見出し画像

他競技・他分野から学ぶ野球の練習改革【シートノック】

 おかげさまでSCJの活動を通じ、多くの種目のいろいろなコーチと話すことが増えました。
 その中で特に参考になり、これは野球に還元できそうだ!というものもたくさんありました。
 そして、多くは語りませんが「野球のこの練習メニューはどうなの!?」という他種目コーチからのご意見も多いです笑

 今回はその中で、僕が以前から気になっていた「シートノック」について書いてみようと思います。(あくまで主観です。)

シートノックの課題

場所を大きく取ってしまう
・メンバーを絞らないと、待ち時間が膨大になる(アクション回数が非常に少ない)
⇨つまり、時間と場所を大幅に使う割には練習効率が極めて低いメニューだと考えられる
⇨極端に言えば、なるべく避けたいメニューではないかと僕は考える
⇨本当に一部の意見でしたが「シートノックはノッカーの自己満だ」という衝撃的な意見も聞こえていました(汗)

シートノックでしか鍛えられない要素・達成すべき目的

【1つのプレーにおける、各々の役割を「同時に」実践すること】
役割1:カバーリング(打球処理者と送球処理者のウラに移動し、エラーリスクを最小限に抑えること)
役割2:指示(どこに投げるか、どう動くかをプレー中に情報交換すること)
役割3:ポジショニング(シフトともいう。相手の攻撃を防ぐために定位置とは少し違う位置に守備を配置して相手の攻撃に対応すること)

 これらの役割は、1プレーごとに同時に起動します。繊細な部分もでもあるので、ここに関してはシートノックが有効だと考えます。

【試合前のグランドイメージ確認と一体感の醸成】
 試合となると、確認すべきことがたくさんあります。ボールの弾み具合(地面やフェンスなど)、日のあたり具合(特に屋外)、声がどれだけ通るかなど。実際にポジションについて動いてみないと分からない部分も多いので、これは必須です。
 また、試合前のシートノックは基本的にスタメン+ベンチ入りメンバーで行うため、士気やテンションを高めたり、ベンチに入れなかったメンバーに対して「これからやるぞ!」という意志表示をするといった、気持ちの部分も多いに必要です。また、大半は監督やコーチがノックをするので、選手の調子などを直前にチェックしたり、盛り上げたりするのも必要です。

 いずれにしろシートノックでしか得られない要素もあるので、無くして良いメニューでは無いと、念を押して伝えたいと思います。

他の練習で代替できる要素と練習方法

捕球練習】
 西武の源田選手は、練習でテニスボールをひたすらキャッチしまくる練習をし、グラブハンドリングを徹底的に鍛えているようです。(YouTubeにも上がっています)
 グランド状況の悪いところでひたすら近距離ノック(雪上なども含む)。とにかくゴロやフライをたくさん捕球することを目的とし、送球はせず、ひたすら捕ることに集中することで効率を上げる観点です。質もそうですが、量を求めるときには効果的です。
 これは、サッカーの練習でキーパーが連続して捕球動作だけをずっと繰り返しているのを見たときに「これは守備練習でも同じかも」と思ったのがきっかけです。

送球練習】
 キャッチボールの精度を上げて代替します。「試合でアウトを取るために必要となる動き」で、「想定される距離」で行うことを意識すると良いと思います。
 肩を強くするためにボールを投げる観点もありますが、それは「トレーニング」として行うのが良いと思います。(ウォーミングアップも同様)
 コンディショニングの観点から「肩は消耗品」という考えが定着しつつあるため、「送球の精度を上げるキャッチボール」と「肩を鍛えるキャッチボール」は分けて、絶対に肩を壊さないよう設計することが大事だと思います。

中継プレー】
 キャッチボールのペア人数を増やし、距離を測り、カットマンが間にいる状態でスピード重視でやることで回数をこなせます。(これは現在の練習でもよく実践されてますが、非常に良いメニューだと思います)

捕球⇨送球の動作連動】
 捕球と送球のつなぎの動作練習です。寝転んだ状態から近距離ノックを行い、すぐさま捕球し投げる格好までを繰り返すことで、体勢の悪い状態から早急動作へ移る練習ができます。いわゆる「捕ってからが速い」選手を目指すわけですね。
 これはラグビーの練習を聞いたときに、「転んだ状態から起き上がるだけの反復練習をやる」というのを聞いて思いつきました。そもそも体勢が良ければスムーズに送球へ移行できるので、悪い体勢からの練習を徹底的にやることは、非常に理にかなっていると思います。

ノック(打つ人の件)】
 ノックが非常に良い打撃練習であることは有名です。なので、ノッカーは打撃練習として選手が担当するのも非常に有効だと思います。
 練習の全体構成として、守備練習と攻撃練習を分けているチームであれば容易に実施できますし、例えば「ボールコンタクトの精度を上げる」「バットコントロールを磨く」「自分の得意なミートポイントを探る」という目的であれば、ドンピシャのメニューではないでしょうか。

連携パターンの確認】
 パターンの確認、つまりインプット(どのケースでどう動くのかを理解すること)については、グランド外でも実施が可能です。
 理解できている選手をファシリテーターに据え、ホワイトボードを用いて他の選手にレクチャーするのも有効でしょうし、例えば怪我でプレーができない選手にファシリテーターを任せるなど、役割を持たせるという視点でも有効ではないでしょうか。
 教えることが最も勉強になるという点は「ラーニングピラミッド」が証明しています。
 また朝練があるチームは、朝の時間をこの戦術確認に充てるのも良いと思います。朝は身体を練習に適した状態にするのが困難(時間が無い)なため、無闇に身体を動かすと怪我のリスクもあります。
 一方で、朝の頭は冴えている。であれば、朝は頭を使う時間として活用するのは理にかなっていると思います。これは脳科学でも証明されています。

まとめ

・シートノックに限らず、なぜそのメニューをやるのかを極めて明確にすること。シートノックでなければダメな理由は何かを、コーチだけでなく選手やスタッフ含め全員が理解することで、練習精度は大きく変わる

アクション回数を気にすること(捕球を試みた回数、投げた回数、バットを振った回数など)。捕球練習などが代表的だが、質を求められつつも、ある一定の量をこなさなければ上達はしません。普段の練習において、アクション回数をカウントしてみることは、とても意義がある

結果に直結する時間を長くすること。休む時間は必要だが、練習中の待っている時間は勝利に不要。待たずにどんどん練習できるよう工夫し、拘束時間を短く、そして余った時間は野球以外に目を向けるよう促すのもどうだろうか

 僕が野球の練習において最も改善すべきだと感じる点は「練習時間が長すぎる」という部分です。それこそ、野球しか知らない人間ばかり生んでしまう。これはもったいないと思います。
 今回のシートノックも、かねてより「もっと効率よくできないかなー」と思っていました。上記を意識すると、アクション回数も増えるはずなので、練習密度も上がるのではないかと思っています。短時間で同等以上の練習成果を得られれば、それに越したことはないですよね。

 だって、この社会には野球以外にも楽しいことがたくさんあるのだから。それらに触れる時間を確保することは、指導者としての役割だと思うんです。

では。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?