ふるさと納税制度は廃止せよ

ご存じの方も多いと思いますが、6月から「ふるさと納税制度」が認可制に移行して新たにスタートしました。

また総務省の通知を守らずに多額の寄付を集めた4市町が制度対象外とされました。

本日は「ふるさと納税」について、私の偏見を交えて考察していきます。

まず第一にFPという立場からのコメントであれば、「ふるさと納税」は経済合理的な側面から判断して、積極的に利用すべきお得な制度であることは間違いありません。

何しろ節税ができて+返礼品がもらえるわけですから、一般個人にとって拒否する理由はありません。

事実多くのFPが、「ふるさと納税」の賢い利用法といった類のセミナーを各地で開催しています。
(幸い)私にはこの手のセミナー依頼は全く来ないため、本日は躊躇なく制度批判ができそうです。

「ふるさと納税」が抱える問題点は大きく分けて二つあります。

(その①)中長期的には地域活性化に逆行する

まず「ふるさと納税」って納税という名称ですが制度上は寄附控除の一つなので、厳密には「ふるさと寄付金制度」といったネーミングのほうが正確です。

この制度は寄付することで、コメやカニが家にドッサリと送られてくる、いわば濡れ手で粟のような制度です。

うまい話には気をつけなさい、と親に言われてきましたが、これは国認定のうまい話ですから、返礼品競争と言われようと、一般消費者が遠慮する必要は全くありません。

ただし昨今の過度な返礼品競争が激化したことで、自治体や地元業者にアンフェアな格差が生れるなどの問題が発生しはじめました。これは一般市民にとっても中長期的なデメリットと考えられます。

どういうことか。

ふるさと納税制度は地方の生産者にとっては魅力的です。それは市場競争よりも手っ取り早く売上げを上げることができるからです。

一見するとお金が回り、地方の財源も増加して地方活性化に繋がるかのように思われていますが、これは一部特定業者の商品を自治体が税金でまとめて買い取る、一種の公共事業のようなものです。

地元産業が自治体依存を深め将来的には、自立して真っ当な市場取引をする産業が弱体化してしまうのです。

一部業者だけが自治体との癒着でボロ儲けするような市場は決して健全とは言えません。これは中長期的に地域活性化とはならないのです。
早急に本来の市場原理にもどすべきです。

(その②)所得層による逆進性が強い制度

「ふるさと納税」はある種の減税制度です。
もともと減税という政策は低所得者にとっては恩恵が少ないものです。

「ふるさと納税」も所得と連動しているため、高額所得者ほど控除額が大きく返礼品はたくさん貰えます。

逆進性とは高所得者ほど税負担が軽くなる現象として消費税などがよく指摘されますが、逆進性自体が悪であるということではなく程度の問題なのです。

「ふるさと納税」の場合はその逆進性がより強く、税の公平性の観点から問題なのです。

ただ低所得者は、この逆進性の不公平感にほどんど気づいていないため、特段世論を巻き込む大きな批判の声にはなりません。

最後に総務省の対応についてですが、今回新制度スタートにあたり4つの市町が対象外となりました。

過去の行為まで遡って制度を適用することは本来、法の一般原則に反します。これは総務省の権力の乱用ではないでしょうか。

ただ総務省にも言い分はあります。

2年前から競争が激化しないように条件を明示してきました。そしてほとんどの自治体は納得して対応してくれたにもかかわらず、一部市町は総務省の明示を無視して利己的な行動をとりました。

その制裁。だから妥当。
とは言っても、もともと制度の立て付けに不備があったのだから総務省にも一定の責任があります。

ましてや過度な返礼品合戦になるといった素人でも予測できることを、曖昧にして政策を進めた罪は大きいと思います。

以上より結論としたら、「ふるさと納税」は一旦廃止にするか、返礼品無しの寄付制度に変更すべきです。

「ふるさと」「寄付」といった綺麗な表看板の裏では返礼品というニンジンに自治体も生産者も納税者も喰らいつき、後先考えずに利用しまくる姿はなんだかあんまり美しくありません。

日本に返礼品目当てではない適切な寄付文化が根付くことを願います。

おわり

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