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鯉に【ありがとう】と思えたこと

買ったばかりのリュックを背負い、紫外線防止の帽子をかぶり、準備万端で家の扉を抜けた。外へ踏み出した一歩は、その後の私の道を一つの冒険物語に転換してくれた。

途中、ビルの合間を優雅に泳ぐ鯉を見つけた。うまいことバランスを取りながら、水の中を移動していく姿が、私の心を惹きつけ、暫く彼らの泳ぎを見ていた。縁から覗くと、彼らの頭上には、凝視する私の顔が見えただろう。

じっと見つめる私の空間に鯉たちが近寄ってきた。色も姿も異なる鯉も全く同じ1匹は見当たらず、人間と同じだなと思った。

試しに動いてみたら、彼らもこちらに合わせ動いてくる。
その中の黒い一匹の鯉と意思疎通ができた気がしたので、私も縁に座り、反対側から人間たちを観察してみた。
映像を早送りするかのように、人間も車も慌ただしく動いていた。
暫く眺めていると、私自身が鯉になった気がした。

水の中を泳ぐ鯉は優美だ。大地を泳ぐ人間たちは美しくなかった。
人生を生きる目印は、いったいどこにあるのだろう?

出来たら私も鯉のように、バランスを取りもって、人生という海を泳いでいきたいが、この慌ただしい人間世界で実現させていくためには、あまりにも毎日、怒りにまみれる自分を反省した。鯉たちよ、教えてくれたありがとう。

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