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麻生田町大橋遺跡 土偶A 37:ナミの木とナギの木

豊川市の長山稲荷神社に向かう表参道は明快な山道があるわけではないのですが、弁天島の西端を抜け、橋を渡り、長山熊野神社のある丘陵上に向かって延びていました。

豊川市 長山丘陵

弁天島から北西に向かう長山稲荷神社の表参道は弁天池の一端である水路に西に向かって架かった石橋を抜け、石段で丘陵上に向かっており、石橋の手前にはほとんど朽ちた千本鳥居の一部が残っている。
石橋の親柱には「稲荷橋」のプレートが付いており、千本鳥居とともに、この行く手に稲荷神社が存在することを示していた。
この最初の千本鳥居の正面奥の丘陵上に一本の巨木がたちあがっているのが見えているが、この巨木は、ここにやってくる動機となったイザナミと、もしかすると関係のある樹木であることが解ってくることになった。

長山稲荷神社 千本鳥居/稲荷橋

稲荷橋を渡り、西に向かって石段を登り始めるとすぐ、石段は北東に方向を変え、真っ直ぐ丘陵上に向かって延びており、石段の上には千本鳥居が並んでいるのが見えている。

長山稲荷神社 石段/千本鳥居

石段を登り切ると、平地になっており、千本鳥居と稲荷神社の覆屋が森に包まれていた。

長山稲荷神社 境内

トタン葺で扉の無い覆屋内にはモダンな寺勾配を付けた石垣を組んだ基壇上に稲荷神社が祀られていた。

長山稲荷神社 千本鳥居/覆屋(長山稲荷神社)

社の屋根の内削ぎの千木と陰数の鰹木は祭神が女神であることを示している。
長山稲荷神社は素木造の社を朱に染めたもので、同じ色が覆屋内の木部やトタンの壁も染めていた。

長山稲荷神社

覆屋前で参拝し、その20mあまり南西、そして長山熊野神社の表参道の延長上との交点に向かうと、そこには「牛久保のナギ」と呼ばれているナギの神木が幹を伸ばしていた。

牛久保のナギ

教育委員会の建てた案内書には以下のようにあった。

《牛久保のナギ》
     国指定天然記念物
     昭和13年12月14日指定

熊野神社の森にそびえるこのナギの木は、高さ約20メートル、目通り35メートルの巨木で樹齢四百年以上と推定されます。
ナギは、本州南部、四国、九州、琉球、台湾の山中に自生する植物で、豊川市のように暖帯の北限に近い地域では、このように大木になることはまれです。
別名「ベンケイナカセ」と呼ばれるように、葉は細長くて並行脈があり、簡単にはちぎれません。
ナギの木は雌雄異株であり、このナギは雄株です。線路の北側の熊野神社正面右手にあるナギの木は雌株で、秋になると青藍色(せいらんしょく)の実を結びます。
飯田線によって境内を分断されたものの、やはり飯田線北側の長山熊野神社と南側の長山稲荷神社はもとは一つの杜だった。
長山稲荷神社と市杵島姫神社はもとは長山熊野神社の境内社だったのだろう。

2014年の時点で、ナギ単木で国指定天然記念物となっているのはここのナギと、和歌山県新宮市の熊野速玉大社のナギの2樹だけだという。
熊野速玉大社の祭神は以下となっている。

・熊野速玉大神(くまのはやたま=イザナギの別名)
・熊野夫須美大神(くまのむすみ=イザナミの別名)

熊野速玉大社と長山熊野神社に共通してイザナギの暗喩であるナギの木が植えられていることから、長山熊野神社の実態は熊野速玉神社なのだと思われる。
イザナミを目的に長山の地にやって来たのは間違っていなかったことになる。

ナギの木の名称由来にイザナギが関わっているという情報は見当たらないが、もし関わっていたなら、雄株が「ナギの木」、雌株が「ナミの木」となっていたかもしれない。
牛久保のナギの木は雄株で、地上4mほどの位置で2幹に分かれている。

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長山稲荷神社から下条西町にある市杵島姫神社に向かいました。

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