夏と冬の奏鳴曲 麻耶雄嵩

 ぼくの麻耶雄嵩作品とのファーストコンタクトは小3か小4のころに読んだ講談社ミステリーランド刊行、『神様ゲーム』だ。同レーベルで刊行された作品でほかに印象に残っているのは乙一の『銃とチョコレート』、山口雅也の『ステーションの奥の奥』。『びっくり館の殺人』も読んだ記憶があるので綾辻行人作品とのファーストインプレッションもここだったように思う。
 こうして並べた中でもぶっちぎりで後味が悪かったのが『神様ゲーム』だ。完全にトラウマになってる。これを児童向けレーベルで出すのやばすぎるし、『銃とチョコレート』がおとなしく見えるのどういうことだよ。おれはドゥバイヨルが好きです。(顔がよくて口が悪い男が好きになったの、こいつと神田ユウ(CV.櫻井孝宏)のせいです)
 最近になって『メルカトルかく語りき』を読んだのもあって、ぼくの麻耶雄嵩に対する印象は「常軌を逸した異様な作品を書く、変なミステリ作家」だった。

 だからこそ、『夏と冬の奏鳴曲』は衝撃だった。

 麻耶雄嵩、文章めちゃくちゃうめえ!!!!!!!
 もちろん麻耶雄嵩作品なので核となるトリック部分はじゅうぶん飛び道具に位置するのだけど、とにもかくにも文章が綺麗すぎる。作中ではキュビズムが重要な意味を持つが、その開祖であるピカソはそもそも写実絵が神級にうまい、という『ブルーピリオド』とかで言及されてる言説が読んでいるあいだずっと頭をよぎっていた。精緻に編まれたロジックを疑う余地はなく(『メルカトルかく語りき』でさんざんわからされたからね!)(論理的には正しい……正しいけどさあ!)そこに卓越した文章が上乗せされれば抱くのは羨望と心地よい敗北感のみである。まいった……デっケェ(ワンピース無料公開中!)

 隻眼の少女買ったのでそのうち読みます。


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