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2023年9月の記事一覧

小説『品川から大宮まで』

 秋で、本格的で、赤い葉が上からボサボサ落ちて来る。学校の昼休み。僕はベンチに寝て龍馬の膝に頭を乗せる。彼は僕の巻き毛を弄ぶ。僕は前の学校を退学になってここに来た。龍馬のことは好きでも嫌いでもない。前の学校も男子校で、厳しくて生徒同志の恋愛は絶対だめ。相手は水泳部の部長で、僕は濡れながらプールサイドにいて、彼がプールの中にいて、カッコいいキスをしてて、それを顧問の先生に見られた。龍馬、僕、昨日大変なことになっちゃった。試験勉強で徹夜して、帰りに眠くて寝ちゃって、こっから大宮ま

小説『あそこから出てくる』

 親戚をたらい回しにされて育って、もうとっくに自分の家が分からない。知らない男に買ってもらったエルメスの靴を売った。渋谷の街を裸足でうろつく。  また知らない男。大きなカメラを持っている。ちょっと撮らせて、と言ってる。知らん顔して通り過ぎる。男は走って私を追い越すと、私の顔を撮る。私は黙って歩き続ける。男はまたシャッターを切る。私は腕で自分の顔を隠す。男は諦めない。  私は走り出す。足に鋭い痛みを感じる。立ち止って足の裏を見た。 「なにしてる! こんなに血が出て」 お前のせい