、か細い声で、言った。
「あ、あなた」
「………………」
 俺は言葉を失った。口をぽかんとさせ、思考すら停止して、ただ朝比奈さんの顔を見つめるしかできなかった。
 俺の反応がよくなかったのか、朝比奈さんは弾かれたようにがば、と身を乗り出して、慌てた様子で口を開いた。
「ち、ちちち違うんです。長門さんが呼び方も変えて欲しいって言うからっ」
「…………あ、あー……はい」
 それしか言えず、俺はたまらなくなって天井を仰いだ。
 なおも朝比奈さんはわーわー何か叫んでいるのだが――俺の耳にはまったく届いてこなかった。
 あなた――と言った朝比奈さんの声がいつまでも耳に残ってしまって。
「余計に恥ずかしくなっちゃうから、そんな顔やめてくださいってばぁ!」
 慌てすぎた朝比奈さんが膝立ちになってしがみつくようにしてぽかぽかと殴ってくるのだが、それでも俺の頭は、甘美な夢の世界に旅立ってしまった。
「もー、キョンくん聞いてくださいー!」
「はい……」
 
 その後の俺は、朝比奈さんの顔をまともに見ることができなかった。そのせいで写真を撮れなくなってしまい、また別の日にやりなおすことになってしまったのだが……。
 それはまた、別の話。


不器用ながらも、動く長門のお話です。
長門のおかげで、少しずつ意識していくキョンのお話でもあります。
見方を変えていく。見方を変えると世界が変わる、というのは、常に作品の中で描いていきたいのです。

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