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小説『サラブレッド』

「オニイサンってさ、なにしてる人?」 「え、オレ? 警察」 「ふーん、いい身体してると思った……。あれ、アタシって、逮捕されちゃうの?」 「なんで? なんにも悪いことしてないだろ?」 「そうよね。あ、でもコレって、御金貰ったら売春よね」 「じゃあ、御金上げないから」 「……え、ソレはヤダ」 「逮捕して欲しいの?」 「そうじゃないけど……あんまり明るいところで見たら恥ずかしい。嫌でしょ。臭うでしょ」 「いいじゃない、臭うの」 「自分でもさ、夏とか短パンで床に座ってて、立膝とかで

小説『あそこから出てくる』

 親戚をたらい回しにされて育って、もうとっくに自分の家が分からない。知らない男に買ってもらったエルメスの靴を売った。渋谷の街を裸足でうろつく。  また知らない男。大きなカメラを持っている。ちょっと撮らせて、と言ってる。知らん顔して通り過ぎる。男は走って私を追い越すと、私の顔を撮る。私は黙って歩き続ける。男はまたシャッターを切る。私は腕で自分の顔を隠す。男は諦めない。  私は走り出す。足に鋭い痛みを感じる。立ち止って足の裏を見た。 「なにしてる! こんなに血が出て」 お前のせい