幽霊

家族全員心霊現象の類は信じている。
というか、疑っていないだけで特に気にしていない。
あるんだろうな、いるんだろうな、くらいに思っている。

スピード狂絶頂期の幼い頃にずっと遊んでくれていた母の弟はわたしが20代半ばの時に若くして亡くなり、30歳まではたまに監視されてるのを感じることがあった。
姿は見えないけど、天井に向かって犬2匹が吠えるので、やはり見られてるんだろうなと思っていた。

7歳の春 階段から落ちて入院していた時、同じ病院に母方の祖父も入院していて、一度だけ夜中に祖父がわたしのベッドまで訪ねてきた。
わたしは頭蓋骨にヒビが入っている怪我人だし夜中なので会話はしていない。単に顔を見に来たんだなと思った。
翌日祖父が亡くなったと聞かされ、わたしを訪ねてきたのはもう亡くなった後だったと知る。
飲みすぎで肝臓破裂して57歳で亡くなったので、酔っていない祖父を見たことがない。
因みに父方の祖父は呆けてシャンプーを飲んで肺炎起こして亡くなった。

スピード狂のわたしを毎日叱っていた洋品店のおばちゃんの旦那はおそらく店主で、朝から晩までお店の前に立ってずっとタバコを吸っていた。
人とワイワイおしゃべりするわけでもなく、いつも嫌~な顔で立っていて、
わたしが中学生の頃にそれなりの年齢で亡くなった。
正直おじさんが好きではなかったので前を通りやすくなった。

ある日祖母の家へ行こうと洋品店の前を通ったらいつものようにおっさんが店前に立ってタバコを吸っていて、
『こんにちは』と挨拶をして通った。
昔から挨拶してもだいたい無視をする。
夜になって自宅で母に「今日○○のおじさん久々に見たけど相変わらず嫌な顔してたわ~」と言うと、「あたしも今日見たわ~」と母も言っていて、
数秒してから『!!!おっさん去年亡くなってるわ!』と気付いた。
親子共々特に怯えることもなく、
死んでまであんな顔してなくてもいいのにね~なんか未練があるのかね~
などと不謹慎な会話で終わった。

それからしばらくして、近所に住む母の同級生むっちゃんが凄い速さで自転車こいで家のほうに向かっているのを学校帰りに見たので、帰宅して「むっちゃんがものすごい急いでた」と母に報告すると、
「あたしもさっき家の前通るの見て声かけたけど無視された」と言っていて、
夜になってから、あ~ むっちゃんも数カ月前に亡くなったんだった、と気付いた。
子どもが3人いて、わたしより年下の双子がいたので夕飯の支度のために急いでいたのかもしれない。

そんなわけで、真昼間に亡くなった人を見たことがあるので幽霊を疑っていなくて、恐怖体験をしたこともないし、
夜中にすれ違う人はだいたい幽霊だと思って心の中で「こんばんは、今日もご苦労様」と会釈している。
酔っ払っていると本当に会釈してしまって怖がられたりする。

ちょっと話は戻るけど、
小3の時珍しく昼休憩を昼休憩としてクラスメイトと鬼ごっこで満喫していた時に渡り廊下を走っていたら、
わたし10cmくらい浮いたんですよ。
浮いた状態で渡り廊下の端までスーっと進んだんですよ。
とても滑らかで速かった。
テンション上がりまくって帰宅するなり母に伝えたら、
『うん、飛べるよ』と返ってきた。
それ以来わたしは一度も浮いていないし母が飛んでるのも見たことがないので、母のそれは信じていない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?