Webの力を使って勉強会をアクセシブルに

こちらは Webアクセシビリティ Advent Calendar 2019 の23日目の記事です。
この記事では、勉強会をアクセシブルにするために、勉強会のオンライン配信時のメリットや気をつけることをお伝えします。

前書き

私は主に福岡で、アクセシビリティの勉強・実践に一歩踏み出す、一歩踏み込む勉強会「Accessibility Step」を主催しています。
LTをメインとした回を福岡にて数回開催していたのですが、「アクセシビリティの勉強会なのに、福岡以外の人が参加できないのはアクセシブルじゃないな?」と思いました。
そこから、2019年5月よりオンライン配信を行うようにしました。

Accessibility Stepはどうやって配信しているのか。

最近はYouTubeで配信しています。
初めてオンライン配信を行い始めた5月の時点では、「とりあえず遠方の人が参加できるようにすることから始めよう!」としたのでGoogleハングアウトでグループチャットのような形式で始めました。

最初から完璧な配信方法を目指すのは良いことだと思いますが、こだわりすぎると始めることが中々できなくなってしまいます。
実体験ですが、準備期間が取れずあまりテストを試せていないから今回は配信を諦める……という経験を1月にしました。
YouTubeの配信まで気が回っていないけれど、Googleハングアウト(音声配信・画面共有)+UDトーク(音声認識でリアルタイム字幕作成)ならできそう!と初めて配信を行った回では、福岡県外の方にも参加いただきました。

配信しないよりは、少しアクセシブルな勉強会にすることができ、「まずはウェブサイトをリリースしないとアクセスすることもできない」という言葉を思い出しました。
それと似ていて、できることからやって少しずつアクセシブルに、少しずつ参加できる人を増やす。少しずつでも良いから、勉強会へのアクセシビリティを向上させていくことが大事だと感じました。

少しずつアクセシビリティを向上させるポイントをお伝えします。
まずは事前に準備・考えておくこと・気をつけること

オンラインで配信するということを事前に共有する

connpassなどのイベントページの概要に、オンライン配信があることを記載しましょう。「オンライン参加枠」を作るのも、主催者としてはオススメです。
事前に伝えておくことで、場所的にアクセスはできないけれど、リアルタイムで参加できる人が予定を入れやすいです。
また、完全にオンラインではなく現地参加(オフライン参加)する人がいる勉強会であれば配信すること前提で、勉強会が進行されることを事前に知らせておいたほうがスムーズに進められます。

YouTubeチャンネルの準備

配信の細かいところはゆうてんさんにお願いしているので今回は紹介できないのですが、YouTubeアカウントは遅くとも配信日の2日前には作っておくことをオススメします。
Live配信をする際にアカウントの本人確認を求められ、本人確認が完了した約24時間後からでないとLive配信できないようになっていたからです。(4日前くらいに作成して焦った思い出があります)時間に余裕を持って準備しましょう。
また、Live配信URLが発行出来次第、イベントページや参加者へメール、ハッシュタグ等で共有したほうが親切です!(自戒)

UDトークの準備

UDトークで字幕を提供することで、視覚からの情報提供をすることができます。
聴覚に障害がある・聴力がよくない方・音声が出せない・聴けない状況下にいる(例えば会社、カフェ、電車にいてイヤホン等が故障・忘れた場合も含む)方でも情報を得られることができます。身体特性や状況、場所に限らず情報を得られるというわけです。
ウェブアクセシビリティに関する勉強会であれば、インフォアクシアの植木さんが作成した単語登録ファイルを利用することをオススメします。
インフォアクシア主催のセミナー「Webアクセシビリティの学校」で使用するために作成された単語登録ファイルなので、よく使われる言葉がたくさん入っています!
Accessibility Stepでも導入しており(まだ実戦に出せていませんが)イベント名や主催の名前、後述するアジェンダに出てくるような言葉も事前に登録しておくと良いです。
また、主催・運営スタッフが少ないとUDトークを修正する人手が足りない…ということにもなるので、事前にお手伝いいただける方を募ることをオススメします。

アジェンダ(タイムテーブル)の準備

参加者の参加判断になるのは勿論ですが、先述したようにUDトーク等で単語登録しておくためにも早めの確定をオススメします。
また、タイムテーブルがあるとオンライン配信をリアルタイムで視聴する人や、アーカイブを視聴する人にとって親切です。
主催にとっても、ぐだぐだ進行を防ぎ、予定どおりに進めやすいです。

映像配信の準備

映像配信は、下記3点が考えられると思います。

1. スライドや進行用の画面の映像のみを表示
2. 会場(主催や参加者、登壇者)の映像のみを表示
3. 上記の組み合わせ(例:スライドや進行用の画面をメインで表示し、会場の映像をワイプのように小さく表示)

会場側、特に登壇者・参加者が映る際は、事前に確認するようにしましょう。
映りたくない人を映らない席に案内することもアリです。

続いて、勉強会が始まってからアクセシビリティを向上させるために気にかけることを紹介します。

イベント連絡用手段、ハッシュタグ、YouTubeのコメントをそれぞれチェックする

オンラインで配信することで、オンラインで視聴している方も参加者となります。
「URLが分からない」「音声が聞こえない・聞こえづらい」「映像が見えない」といった、オンライン配信特有の対応が必要になってきます。
オンライン対応のスタッフが1人いると心強いです。

複数人が話す際の工夫

映像に話す人が映っていない場合や、参加者が話している人のことを知らない場合、聴力のみで視聴している人(全盲の方や、画面が見れない状況の方)が参加していることを想像してください。
話す最初に「みやもとです」というように名前を名乗ると親切です。
「ああ、これからみやもとが話すんだな」という情報を初めに伝えるのです。
また会場での質疑応答や会話などでは、主催側が挙手した方へ「ではそちらの方どうぞ」というよりは「平尾さんどうぞ」というように名指しでお願いすると「平尾さんに振ったんだな」「これから話す人は平尾さんなんだな」という情報を伝えることができます。
その際、映像配信と同じように顔や名前を知られたくない、という方もいると思うので、配信前に何と呼べば良いか確認しておくと良さそうです。

UDトークの修正・運用

リアルタイムで字幕を修正できるので、後からよりはリアルタイムで修正するほうがオススメです!
無料版ですと「タップして話す」を押してから、およそ20分経過するとリアルタイム字幕作成がストップします。
これは無料版が「短い会話でのコミュニケーション」を想定しているためです。まず無料版で試したい、という人は20分弱の区切り良いタイミングでオン・オフすることをオススメします。
いくつかのプランやアドオンで機能制限を解除できるので、継続して使う方はご検討ください。

アクセシブルな勉強会が開催終了したら、ログを残したり動画をアーカイブするまでが主催のお仕事です。

UDトークのログをとる

UDトークには、会話ログをメールで送信するという機能があります。
これでログを残すことが可能です(他に良き保存方法があれば教えてください)
注意点としては、日付を跨いでしまうと送信できないということ…。
見つけられなかったのですが、無料版だから制限がかかっているのかもしれないです。
ただ無料版でもその日中であれば会話ログをメールで受け取れるので、議事録やイベントレポートとして公開することができます。
リアルタイムで視聴できなかった方でも情報を得られるので場所的・時間的制約がありませんし、参加した方にとって見返すことができます。

動画をアーカイブする

これもUDトークと同じく、リアルタイムで視聴できなかった方でも情報を得られるので場所的・時間的制約がありませんし、参加した方にとって見返すことができるのでオススメします。

最後にメリットをお伝えします。

オンライン配信勉強会のメリット

開催地外の都道府県からでも参加できる人が増える。
家や会社、好きな場所から参加できる人が増える。
業務や用事で開始時間に間に合わなくても、参加できる、
アーカイブがあれば、リアルタイムで参加できなかった人でも情報を受取ることができる。
参加した人にとっても、ログやアーカイブで勉強会を振り返ることができる。

私は勉強会や登壇時に、Webアクセシビリティのことを「より多くのユーザーが、より多くの利用環境から、より多くの場面や状況でWebコンテンツへアクセスできること」というように説明しています。
このオンライン配信勉強会は、Webの力を使って「より多くのユーザーが、より多くの利用環境から、より多くの場面や状況で勉強会へ参加できる」ようになるのです!

例を4人挙げてみます。

1. 東京の職場から視聴しているロービジョンのエンジニア
2. 大阪の自宅から視聴しているウェブデザイナー
3. 神戸の自宅で子供の寝かしつけをしていたので、翌日アーカイブを視聴するUIデザイナー
4. 仕事の都合で現地参加できなくなり、福岡の職場から視聴しているエンジニア

このように様々な人が参加できるようにすることで、多くの知見を、より多くの人に伝えていくことができます。Webというアクセシブルな媒体のおかげで、よりこの世界が良くなっていくのです。

オンライン配信を検討している勉強会の主催者の方や、様々な方へ参考になると幸いです。

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みやもと
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