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#ファンタジー小説部門

小説『皆で浴衣で盆踊り 第1話』

一、バード・マン  天使(てんし)の脳内から、先程、さよならをして出て行った酸素が、回れ右をして、ちょっと帰って来た。視界も、ちょっと晴れてきた。見慣れた保健室の天井。天井は灰色で、白い布を被ったハロウィーンの幽霊そっくりの、でっかい染みがある。そのお化けはリアルで、今にも動き出しそうだった。恐怖で、天使はぎゅうぎゅう目をつぶった。 「まあた、ぶっ倒れたんだって?」  天使が所属する美術部の顧問の先生。先生の声はどこまでも優しい。でも、ぶっ倒れたなんて、あんまりお品のいい

小説『皆で浴衣で盆踊り 第2話』

二、死体のモデル  天使が幼稚園に通っていた時。お母さんが帰って来なくて、暗闇にいて、バード・マンみたいに、目だけでいて、頭も身体もなくて。明かりの点け方は知ってたのに点けなかった。  ……それ以前は、おばあちゃんがいたんだ。おばあちゃんが死んじゃって、それからだ。お母さんが数日いなくなって、食べる物がなくなって、夜になって、また目だけになって、でも隣の家に助けを求めたり、一人で泣いたりしないで、ずっと座ったまま、目だけでいた。ずっと、待って待って、お母さんが帰って来

小説『皆で浴衣で盆踊り 第3話』

五、芥川龍之介の幽霊  二、三日が過ぎると、天使から切腹願望や殺人願望が徐々に消えて行った。……母親を殺したい、と本気で思うなんて。日本刀で後を追うなんて。  病院の食事は、栄養はあるのかも知れないけど、見た目はコンビニ弁当と変わりはない。色んな食べ物が、仕切りのある入れ物に、ちょっとずつ盛られている。近所のいつも行ってたコンビニの弁当に絡まっていた、気持ち悪い長い髪の毛を思い出した。  天使は、食べなくなった。食べたくないのは、髪の毛のせいだと思っていた。実は、食べ