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本刈谷貝塚 土偶 9:末社丹生川社

このページでは市原稲荷神社(愛知県刈谷市)の境内末社丹生川社(にうかわしゃ)に祀られている、滅多に遭遇することのない三柱の祭神について紹介します。

本刈谷貝塚土偶ヘッダー

市原稲荷神社の境内末社市杵島社(いちきしましゃ)から表参道の方に戻る形で、同じく境内末社の丹生川社(にうかわしゃ)に向かった。
『コトバンク』には「丹生」に関して「丹(に)を産する所の意。地名として各地に存在する。」とある。

1市原稲荷神社末社丹生川社MAP

丹生川社には以下三柱の神が祀られている。

・闇龗神(クラオカミ)
・高龗神(タカオカミ)
・罔象女神(ミツハノメ)

その社頭に着くと社頭脇の松の幹に、何やら純白の羽根がくっついて風にそよいでいたので、思わずそれに目を惹かれたことで気づいたのだが、ここは社叢に取り囲まれて、日当たりの悪い場所であり、松の樹皮には少なくとも2種類の苔が繁殖していた。

2市原稲荷神社末社丹生川社苔

それを撮影しようとしていると、自分の脇を銀髪の男性が通り抜け、石鳥居をくぐって行った。
純白の羽根の落とし主に関する想像を巡らせながら、鳥居の前で、男性の参拝者が戻ってくるのを待った。

3市原稲荷神社末社丹生川社

男性が社前から出てきたので、入れ替わりに鳥居をくぐった。

4市原稲荷神社末社丹生川社.JPG

正面には瓦葺切妻造平入の丹生川社が、高さ50cmほどしかないが、石垣を組んだ基壇上に設置されていた。木部に素木の面影は残っておらず、暗く変色しており、正面の戸と板壁に設けられた細かな目の格子窓に房と紙垂(しで)の下がった注連縄が下がっている。
対になった狛犬と常夜灯の先に石畳の短い参道と基壇上に上がるための2段しかないが、幅の広い石段が設けられている。地面は湿気が多いことから苔が生しているが、石畳の参道が設けられたのは参拝者が苔に足を取られないためでもあるのだろう。
社前に上がって参拝した。

末社丹生川社由緒
『市原稲荷神社』の公式サイト(https://www.0-173.com/saijin.html)には丹生川社の由緒に関して以下のようにある。

古文書によると享保21年(1736)夏の終わりに領内が旱魃(干ばつ)に見舞われ、藩主三浦志摩守義理が雨乞立願したところ、8月1日潤いの雨に恵まれたところから一社を建立して、岡象女神を祀り、八朔(はっさく)を祭日にしたといいます。岡象女神は水神・雨乞いの神として信仰され、領内村々が費用を分担して祭りを行い、雨乞い御礼をあわせ行いました。市原竜王宮と呼ばれていたが、明治二年清水社と改め、さらに丹生川社と改められました。 

岡象女神を主とした社なのに、市原稲荷神社のサイトの祭神の紹介では、なぜか闇龗神と高龗神が先に表記されている。それはともかく、旧社名から岡象女神が竜王と結びつけられていたのが解る。
参拝後、格子窓から社内を見ると、3種類の大きさの素木の祠が納められていた。

5市原稲荷神社末社丹生川社祠

中央の祠に岡象女神、両側の祠に闇龗神と高龗神が祀られているのだろう。
三柱とも記紀に登場する神だ。
日本神話では岡象女神はイザナミがカグツチを産んで陰部を火傷し、死ぬ間際に産んだ神とされ、イザナミの死の原因となったカグツチをイザナギが斬り殺した際に生まれたのが闇龗神と高龗神とされている。
ミツハノメは代表的な水の神だが、『goo辞書』は「罔象(古語でミツハ)」を「水の神。水の精霊。」としており、面白いのは『日本書紀』神代紀の「水神―の女(め)を生む」という一文を紹介していることだ。
『君の名は。』のヒロイン宮水三葉(みやみずミツハ)の名は罔象から取ったものだろうか。
一方、闇龗神と高龗神の名の「龗(オカミ)」の原義は龍の古語だという。
日本神話ではミツハノメがイザナミの尿から生まれ、闇龗神と高龗神がカグツチを斬った剣の血から生まれたとしており、三柱を流体と結びつけている。
罔象が女性の水神を生む竜王だったとしても、スサノオの娘たち(宗像三女神)と結びつける文献や事象は現時点では見当たらない。

市原稲荷神社のすぐ脇を流れる逢妻川(あいづまがわ)を観に行った。
市原稲荷神社脇の逢妻川は大掛かりな河川の工事が行われていて、立ち入れなかったので、堤防上から下流方向を撮影したのが下記の写真だ。長梅雨の合間なので、水量は多く、水は濁っていた。向こう岸のように見えるのは逢妻川の中州なので、中州の向こう側にも微かに逢妻川の水面が見え、その向こう岸の向こう側に境川(さかいがわ)が流れている。

10逢妻川

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丹生川社に祀られた三柱の神は滅多に遭遇することのない神々だ。丹生川社の総本社である丹生川上神社(奈良県吉野郡)を訪ねた折、たまたま一般人の立ち入れない拝殿の奥に入れていただき、参拝させていただいたのだが、目の前には200段はありそうな急な木造の階段が立ち上がっていた。とても高所恐怖症の人間では上がれないであろう階段だった。池袋ウエストゲートパークにある、あの芸術劇場の長大なエスカレーターに手摺が無く、
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ただの木造の階段だったら、あなたは上まで上がっていけるだろうか。それはともかく、丹生川上神社は常識から外れた神社だった。




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