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父の失敗【黒編】

先日、同タイトルで投稿している。
それは、いわば、【白編】である。
ほっこりして前向きな感じ。

今日の投稿は、【黒編】である。
負の感情をむき出しにしたらどうなるのか?
どこに着地するのか?やってみたい。

・・・どうぞ!


⭐︎⭐︎⭐︎


私は、父が好きだった。

父は、現役の時には、地方の広告代理店で映像関係の仕事をしていた。もっと前には、東京で映画会社に所属していて、助監督までやっていた。
なんやかんやあって、夢が破れて、故郷へ帰ってきて母と出会い、私が生まれた。

私は、父が好きだった。

運動会の時に、誰も持ってこないようなでっかい望遠レンズのカメラを2〜3個、ぶらぶら肩から下げてやってくる父が。
自社が企画する物産展イベントのポスターに、経費削減のため、「竹取の翁役」として自分で出演していた父が。
広報カメラマンとして知事に随行した際、美味しい蕎麦屋に案内すると言って、とんでもない山奥へ連れて行ってしまい周りを困惑させた父が。


でも今、ちょっとカッコ悪いって思ってる。

面白いことをどんどん見つけてきて、楽しんでいたあの人と本当に同一人物なんだろうか?

おとうさん、もっとスマートに振る舞ってたじゃん。

ちょっとカッコ悪い。

日々、私の中の癇癪が小さく破裂する。


⭐︎⭐︎⭐︎


私は、いつもカッカきている。
理由は父の失敗だ。

80オーバーの父は物忘れの人で、そんなつもりはないのだろうが、私を上手に沸騰させてくれる。

仕事帰りに携帯に着信がある。
学童からだ。
「今日ハトちゃんはスイミングに行っておられて学童には来られてない日ですけど、おじいちゃんがさっきお迎えに来られました。
念のため、ご連絡しておきます。」

「もう〜ッ、なんで?メモ書き残しといたじゃん!」

家を出る前に私が段取りしたことは、だいたい思い通りに行かなくて。そんな日は、プリプリしながら家に帰る。


父の失敗は毎日繰り返される。

・扉を開放したままでエアコンを入れっぱなしにする

・冷蔵庫のコンセントを抜く

・犬に何度もご飯をあげてしまう

・せっかく届いたお昼の給食を食べていない

事件が起きた時、心象風景は以下の感じとなる。
フリー素材“いらすとや”さんの闇っぽい画像とともにお送りしたい。いらすとやさんは、可愛いほんわかしたタッチで親しみやすい。しかし、その奥に、闇が広がっている。
私個人の工夫だが、物忘れの人との生活では欠かせないツールとなっている。
『この場面では、アレ合うよね…』
と、俯瞰で自分を見られるからだ。


扉を開けたままで、エアコンを入れっぱなしにする。

母が祀られている隣の部屋の仏壇に冷気(暖気)を届けたいんだなぁ…。
って、もう亡くなってるから!
温度分からないから!

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冷蔵庫のコンセントを抜く。

専用のマイ冷蔵庫で、中身が少ししか入ってないから、電気代勿体ないって思ったんだなぁ…。
って、エアコンの時思ってほしかったわ!

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犬に何度もご飯をあげてしまう。

欲しい欲しいと言うのはお腹すいていてかわいそうと思っちゃうのね。ご飯をあげたかどうか記憶もあやふやなんだろうね。
って、ドックフードは一食ずつ小分けにして置いてるんだから、無い=給餌済ということですけど?

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せっかく届いたお昼の給食を食べていない。

自分に届いた給食って思わないんだね。お隣の一人暮らしのおばあちゃんの給食って思い込んでる。
なんでだろ〜なんでだろ〜なぜだなんでだろ

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⭐︎⭐︎⭐︎


父の日々の失敗のたびに、私は次々に癇癪を起こす。
まるで子どもみたいに…。

おとうさんには、保護される側ではなく保護する側にいて欲しい。
おとうさんには、まだまだ相談したり、聞いて欲しいことがある。


子どもと大人との境界とはどこにあるんだろう。


子どもでいさせてくれる存在がいるかいないか。
ではないだろうか?
そういう存在が居なければ、小学生でも大人にならざるを得ない。
自分は、幸いにも、まだ子どもでいさせてくれる父がいる。

私は、まだ、子どもだ。


だからこそ、父の失敗が悔しくて歯がゆくて癇癪を起こすのだ。

私は、子どもみたいに父の失敗をカッコわるいと思ってしまう。そして、もがいて、もがいて…。

父の純白の親心に触れた瞬間に、それがどんなにトンチンカンで方向違いのものであったとしても、子どもに変身できるのだ。

もぅーっ!なんで、なんでそんなことすんのさ!

と、言うことができるのだ。

子どもでい続けられることは、切なくて、苦しい。



私は、父が好きだ。

おとうさん、ありがとう。

おとうさん、元気でいて、ずっと。




⭐︎⭐︎⭐︎


マリナ油森さんの企画に賛同し、習作しました。
【白編】よりもずっと感情むき出しで、子どもっぽいです。どこに落ち着くか見えないまま、どんどん書きました。

こちらの方は書いていて、ちょっとだけ涙出ました。

同じ「父の失敗」というモチーフでも、色々な表現の仕方があるし、掘り下げ方や照らし方があるなぁ。と発見がありました。
荒削り過ぎるので、また、書き直すかもしれません。

マリナさんありがとうございました。






ハトちゃん(娘)と一緒にアイス食べます🍨 それがまた書く原動力に繋がると思います。