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小説「推し、燃ゆ」感想文

小説「推し、燃ゆ」(作:宇佐見りん)を読んだので感想文を書きました。
ネタバレを含みます。


タイトルの印象よりも重い小説だった。文字数は多く無いので読みやすい。
ちょっと主人公がオタク描写にしても病み過ぎの金使い過ぎのオタク以前にやばすぎるやつなのと前半の水泳中の文芸的なポエマーな描写はキツかったけど、なんだかんだ良かった。主人公が推しに集中することで自分の人生の辛さを紛らわそうとしていたり推しを解釈すること通して自分の熱い気持ちに向き合っていたりするのは面白かった。


前半はオタク描写にしてもやりすぎやろと思っていた主人公の描写が、後半になるにつれバイトできなさ社会不適合さがリアルすぎてああこれはオタクであることの描写なんじゃなくて軽めの障害持ってる社会不適合者がオタクをやりながら人生頑張ってる描写なんだ、オタクがメインなんじゃなくて社会不適合者がオタクやってることがメインなんだと気づいて納得してからは受け入れられた。


主人公の人生のつらさの勉強できなすぎる、障害への不理解、家族からの陰口、バイトできなすぎる、就活できない、部屋散らかりまくりなどリアルすぎてキツかったけど母の人生の辛さもだいぶディテールがあってリアルすぎてキツかった。


バイトは辛いけど一時間でグッズ2時間でCD一日でライブチケット代になるから…!と辛さを紛らわしてなんとかごまかしごまかし辛さを頑張っている描写はガチリアルだった。それはまあオタクあるあるだなあと思った。


主人公は基本的にまともじゃないけど推しに対してだけは本当にまともな人間で、それが美しくもあり悲しくもあった。


後半主人公が推しの住所知っちゃってから自宅凸殺人ENDあるのかなと思ったら凸行ったけど外から自宅眺めるだけでそのまま帰って、推しが引退していなくなっても主人公の地味できつくて自分で歩まなければならない人生は続いていくしっとりENDでンハ〜そうなんだ…と思った。あんまり希望も見出せずに、気持ちいいくらいのどでかい破壊もせずに、ただ暗く終わっていった。問題解決パートはない。爽快感とかは無い。逆に凸殺人ENDくらいまで行けば鬱すぎて気持ち良い爽快感になるけどそうまではいけないただこれからも長い人生がある、そういう終わり方だった。部屋に散らかした綿棒を自分で四つん這いになって拾うシーンで終わるだけまだこれからの自分の人生に向き合う感じがあって明るいのかもしれない。


内容がリアルかつめちゃくちゃ暗いので寝る前に読むと自分の人生の悩み思い出して眠れなくなりそう。私は読んじゃったから一旦お風呂入って明るいyoutube動画とか見てから寝た。


あと主人公がツイッターにいる若いオタクの感じで父親はおじさん構文のオタク(リアルでは隠してるがちょっとネットリテラシーが低いので主人公にバレている。)だったのはウケた。


久々にがっつり小説読めて楽しかった!


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