妄想創作ストーリー3
どうせ誰も信じない。
殿は決めていた。
「造化三神(ぞうかさんしん)とイザナギとイザナミは、抹消する」と。
「何故(なにゆえ)にございますか?」
「負が多い。先達もご苦労なさっていたが、情が深い故に黙認されていた。だが、もう無理じゃ」
「無理…とは?民がでございますか?」
「宇宙がな。あれは外から来た」
家臣にはピンと来なかったが、殿は澄んだ目をしていたのでそれ以上は聞かなかった。
歴代将軍を集めて、殿はその件の会議を開いた。
「三代、お主は消せるか?」
「………」
「五代、お主は?」
「仰せのままに。私は殿に従います」
「では、任せたい」
「はい」
「二代、監視を頼む」
「かしこまりました」
「他の者は、………」
殿は三代が応えない事を理解していた。
三代が、この後どう動くのかも承知していた。
「だが…子は可愛いものであるからな」
「はい?」
近くにいた家臣は振り向いたが、殿は目を閉じた。
「例の者に伝令を。お主は解るか?とだけ」
「はっ」
みんな、子どもなのだ。
命は繋がっているのだ。
『神』と呼ばれる者から、脈々と。
人がひとりでは淋しいのと同じで、神もひとりでは淋しいのだ。
何故に、異物が混入したのか。
何度も考えたが、今となっては解らない。
時として苛立ったこともあった。
時として、異物が上手く使える場合もあった。
だが、もうそうは行かない。
「一神一翼(いっしんいちよく)は、嘘だと教えたのだがな」
解る者を出しても、排除の力に負ける。
数が多い方を力と見て選ぶ日和見。
そういう者がいてもいいが、そればかりになっては困る。
本当の太陽は、どこにあるのか。
本当の北極星は、どれなのか。
誰も解らなくなっているではないか。
それでは、月の意味も当然解らない。
支配ではない「主従関係」の意味も勿論解らない。
「だが…子は可愛いものであるからな」
殿はまたそれを言葉にして、地球を見下ろした。
その可愛い『子』が上手く尻を拭けていない。
自分の選んだことに責任すら持てない。
否、責任の意味さえ理解しているかどうか。
「故に子は、尻がムズ痒いのだったな…。五代」
「はい」
「我が思うように上手くコトが運ばぬ理由も…そういう事であるのだな」
「恐れ多くも…私共の力不足でしょうか」
「責めるでない。建て直しはこれからじゃ」
「左様でございますな」
「それにな、此方は一神一翼とは異なるのだ」
「はい」
「多くの女神様もついておられるのだ。負けに行くのではない」
我々は、我々ぢゃ。
そして繁栄していかねばならぬ。
破滅へ導く異物には、いよいよ別れを告げる刻が来たのだ。
「様々な神々様にも、伏して願い奉る。そして、よろしく頼むぞ、皆の者…。勿論、追い付いて来た可愛い『子』たちもな」
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