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エアスラッグ博学審問②〜エアスラッグを理解する

1前回の記事ではペレットの特徴について説明しました。

それでは近年流行しているエアスラッグとはどんな弾なのでしょう。

H&N Slug HP 21gr/23gr/25gr/27gr/30gr

これがエアスラッグ弾です。
ライフル弾頭と同じバレット形状で、中央にホロー(穴)が空いています。
ディアボロペレットとは形が全然違いますね。

そして形以上に飛翔体としての能力も違います。

まず、スラッグの大きな特徴は重心が後方にあることです。

重心は後方に、抵抗は前面で受けるのがバレットタイプの弾頭

しかしながら飛翔時の空気抵抗は前方で受け止めます。

そのため、そのまま飛ばしては飛翔体としては安定しません。
ではどうするのか、

その解決法がジャイロ効果です。


不安定な飛翔体に横回転を与えることで、慣性モーメントが発生し安定するようになります。これはよく地球ゴマで例えられますね。

エアスラッグ(ライフル弾頭)はこのジャイロを利用することで、安定した飛行姿勢を保っています。

もちろんペレットにもジャイロがかかっています。ただペレットの場合はスカートで姿勢を安定させることができるので、ジャイロは強くかけずとも問題ありません。

次にバレル内での動きを見てみましょう。

ペレットと違いエアスラッグはボディ全体でバレルに接しています。
そのためペレットに比べると摩擦抵抗が大きく、低出力のエアガンでの使用には向いていません。

また胴の部分はペレットのように点で接していないために、バレルに合わせて変形するのは難しいと言えます。

しかしエアで飛ばすわけですから、しっかりと密閉ができないと(正確にはペレットでも多少はエアは抜けている)正確に射出ができません。
それではどうするかというと、バレル口径にピッタリ合った弾を使う必要があります。

え?5.5mmなら5.5mmの弾でしょ?と思われるかもしれませんが、そうではないのです。

前回の記事で書いたようにペレット弾は変形しやすく、スカートがバレルに張り付く構造をしています。そのためバレル内径への許容幅があり、各エアガンメーカーはそれを前提として、微妙にサイズの違うバレルを作ってきたのです。

これは以前エアスラッグ弾の記事を書いたときにも触れている例えですが、
装薬ライフルの場合、.308winのバレルには308winの弾を使います。.308というのは0.308 inch=0.78232cmです。
弾はこのサイズと決まっており、それに合わせた専用バレルサイズが存在します。

一方エアライフルはというと、5.5mmといっても、さまざまな弾を使うことを前提としており、ペレットの場合、ヘッドは5.6mmほどで、各メーカーで差異はあるものの、ほんの少しオーバーサイズで作られています。

ではエアスラッグはというと、5.49mm~5.53mm程度まで0.01mm単位で細かくラインナップされています。これはエアスラッグがバレル内で変形しにくくいためです。

すなわち、もし皆さんがお手持ちのエアライフルでエアスラッグを撃とうとすると、まずどのサイズが適正なのかを確認する必要があります。FXなど有名なエアライフルであれば、ネットでも情報は出てくるかもしれません。しかしそれ以外は自分で見つけるしかないでしょう。そして、日本国内には、この微妙な口径違いの弾が全て輸入されているわけではありません。気軽にエアスラッグを撃つつもりでしたら、この時点で詰んでいます(笑)

※ただし、5.5mm以外の口径は今までマイナーな存在だったこともあり、バレル口径のバリエーションが少なく、エアスラッグも種類が少なかったりします。

※5.5mmでいうと、LWやCZの12条ライフリングは.217の相性が良い場合がほとんどで、各社ポリゴナルバレルは.218というのが一般的です。ただしこれは重量が増すとバレル接触面積が増えるため、ポリバレルでも30gr以上は.217の方が調子が良い、ということもあります。

さらに詳しく説明すると、市場のエアスラッグにはいくつかのテール(ベース)形状が存在します。

種類はこんなものでしょうか。
カップベースのリムはペレットのスカートのようにバレルに張り付かせる目的があるようです。
ただ、市場全体を見るとディッシュベースが主流です。
フラットベースは一部の熱心なエアガンナーにはアキュラシーの高さで人気がありますが、私が試した限りは、この形状で正確に撃てるようにするには、かなりきっちりセッティングを詰めたハイパワーガンが必要なようです。

※2024.9.26追記
ベース形状は色々議論されてきましたが、最近はあまりバレルとの密着性を取り沙汰することは無くなったように感じます。それより、飛翔中のカルマン渦の影響の方が大きいように思います。いずれにせよ極端なベース形状は見なくなりました。

ホローベースやボートテールは主流ではないが存在はする、という程度です。

これらのテール形状は、バレル内の密着度以外に、バレルから弾が離れる際のエアフロー=安定性に大きく影響しています。
またボートテールなどは飛行中の空気抵抗(カルマン渦)の低減を狙ったものです。

もはやこれはライフルの分野の話ですので、(私も詳しくないので)このあたりにしておきましょう。WEBでも見つけやすい情報です。

さて、もうひとつエアスラッグの性格を決める、ヘッド(ホロー)形状についてです。

一般的にエアスラッグはホローという穴が空いています。
ひとつは対象に当たった時に潰れやすくするためと、もうひとつは大きさ(長さ)を稼ぐためです。
5.5mmのペレットは18g程度なので、同じサイズ感でホローのない弾頭を作るとかなり重量が出てしまいます。逆に重量を合わせようとすると、かなり短い弾になってしまいます。

ホローのサイズや深さはメーカによって違いますが、ヘッドの処理も違います。

どんな種類があるかは上の図を参考にしてください。
ちなみに、このホロー形状は名前がまだ付いていないので、
私が勝手に付けています。人に話しても通用しませんので注意しましょう(笑)

H&Nのスラグは一般的なホローに比べるとポイントが尖りホローも小さく作られています。これは高BCを狙ったものでしょう。(あまり変わりませんが)

ベーシックなホローはポイントにしっかりとフラット面を作り、ホローを設けています。これは空気抵抗を生み出しますので、BC値としてはデメリットですが、ホローリムの形状に強度が出ます。
エアスラッグにおいてこのヘッド形状の正確さは着弾に大きな影響を与えます。

ワッドカットホローと名付けたものは、最近発表したFX HALOをイメージしてます。
SAY GODDBYE TO PELLETという大胆なコピーが付いているので私も目を丸くしましたが、実際どうなのかは蓋を開けてみないと分かりません。

海外の説明文を見ると、BC値は同重量のスラグに比べると低く、恐らく〜0.06くらい(一般的には0.07程度)と推察されます。
これは大きく口を開けたホロー形状にあるようです。 
当然、ホローを大きくすれば全長も大きくすることができ、なおかつ、変形もしやすくなるので、バレルへの張り付きも今までのスラグよりは良さそうです。

で、ここからは主観の推測ですが、
FXハロはあくまでペレットにさよならするもの=つまり代替品であって、現在のスラグの持つメリットを全て享受するのは難しいのではと考えています。
ひとつはやはりこの形状、空気抵抗を全面でフラットに受ける、つまり装薬やマッチグレードペレットのワッドカット弾のように、近距離ではアキュラシーを上げられても遠距離となると、疑問が残ります。
またFXハイブリッドもそうでしたが、一般的なスラグより重心が前に移動するので、空気抵抗などを原因としたヨーイングが起きやすそうです。
これはジャイロでカバーできるとは思いますが、整流効果がなさそうな寸胴形状なので、飛行姿勢の自動収斂は期待できなそうです。ペレットのような寛容性を持たないのは間違いないです。
まあ、とにかく撃ってみればわかることですし、それも含めて楽しみですけどね。

なんにせよ、エアスラッグは、外径、ベース、ホロー形状によって安定性が決まり、飛ばすだけなら如何様にでもなりますが、ペレットと同じアキュラシーとなると、かなり正確なセッティングが必要です。
エアフローだけで言っても、ペレットで精度が出る空気量、吐出スピード、弾速でスラッグの精度が出るとは限りません。


また長々と書いてしまいましたが、
エアスラッグはペレットとは全く別の飛翔体=ライフル弾頭なので、銃のセッティングが全く異なります。.22LRを参考にした方が良いくらいです。

またペレットはその懐の深さ、つまり飛翔中に姿勢を安定させることができるので、銃のセッティングを詰め切らなくても1ホールアキュラシーを出すことが可能でしたが、エアスラッグはバレルを離れたが最後、飛翔中安定性向上はほとんど期待できません。なので、弾がバレルを離れるまでが精度の要になります。

エアスラッグを頑張ってセッティングし得られるのはBC値ですが、50m程度の距離であれば、その恩恵は決して大きいとは言えません。

どうですか?皆さんはそこまでして、エアスラッグ、使いますか?(笑)

ただ、エアスラッグでアキュラシーが出る、ということは銃のセッティング及び、射手のガンコントロールも完璧に極まっているという証明でもあります。

ペレットで1ホール出せる銃が、スラッグの精度も出るかは分かりませんが、
スラッグで1ホール出せるならば、ペレットの1ホールも余裕で出せるでしょう。

さあさあ、課題だらけなエアスラッグの国内事情が、どんな方向に向かうのか、どう扱われていくのか、ちょっと楽しみでもありますw
エアライフルをきちんと理解しないと使えない弾ですからね…

ではでは、今回はこの辺で。
次回は何を書こうかなー。

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