女ともだちの文通 7


沙也加

この前はありがとう!楽しくておいしいひとときでした。
実はあの日は寝不足で、帰ってから1時間くらいぐうぐう眠りました。起きるとスッキリしていたので近所の沼まで行って周りを2周歩いて帰ってきました。沙也加のおかげでよく食べてよく話してよく寝てよく歩いたなあという1日になりました。ありがとうね。
最近原田マハの「ジヴェルニーの食卓」という短編集を読んでいます。読んだことあるかな?大学生の頃は一生けんめい村上春樹を読んでいましたが、最近はしっかり小説を読むことからも離れていました。
久しぶりに読んでいて、読書っていいなあと改めて。
この短編集の「うつくしい墓」という物語ではアンリ・マティスとパブロ・ピカソの友情が描かれています。ピカソがマティス邸にやって来て、ランチを共にするのは特に印象的なシーンです。二人ともある程度高齢なのにも関わらず、よく食べよく話し、活発にコミュニケーションを取っていて、読んでいるこちらが元気になります。いくつになっても、気持ちよく食事ができ正直に話合える友がいることは素晴らしいことだなあと、しみじみシンプルに思います。
私も沙也加と食事に行くのが好きだよ。
マティスの話をします。「うつくしい墓」ではマグノリアの花が物語のひとつのモチーフになっています。
マティスは十二指腸がんを患っていた頃にマグノリアを描いています。翡翠型のうすみどり色の花瓶に生けられたマグノリアの白、背景にはオレンジ色の鍋、そういう絵画です。
マティスが遺した絵画の中で実際に見たことがあり、好きなのは「赤いキュロットのオダリスク」、たしか横浜美術館の「ルノワールと、パリに恋した12人の画家たち」で見たような。この絵も例に漏れず、南仏の花々の模様と明るい色彩にあふれ、気持ち良さそうに横たわる女性はとてもリラックスした様子。
暖かで穏やかな土地の長く伸ばされた豊かな時間。そういうものを感じます。
夏も盛りの今日この頃ですが…本当は南仏に今すぐにでも出かけたい気持ちだけれどまだまだ難しそうですね。
もう少し夏を楽しむためにマティスの絵をネットで検索しながらその物語に想いを馳せたりするのは心躍ります。暇だと趣味が深まっていくようです笑
沙也加も新居での初めての夏を、おだやかにすごせますように。
間をあけずお返事を書いてしまいました。また時間があるときお手紙をもらえたらうれしいです。
元気でね。

20××.8.13




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