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2023年1月の記事一覧

小説『どこに行ってしまうのか』

前編  起きた時から頭の中を、アフォリズムや、昔読んだ小説の断片が浮かんで消える。そういう日もあるんだろう、と、気にしないようにしながら、やはり浮かんでくる。拓海の頭をその一つのことが離れない。エスカレーター。あれはどこへ行ってしまうの? あれはね、ぐるぐる回っているのよ。村上龍の完璧な文章。どうにもならない絶望。重い夜と予想の付かない朝が始まるその中間の時間。東京にもこういう暗闇がある。拓海は機材と一緒にタクシーの中にいた。  客の朝食が始まるのは六時からだと言われた。二階