「ナンデモ カジロウ」

「うちの学校においでいただき、落語を子とも達に見せて(聴かせて)いただけないでしょうか?」
昨年の夏頃、酒田特別支援学校の聴覚障がい教育部 教務主任の日向大吾さんからの連絡頂いた

しかし、すぐに断ろうと思った

なぜなら、手話はできないし、聴覚障害の方に伝える技術なんて知らないし、持ってない

とりあえず、なぜ依頼したのかの興味本位と断る理由を持ち、先生とミーティング

 話を聞くと、ある聴覚部の小学4年生のお子さんは、小学校の授業で落語を勉強し、図書室にある十数冊の絵本を何度も何度も読み
ネタを覚えるほど、好きになっていた。
 その絵本と同じネタをCD、カセット、動画を見聞きしてさっぱり、聴き取れず、面白さがわからない

理由は、二つ
『しゃべりが早すぎる』
『声の認識ができない』

この2つがクリアできれば伝わると

 これは、なるほどと思った、初めて聴く『声』というのは認識が乏しいので何を言っているのかが理解がしにくい、
特に落語のように早口だと余計分からない
普段は、家族、学校の中の先生、友達でしか会話をしないので、『認識済みの声』と『口の動き』で何を言っているのかが理解しやすいとの事 

要は、知らない大人からあれこれ言われても通じないとのこと 

 確かに、登録のされてない電話を出たときは一瞬、誰だかさっぱりわからないが、
実は、良く知っている近所の『誰』だと認識すると急に「ああー、はい、はい」と言ってしまう
 

 担当教員の方と含めて、打ち合わせをし、
十数冊の絵本の中からできるネタをやってほしいと ネタを確認
『火焔太鼓』、『まんじゅうこわい』、『初天神』、『寿限無』、『時そば』、
なるほど、なるほど・・・やれるネタが限られているな・・・
ネタは二つやる事に
一つは、『初天神』 絵本にあるネタ 
二つ目は、『転失気』 絵本にはないネタであるが、分かりやすいので

担当の先生から二つの課題を頂く

<会話をする時間を事前に取る>
本番前の別日に、授業の時間を頂き、その生徒さん含めて他の学年の生徒さん、先生方と含めて
互いの自己紹介、好きな食べ物の話し、お笑い・落語の話しなど雑談を行う

<ネタの情報サポート>
 『どこで』、『何を』、『誰が』というのが落語では行ったり来たり、急に登場人物や場面が変わるこも当たり前
知っているネタでも理解が追いつかないと急に置いてかれている感じになることもある
絵本で覚えている『初天神』だとしてもネタの情報をサポートする必要があるとの共通認識から
『父親』、『子ども』、『出店』、『あめ』、『だんご』の絵を事前に準備
 知らないネタ『転失気』に関しては、情報量を増やした方が良いとの事

自分の台本を送り担当の先生に登場人物と一言セリフをつけたパワポを作成して頂く
 本番、5日前にメールで届いてびっくり、『71』枚のスライドがあり、
これはプロジェクトのプレゼン資料と勘違いするほど担当の先生の熱を感じた。
 本番当日、簡単なリハーサルを担当の先生とパワポのスライドを確認しながら座布団の上でしゃべる
「えっ??このスピードで良いんですか?」
「大丈夫だと思いますよ」
以外な事に普段しゃべっているスピードより、若干、ゆっくりだった事
 

聴覚部の全校生徒さん、知的高等部の生徒さん、校長先生から教頭先生、各学年の先生方、保護者の方に見守られながら
司会は、その落語好きの生徒さん、堂々としていて、びっくり、『寿限無』で自己紹介
 

開始時間を迎える、いつもの通り、「実際に生で落語を見た事ある方」と聴くと担当の先生以外、
全員手を挙げるちょいと焦る、どういう場になるのだろうか。
 

リハーサル通りのペースで話し、オーバーリアクションをする、 
「おっ、(伝わっている、伝わっている)」、笑っている様子が見えてほっとする
 

顔の表情で初めての落語はどうだったか、分かる
 

連絡していただいた日向大吾さん並びに担当の先生、学校関係者のみなさま、この機会を与えていただき感謝します。ありがとうございました。
この経験は、福祉施設関係など行う際にも大変有効と感じ、勉強なりました。

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