小説『俺の赤いネックレスとあの人の命日』
この店には入ったことがある。店員さんの顔も覚えている。
「メンズってどの辺ですか?」
指差された硝子ケースを覗く。……やっぱりメンズは詰まらない。ネックレスならチェーンにチャームが一つぶら下がっているだけとか。ブレスレットなら丸い石が数珠みたいに連なっているのとか。
店員さんは男性たった一人だった。ドアが開いてショップに新鮮な空気が流れた。若いカップルの客が入って来て、店員さんはそちらに行ってしまう。
携帯の時間を見る。まだ大丈夫。……送られて来た住所は確かにこのショ