認知症対応型グループホーム

本日も認知症についてです。

認知症患者の介護で在宅介護を選択すると、肉体的精神的負担だけでなく、事故や事件の加害者となり賠償責任を求められるリスクがあり、認知症が介護の中でもっとも厄介であることは前項で記したとおりです。

重度化した認知症は実質24時間の監視体制が強いられるため、もはや一家庭で対応するには限界を越えています。

そこで合理的な解決策はただ一つ。

経験のあるプロがいる施設を利用するしかありません。もちろん利用料といった大きな出費が発生するわけですが、周辺症状のある重症化した認知症は家族が協力して支えるといった次元ではないのです。

2000年度の介護保険制度の開始以来、認知症高齢者グループホームが急速に普及しました。

グループホームとは認知症の高齢者が少人数で介護スタッフとともに共同生活を行う住宅であり、利用者の居室は個室で共用部分として食道などのフロアを設けています。

また能力に応じて料理や掃除などの役割を分担しながら、自宅で過ごすのと同じような雰囲気で生活が送れます。

毎月の費用は地域にもよりますが、大体月15万~20万といったところです。
グループホームは一見すると認知症の切り札的な存在とも思えますが、現実的にはいくつかの問題も発生しています。

その一つが利用者の重度化です。
認知症は月日の経過とともに進行していきます。

当初は軽度であった認知症の人でも徐々に重度化していくため、開設して何年も経過したグループホームでは実質上、食事、排せつ、入浴などの基本的な対応で一日の大半が過ぎてしまい、当初の理念とは程遠い状態となっています。

グループホームには医療の専門家もいないうえに、重度化した認知症に対応できる設備もありません。(お風呂は一般家庭用と同じです。)介護職員は徐々に過酷な勤務状況に追い込まれていきます。しかし家族からは「最期までここで過ごさせて下さい」と懇願されたりもします。

これらは構造的な問題であり、当初からグループホーム自体が重症化した認知症を前提として設計されているわけではありません。

またあまり語られてはいませんが、介護職員の安全対策も気になるところです。

認知症ケアは老人介護の中でも難しいといわれていますが、その要因は重度化した認知症患者は他の高齢介護者と比べてはるかに暴力的で危険な一面を持っている点です。

私も実際の介護現場で、介護職員が認知症患者に突然殴られて顔にアザをつくったり、指を噛まれて大量出血して救急搬送される場面に遭遇したこともあります。

認知症患者の対応の難しさを改めて感じるとともに、認知症患者の人権ばかりが優先され語られる風潮には若干のバランスの欠如を感じます。

現在のグループホームには見直すべき課題があることは確かです。しかし認知症対策の一つとして重要な存在にもなりうると思います。

まずグループホームという認知症患者に特化した枠組みを設けることで、介護職員も認知症専任スタッフとしてケアに集中することができます。

認知症患者と認知症以外の要介護者とでは介護への対応が全く異なるため、両者をかけ持つことなく、しっかりと区分けをしたほうが介護職員の負担は軽減できます。

今後グループホームが認知症介護に疲弊した家族の最後の駆け込み寺として機能してくれることを期待しています。

以上、ここまでグループホームについて書いてきましたが、日本では施設の利用そのものへ抵抗を感じている方も多いようです。

社会の風潮として家族の献身的な介護は美談となり、対して施設に預けることは介護ネグレクトと疑われる恐れがあるため、施設の利用には慎重な方もいるようです。

しかし世間体を気にして躊躇していても、介護人のためにも地域社会のためにもなりません。

いずれにしても今後、認知症は間違いなく大きな社会問題となります。認知症患者は施設の手を借りることは当たり前なんだ、といった社会の風潮が必要で、またそれを受け入れることができる地域社会の環境構築が急がれます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?