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HDRIを作りたい!【01.準備編】

はじめまして、38912 DIGITALこと、三宅智之と申します。私は映像制作をしている高校生です。中学の頃は「2045」というVFX作品を作ってたりしました。
さて、初めっからマニアックなジャンルですが、3DCGで使われるHDRI(ハイ ダイナミック レンジ イメージ)という画像を作るノウハウ的なものを書いていきたいと思います。
結構長くなるので、何回かの記事に分けて書いていけたらなと思います。
今回は…準備編です!!

1. HDRIとは?

そもそもHDRIってなんだ?ってことなんですが、簡単に言うと「暗いところから明るいところまでの幅広い光の情報を持った画像」のことです。よく写真で白飛び、黒つぶれ、って言いますよね。逆光で人の写真を撮ると人が真っ黒になったり、逆に人に明るさを合わせて撮ると周りが真っ白になったりするアレです。カメラには、撮れる光の範囲(ダイナミック レンジ)があります。HDRI(ハイ ダイナミック レンジ イメージ)というのはその名の通り、その場の幅広い光の範囲の情報を持つ画像のことなんです。

ちなみに、幅広く撮ったものを一般的な画像の形式に処理(トーンマッピング)しているのが最近のスマホにあるHDR撮影機能だったりします。
今回のHDRIとは違うので注意してください。

幅広い光のデータを保存するために、HDRIは特殊な形式で保存されます。そんなの何に使うんだって話なんですが、3DCGでは結構役に立つんです。全天球、つまり360度のHDRIを作ることで、その場の光の情報を全てキャプチャできます。光の情報があれば、コンピュータ上で再現できるはずです。この手法をIBL(イメージ ベースド ライティング)といい、画像をもとにしたライティングという意味です。実写合成などの際に非常に役に立ちます。

というわけで今回は3DCGでIBLをする際に使うHDRIについてのお話です(呪文みたい…)。

2. 作るために何が必要?

予め言っておきます…ゼロから揃えるとなるとそこそこお金がかかります。

必要なもの
・マニュアル撮影のできるカメラ
・魚眼レンズ
・画像を合成するためのスティッチソフト
・三脚

これらは最低限必要です。正確にはレンズは魚眼じゃなくてもいいんですが、全方向撮るには枚数がトンデモナイことになるのでおすすめしません。

あるとさらにクオリティを上げられるもの
・パノラマ雲台
・シャッターリモートコントローラー
・NDフィルター(太陽光下の屋外撮影用)

これらがあると、さらに綺麗なHDRIを撮ることができます。

3. カメラとレンズ

私はOlympusのOM-D E-M5 Mark IIというカメラにLUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5という魚眼レンズをつけてHDRIを撮影しています。

私がOMD-5を使っている理由はいくつかありまして…

・HDRI撮影に必要十分なブラケット撮影ができる。(重要!)
・マイクロフォーサーズマウント(私が映像撮影に使っているBMPCCとレンズを共用できる)
・コンパクトで一眼のカメラとして普段使いしやすい。

など挙げるといろいろあります。OMD-5 MK IIは、HDRI撮影に関わらず普通に一眼カメラとしておすすめできるカメラだったりします。

HDRIは露出違いの画像を各角度で撮影しそれを合成して作るのですが、このカメラはブラケット撮影機能でその露出違いの写真を自動でバシャバシャ撮ってくれます。HDRIは雲など外の風景を撮る際に撮影時間の短さも重要になってくるので、この機能はあると便利ですね。
ちなみに一般的なカメラについているブラケット撮影機能はHDRIに十分な枚数は撮ってくれないことが多いのですが、このカメラは最大で12EVまでの範囲(2EV刻みで7枚、もしくは3EV刻みで5枚)撮ってくれます。なんと便利。

HDRI界でよくある組み合わせで、CanonのカメラにMagic Lanternという外部のファームウェアを入れてブラケット撮影するものがありますが、もちろん自己責任でやる必要があります。このOMD-5 MK IIなら標準機能でHDRI用の素材が撮れるので気持ち敷居が低いのです。

ただし、フォーサーズなのでフルサイズには解像度の面などで劣ります
あくまで私の場合は、普段使いしているのがフォーサーズレンズというのと、小さいカメラのほうが好きだから、という理由でこのカメラを選びました。カメラはブラケット撮影機能の有無、センサーサイズなどを考慮して選ぶといいかと思います。

HDRI撮影で使うレンズ選びは、主に焦点距離が問題になってきます。画角が広ければ広いほど早く撮影でき、スティッチも楽ですが、その分HDRIの解像度は低いものになります。逆に狭ければ狭いほど、高解像度のHDRIを作ることが出来ますが、撮影に時間がかかりスティッチの処理も大変です。
レンズは「解像度」と「手間&スピード」のトレードオフ、といったところでしょうか。

4. スティッチソフト

私はPTGui Proというソフトを使っています。HDRI界でよく使われているソフトですね。他のソフトについては、使ったことがないのでわかりません…。

PTGuiは、360度のパノラマ合成、HDRIの作成・書き出し(HDRIはpro版のみ)ができるソフトです。2019年現在、個人用ライセンスで2万5000円くらいです。ソフトの使い方についても今後記事にまとめられたらなと思いますが、分かりやすい日本の書籍海外の記事があるので、そちらを見てもらったほうが早いかもしれません。

5. パノラマ雲台

全天球撮影につきまとうのが、ノーダルポイントのズレです。普通に三脚で少しずつ角度を変えながら撮ってもいいのですが、レンズの中心=三脚の回転軸とは限らないので、画面の端っこでズレが出てきます。そのズレを無くすのがパノラマ雲台です。

私はNodal Ninjaというパノラマ雲台を使っています。ただ日本国内だとよしみカメラさんくらいでしか取り扱っているのを見たことがありません…。値段はだいたい3万円前後でしょうか。
Nodal Ninjaはまさに全天球を撮るために作られた雲台で、これがあることで非常にすばやく、かつ正確にHDRIを撮ることができます。

6. NDフィルター

これは太陽光をHDRIで再現したいコアなHDRIオタクしか使わないので、絶対必要というわけではありません。
さきほどカメラのブラケット撮影で12EV撮れると言いましたが、直射日光の太陽光下の環境光をまるごと撮るには24EV程度のダイナミックレンジが必要になってきます。太陽が明るすぎるため、最近のカメラで撮れる1/8000のシャッタースピードでも遅すぎるのです。
私は魚眼を使っているため、ゼラチンフィルター(だいたい3000円程度)を説明書の指定のサイズに切ってレンズの後ろに挟む形で使っています。
太陽の明るさそのものを再現できるHDRIは難易度が高く、工程含めてそこそこ複雑なので、このあと方法含めて記事にする予定です。

7. まとめ

準備だけで結構な分量になってしまいました。
なぜ初回でよりによってこのテーマを扱ったかといいますと、私自身HDRIについて情報が少なくて学習するのが大変だったからです。本屋に行ってもHDRIの本は一冊在庫があるかないか、ネット上にも分かりやすくまとまったものはGreg Zaalさんの記事くらいで、なかなか難しい。とくに悩んだ太陽光の問題はネットにもまったく情報がなくて、Gregさんも自身の記事のコメント欄で「複雑だからいずれ動画にするよ」とおっしゃっているもののまだ続報はなかったりと…周りに聞ける人がいない高校生にはキツイ!といった状況でした(Twitterで聞いてもマニアックすぎるのか答えてくれる人はおらず…)。

自分のためにも、(HDRIが作れなくて)悩んでいる中高生のためにも、今後もこうやって情報を発信していけたらなーと思っています。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!ではまた!

参考文献
Adaptive samples「How to Create Your Own HDR Environment Maps」2019.1 最終閲覧
Adaptive samples「What Makes a Good HDRI and How to Use It Correctly」2019.1最終閲覧
HDRI Haven 「FAQ」2019.1最終閲覧
グラフィックス社「Image-Based LightingのためのHDRI制作ガイド」
CGWORLD.jp「撮影現場を再現するHDRIを用いたライティング技法(白組×映画『寄生獣』&『寄生獣 完結編』)」2019.1最終閲覧
clockwork「パノラマHDRIを作る」2019.1最終閲覧
「Direct HDR Capture of the Sun and Sky」2019.1最終閲覧

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