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領域が広がるということ(道の駅イベントでの三日間限定カレー出店を終えて)

【長い前置き】

帰りの新幹線に乗り込み、この文章を入力し始めております。
この文章を読み始めてくださったそこのあなた。
ありがとうございます。

表現しておきたいことが書き言葉にならず、しばらくぶりの投稿になってしまいました。
表現といっても大袈裟なものではなく、日々の生活の断片的な感情や思考のある程度のまとまりを書き残しておこっかなーと、それくらいの感じです。
書き言葉にならずというのも、しっくりくる言葉が出てこなくて困っている(いわゆるスランプ的な)状況ではありません。
あまりにもまとまらないから、書かないまま誰かと話しているうちに分解されてしまった、それくらいの感じです。

生産や消費にばかり注目してしまいがちですが、分解が必要だと、僕は思います。
分解前のモヤモヤを書くのが好きなだけとも言えるでしょう。
当然そのモヤモヤが書き言葉になる前だと書けません。
書き言葉になる前に分解されてしまっても書けません。

今なんかは、ちょうどいいタイミングな気がしています。
ひとつの提案めいたものに辿り着かせようと思って書き進めるつもりですが、成り行き次第ではそうならないかもしれません。
ダーっと書いて推敲せずにアップしよう!そんな風に思いながら、今ここを入力しています。
ここまで読んでくださっているあなたはどんな流れでここを読んでくださっているのでしょうか……
さすがに話が逸れすぎるので止めておきます。

【概要】

前置きが長くなったのはいつも通りですね。

さてさて、岩手県遠野市にある道の駅 遠野 風の丘リニューアル1周年記念の「さくらフェスティバル」というイベントの最後の三日間2022/4/22(金)23(土)24(日)だけカレー屋さんをやってきました。

お店を構えているわけでもなく、キッチンカーを持っているわけでもなく、定期的に間借りカレー屋さんをやっているわけでもないのに、僕に声をかけてくださいました。
ざっくり言えば、非常にいい経験になりました。楽しかったし、嬉しかったし、しみじみしました。

カレー屋さん業務をちゃんとやっているわけではないですから、こうした出店に必要な物品も持ってはいません。
だから、道の駅の設備や備品を使って、現地の従業員さんに助けてもらって、時に迷惑だってかけちゃったりして、カレー屋さん業務の業務委託を受けました。
僕が持って行く必要がある物品は何も無く、基本的には知識や経験や技術や身体も含めた僕自身が行って働けてば成立する業務委託。
終わるまでは、そんなこと感じている余裕がありませんでしたが、なんだかおもしろい条件でした。
委託元としてはかなり勇気が必要のある決断だったのではないか、そんな風にも思います。

水曜日の午後に岩手県遠野市に到着し現地の視察、翌木曜日の午前中に作戦会議をして午後から仕込み開始。
事前の打ち合わせで割と細かい点まで決めていたとはいえ、イメトレと実践には元のタマネギと出来上がったカレーくらいの違いがあります。
普段カレー作るだけなら多くても300gとかのタマネギを4kgとか刻むわけです。
大変そうだなーと思っていて、実際にやってみちゃう方が 大変そうだと思っている時よりも楽なパターンもあれば、実際にやってみたら 大変そうだと思っている時とは別の種類の大変さを思い知ったりするパターンもあります。
今回の調理は後者でした。ここの文字を入力している今も包丁マメがちょっと痛んでます。
仕込み初日に鶏肉20kg弱の全てを25g前後に切り分けて、計量して袋に分けておいてくれた現地シェフのHさんが助けてくれなかったら泣いていたかもしれません。

そんなHさんをはじめ、仕込みの場所としてキッチンを貸してくださった道の駅内のフードホール「とおのごはん」のスタッフの皆様が協力してくれたのみならず、厨房内の雰囲気の中心であろうAさんのキャラにも助けられました。
はじめましての挨拶の時からとても好意的に接してくれたKさんにも安心感をもらいました。
売り場を手伝ってくれた道の駅運営会社のSさんにも感謝です。
看板作ったり設営をやってくれたり、風雨対策をしてくれたり、風でぶっ壊れたテントを撤収してくれた同じく運営会社のNさんにも感謝です。
上記の方々のみならず、道の駅の運営会社の従業員の方々や、他のテナントの皆様も気さくに接してくれて、なんなら宿泊先の人まで優しくしてくれてました。
人間関係がこじれると一気に削れますが、それがなかったのは本当にありがたいことです。
もちろん僕からも敬意を持って接するよう心がけてはいるけれど、一方の気持ちだけじゃ成立しないのが人間関係でしょう。

今回のカレー云々もさることながら、今回の旅?出張?で一番心に残っているのは人のことかもしれません。

【オリジナルカレー】

とはいえ、今回のカレー云々も語らせてもらいます。

今回のカレーは今回のカレー屋さん業務委託のためだけに考えたカレーです。
まず自分でもそう思ったし依頼主からも言及があったのは、珍しさと親しみやすさをどう共存させるか?です。
地方では味覚が保守的な傾向が強いと言われていますし、食のみならず新しいものへ拒否感を示す人も少なくないと聞くこともあります。
僕個人としては主語が大きい話が得意ではないし、個人個人の方が大事でしょう、というのが本音です。
もちろん依頼主も保守性や拒否感の良し悪しに言及しているわけではありません。
せっかくの催事の最後の三日間だから、多くの人に来てもらって多くの人に楽しんでもらいたい、そのためにどうするか?という話です。
そんなこんなで当初からざっくり決めた味の方向性は
・珍しいけど親しみやすい感じを目指す
・市販や業務用のカレールーは使わないいわゆるスパイスカレー
でした。
無難というのとはちょっと違うのが難しかったかもしれません。

結果的には目標として提示されていた1.7倍くらい、材料がすっからかんになるほどの完売御礼まで食べていただけたので、達成感は強めです。

味の方向性とは別に打ち合わせていたのは
・どんなにおいしくてもあまり高価だと多くの人には楽しんでもらえないから安めにする
・閉店後の道の駅の厨房を使っていいからたくさん作れるようにする
というような条件でした。

おいしくする工夫には手間隙がかかるものもありますし、便利ツール(例えば化学調味料)を使う選択肢もあります。
今回はじっくりたっぷり時間を取れませんが、でもやっぱり化学調味料はなるべく使いたくありません。
これまた化学調味料の良し悪しを語りたいわけでもなく嫌いというわけでもなく、化学調味料を使うと 僕が焦っている感覚に陥ってしまうからというのが大きな理由です。つまり焦っている状態の自分が嫌いなんです。

追加として
・遠野にはジンギスカン屋さんがけっこうあって羊肉を食べ慣れている人が多い
・遠野には激辛が好きな人が多い
という情報もいただきました。
ぜんぜん味覚は保守的じゃないじゃん!と思わなくもないところではありますが、矛盾しそうな要素が共存し得るのがおもしろいところです。

そんなこんなで、僕が勝手に設定した条件も含めると
・珍しいけど親しみやすく
・多くの人に(なんならお子様にも)楽しんでらえるようにしたい
・一方で激辛好きにも対応したい
・割と短時間でたくさん作りやすい
・安めの価格設定が可能
・オペレーションはなるべく単純にしたい
・地元の野菜を一部でも使う
・アレルギーの特定原材料は使わない
等々
になりました。

で、できあがったのが、
・ターメリックライスに
・スパイス類以外で言うと油、タマネギ、塩、トマト、ニンジン、挽き肉、を使った辛さ控えめのシンプルなカレーをかけて
・主にスパイス類でマリネした一口サイズの鶏肉を炒めて乗せて
・地元の行者ニンニクのスパイス炒めも添えて
・辛味を追加できる薬味(青唐辛子と赤唐辛子を合わせて色味もいい感じ)は辛さが大丈夫な人だけに乗せる
そんな特製カレーライス。

オペレーションの面倒臭さを犠牲にしても炒めた鶏肉を後で乗せることにしたのは、変に長時間煮込まれた鶏肉の食感が好きではないからです。
最初からカレーに入れてしまうと、鍋の中でどの鶏肉がどれくらい煮込まれているのかわからなくなってしまうからです。
コンロをいくつも用意して温め時間を調整しても、お客さんの流れ次第で売れ残って加熱が進んでしまいかねません。

鶏肉の食感を重視しようとして犠牲に差し出したオペレーションの手間のせいで鶏肉を炒めるのが追いつかなくなって、お客さんをお待たせしてしまうという……犠牲の及ぶ範囲が僕だけじゃなくてお客さんまで巻き込んでしまうことになってしまったことは反省点のひとつです。

特に土曜日は時々雨が降ったり強風がずっと吹き続けるという厳しい天気の中でお待たせしてしまって、申し訳ありませんでした。
と同時に、それでも待ってカレーを買ってくれるなんて、本当にありがとうございました。

今回、予想以上にたくさんカレーを食べてもらえたのことは上の方でもちょろっと書きましたが、これは僕の実力だけではありません。
僕の実力だけじゃなかったからこそ大成功だったと思いますし、余分に達成感が得られている気がします。
やってよかった。本当に。

【移動で人が変わる】

ここから話が逸れていきそうな予感がします。

東京と違って、と言っていいのか否かよくわかっていませんが、見られる目が違うように感じました。
僕自身はどこにいても他の誰でもない僕なんだけど、見る人によって僕が変わるのを強めに感じました。
ざっくり言えば、盛って見られる感じです。
それは毎日カレー生活を15年やっているからでもなく、僕のカレーの味がいいからでもなく、僕がイベントに呼んでもらうかたちでカレーを売りに来ていたからなんじゃないかと思っています。
道の駅のイベントで特別にカレーを売っているなんて、そして場内放送でアナウンスされたりもしてるなんて、たぶんきっとおそらくすごい人なんでしょうと思ってもらえてるような気がしました。
それで持ち上げてもらえて、レベルが上がった気になっていてはいかん、と自分に言い聞かせつつ、どう応じるべきか、悩む瞬間が断続的にありました。
その方針みたいなものは、今はどこにも向いていませんが、いつかそのうちどこかを指し示すかもしれません。
少なくとも、そんな風に良い感じに見てくれた人の方がよっぽどすごい、と僕は思います。

もう20年くらい前になりそうですが、会社員時代にとある地方に出張で新規事業立ち上げのための研修講師のヘルプをしに行ったことがあります。
その時も同じようなことを感じました。
東京から来た若い(←当時はw)研修担当者はすごい人だ、と見てくれているように感じました。
僕がする説明に必死に耳を傾けてくれて、何か指示をしたら頑張ってやってもらえました。
勘違いで調子に乗って その立場を悪用する人が時々いるかもしれませんので、注意が必要とも言えるけど、誰かの気分を良くできるってすごいことだと思います。
この時にもどう応じるべきか、悩む瞬間が断続的にあった気がします。
ということは20年くらいは方針が決まってないということになりそうです。
我ながら成長が無くて残念。
うそ。
別にどっちでもいいというのが本音です。

これらのエピソードから一番言いたいのは、同じ人物でも環境や立場によってすごかったりすごくなかったりする、ということです。
丁寧に順応するか、勘違いで調子に乗るか、そこの違いは、よくわかりませんが……

よく考えたら、お遍路さんにも同じような事が言えるのかもしれません。
が、ここではいったん忘れましょう。

【余談】

あと、僕が売っていた屋外カレースペースの並びで営業していたキッチンカーとの交流も楽しかったです。

旅行やドライブでなにげなく寄る道の駅やSAにも売店やキッチンカーがあることは普通だと思いますが、社会的な営みには必ず人がいます。

今回の出張(?)ではその現実と触れ合う事ができたのが印象的です。
これから先、道の駅やSAに寄ったら、あの人は元気かなーなんて思い出したりすることになるでしょう。

それで何になるのか?はよくわかりませんが、僕はそういうのが好きです。

【僕の職業は?】

自分の職業は?と自問すると、何でもいいじゃん!と自答することになります。
じゃあ、何でも屋?と自問すると、そういうことではない!と自答することになります。

今回の三日間限定カレー屋さんの旅でも
「普段はどこでカレー屋やってるの?」とか聞かたりして
「カレー屋じゃないんですよ」と答えると
「じゃあお仕事は何をされている方なの?」と聞かれます。

キャリア教育もやってるし、カレー屋の手伝いもやってるし、和菓子の会社の事務もやってるし、大学の雑用もやってるし、自分でもよくわかりません。

でも、こんなキャリア教育者がいてもいいんじゃないか、とは思っています。
「ということは、今のアイデンティティはキャリア教育者ということなんじゃないの?」とか言われます。
回答に困ります。

まず、主な職業はひとつじゃなきゃいけないのか?という問題です。
そう思う人もいるだろうし、そう思わない人もいるだろうし、どっちてもいいじゃんというのが本音です。
でも得体の知れない対象が目の前にいて好奇心が湧いてこなかったら敬遠しておくのが妥当なんじゃないかという考えはあります。
だから、何をやっているか一言では言えないけど、得体の知れない人間じゃないんですよ、少なくとも社会性はそれなりに備えていますよ、と、それを一言で伝えたいという思いはあります。

子供じみた言い方をすれば、不特定多数の誰でもというイメージはあまりないけれど、目の前の人や直接関わることになった相手には僕がどんな人なのかを知って欲しいという気持ちはあります。

で、最初に今のような生活に移行し始めた時には、言語化できていなかったのですが、色々な仕事や様々なやり方で生活費を稼ぐということは、様々な環境に順応し得る可能性を広げることなんじゃないか、と思っています。

去年、四国お遍路を歩いていた時には野宿も経験しましたし、それこそ道の駅でテント張ったり張らなかったりして寝たこともありました。
そうすると、屋根や壁があったら嬉しいけど、最悪野宿も可能になります。

今は会社員でもあるしカレー屋でもあると言えます。
色々な職業の様々な視点が自分に集まってくる楽しさもありますが、活動の領域を広げていることになるのではなかろうか、そんな風に思います。

活動の領域とは、生きていける環境の領域につながっていくと思います。
自然環境も社会環境も職場環境も含めた様々な領域で生きていけるということは、生き延びる可能性が高まることにつながるかもしれません。

多くの生命体がなるべく長めに生き延びるアルゴリズムで動いているとすれば、ここ数年で色々やってきている僕の生活の仕方なんかもその一環と言えるのではないでしょうか。

集中してたくさんたくさんカレーを作って、たくさんの人に食べてもらって、楽しくて、嬉しくて、やってよかった、からの、生存領域の話になりました。

もうすぐ東京駅に着きそうなので、これからは↑の内容の検証もしつつ生活してみようと思いつつ、今回はここまで。

冒頭の方で述べました通り、ダーっと書いて推敲せずにアップします。

現地に入った水曜日には「さくらフェスティバル」なのに桜が咲いてないじゃん。と思っていたら、日に日に見頃感を更新して、帰路についた月曜日には散り始めていました。



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