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中条遺跡 土偶A 34:龍王の水路

刈谷市の北部に位置する泉田町 八王子神社の北北東250m以内には龍神が祀られていました。

●中条遺跡 土偶A

北側から何度目かの泉田町 八王子神社に向かっていると、右手に瓦葺なのにコンパクトな建物があることに気づいた。
行き過ぎたので、戻ってみると、堂らしかった。

1泉田町 若宮八幡宮

塀はブロックが側溝に1列、並べられているのみで、境内には剪定された松が目立ち、堂は南東向きで道路に45度の角度で設置されている。
境内に入って、その建物に向かうと、建物の前に立っている石柱には「若宮八幡宮」と刻まれていた。
神社だった。
軒には5つの房の下がった注連縄も掛かっている。

2泉田町 若宮八幡宮屋

素木造の躯体には前面に観音開きの格子戸にかんぬきが通してある。
祭神に関する情報は無いが、名古屋総鎮守の若宮八幡社の主祭神は以下の三柱とされている。

 ・仁徳天皇
 ・応神天皇
 ・武内宿禰命

応神天皇&仁徳天皇の親子と、その他三代の天皇に仕えた武内宿禰(すくね)だ。

そして、この若宮八幡宮には本社の右手奥にも祀られているものがあった。
それは銅板葺神明造の社で、屋根の上の千木は内削ぎで女神を表し、5本の鰹木は男神を表している。

3富久泉龍王社

ネットにはこの社前に白地に「富久泉龍王社」と墨書きされた幟が立ち並んでいた。
おそらく、この周辺に湧き水があり、そこに祀られていた龍神だと思われる。
上記写真で両側に白い手すりのようなものが建ててあるが、これは幟立だったのだ。
富久泉龍王社は階段状の基壇上に祀られ、その基壇の麓には龍王のための水瓶が設置されていた。
水瓶を覗き込むと、甕の中は藍藻(らんそう)で深い常磐色に染まっており、この小さな水瓶の中に龍の宇宙が広がっているかのような雰囲気だ。
参道には白くて細かな砂利が敷き詰めてある。

4富久泉龍王社水鉢

この社は側面から見ても、最低限の要素しかなく、シンプルな社だ。

5富久泉龍王社

これを五行(思想)に当てはめて見てみると、

 木=素木造の社・榊
 火=銅板葺屋根(銅=赤金)・蝋燭
 土=注連縄の黄(注連縄=藁=米)
 金=白い砂利・注連縄の白い紙垂
 水=水鉢の水

五行は揃っている。
この境内で、他に龍王とつながるものを探すと、社地の北側から西側に沿って流れる水路が設けられていた。

6富久泉龍王社水路

この水路を下流にたどると、社地の西端で地表から暗渠に入り、南西に向かっているようだった。

1MAP泉田町 若宮八幡宮富久泉龍王社

なぜなら、若宮八幡宮の南側を東西に通っている幹線道路は若宮八幡宮南の交差点から西に向かって下り坂になっていたからだ。
この幹線道路で若宮八幡宮は丘陵上にあることが認識できた。
どこかにこの水路の出口はないかと、幹線道路を北西に下っていくと、左手に葦原が広がっていた。

7南中浜葦原

おそらく、若宮八幡宮脇を流れていた水はここに流れ込んでいたのだろうと推測した。
上記写真の左手にはコンクリートの壁が立ち上がっており、壁の上には住宅が奥に向かって連なっている。
この壁と葦原の狭間をたどってみたところ、壁に沿って暗渠が存在することが確認できた。
ヘッダー写真はその暗渠に蓋がされた金属格子越しに地下の水路を撮影したものだ。
現在の葦原は整理されて、一部が残されており、水路は葦原に沿った通路の地下を通って、発杭川(ほっきがわ)に流れ込んでいるものと推測できる。

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ここ泉田町には町名に「泉」が付いているように、湧き水に関わりのある富久泉龍王社と湖沼と関係の深い弁財天と習合していることの多い厳島社が祀られていましたが、両社に共通しているのは丘陵の端に祀られていることでした。

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