一人じゃないから、自転車を漕ぎ続けている
2021年12月30日0時6分、年内最後の4コマ漫画を載せた。
4コマは、2016年3月から地味に地道に続けている。毎週載せられるようにストーリーを考え、今年もどうにか52話分描けて、288話で年内を終えた。
4コマを続けている理由はシンプル。「話を思いついたから、描く」それだけだ。
ところが、いざ描いてみるとぜーーーんぜんシンプルじゃない。当初はわりと「週1?余裕余裕〜」と鼻歌モードだったのに、「なんでこんなこと思いつくんや…」と自分でも面倒なほど、設定やキャラクターやストーリーを思いついた。
4コマ漫画は基本的に、1話完結が多い。でも、私が描く4コマはストーリーがある。面倒なものに手を出してしまった。後悔はない。
登場人物は年々増え、相関図は少しずつ拡大。2021年に入り、ストーリーはいよいよクライマックスに向けて舵を切った。2022年はストーリーをまとめるのが特に難しい回へと進む。
そして、「4コマを毎週水曜日に載せる」も実にシンプルだ。週に1回、4コマを1話分載せるだけ。しかーーーし。しかし、だ。始めると、全然簡単じゃない。
働きながら、やりたいことが他にありながら、親の心配をしながら、遊ぶ時間もほしいと思いながら、4コマのストーリーや設定を考える時間を作る。これは簡単じゃない。
実際、水曜日の23時59分までに掲載が間に合わず、木曜日の0時台に載せた日が何度もある。年内最後に4コマを載せた日も、木曜日になっていた。本当に申し訳ない。
私の4コマ連載をたとえるなら、自転車。「話を思いついたから、描く」は「自転車で遠くに行きたいから、漕ぐ」。
思いついた時って楽しいから、どーーんどん漕いじゃう。週に何回も駐輪場へ行き、自転車を出し、思うがままに漕ぐ。
そのうち、最初は1km先だったゴールが2km、3km、5km、10kmと遠くなる。最初はただペダルを漕ぐだけで楽しかったのに、長時間漕げる体力をつけたり、時には雨の中漕いだり、飲み物を準備したり…。だんだんと駐輪場へ足を運ぶのが面倒になる。
でも、SNSのグッドボタンや「応援しています!」に励まされ、また自転車を漕ぐ。次は15kmを目指す──。
4コマも同じ。最初は登場人物が少ないから、わりとスムーズに描けた。10話、50話、100話、200話…と進み、現時点の最新話が288話。時には仕事もプライベートもバタバタして、「今週は休みたい」と思う水曜日もある。
私がなんとか4コマを続けているのは、間違いなく、読者の方々のお陰だ。
「スキが0でもおかしくない」と半ば不安に感じながらも、スキは毎話1以上ある。本当に奇跡で、なんとありがたいことか。
もちろん、スキが0でも、批判されても、連載を辞めはしない。根っこにある「思いついたから、描く」の決意は消えやしない。
ただ、ふとしたときに消えそうになる。仕事で疲れて「今日4コマ休もうかな」と思う日や、ネームを考えるのが面倒な日は消えやすい。
(※ネーム:構図やセリフなどをざっくり描いたもの)
そんなネガティブを吹き飛ばすのも、読者の方々だ。長年ご覧くださっている方を思うと、そう簡単には連載を止められない。読者の誰かを思い浮かべると、エンジンがかかり、自然と手が動く。
思い浮かべる読者の中には、亡くなった人もいる。1話から欠かさずスキをつけていた人で、とても忘れることなんてできない。週1ではなく、毎日連載していたら…と考え込む日もあった。
そして、エンジンがかかる瞬間は他にもある。たくさんある。
漫画や映画、音楽、お笑い、スポーツなどで「素晴らしい作品を出そう」「優勝したい」「ギリギリまで調整しよう」といった想いで奮闘している方々を見た時。作品に触れた時。そんな時にもエンジンがかかる。私は幸いにも単純なので、「じゃあ私もがんばろう」と思うのだ。
特に、自分よりも年上の方に励まされる。私は38歳。40代にも50代にもそれ以上の世代にも、奮闘している方がいる。
「38歳でウダウダ思ってる場合じゃないな」とエンジンがブルルとかかり、「上には上がいる」でさらにブーーールルルと勢いが増し、「よし、私も負けてられない!」でゴゴゴゴゴーッと飛び出せる。
エンジンがスムーズにかかると、「もっと自転車漕ぎたい!」「他の自転車にも乗ってみたい!」というチャレンジ精神も生まれる。好循環をぐるんぐるん回したい。
願望に素直に従うと、自転車はどんどん増えた。
4コマがメインだったnoteには、数年前からエッセイを載せるようになった。日記、歌詞(≒詩)とさらに増え、2021年から毎週月曜日に短編小説を掲載。
いろんなタイプの自転車を増やし、漕ぎ、少しずつ、少しずつ、距離が長くなった。
それも皆、読者や何かに奮闘している方々のお陰だ。毎日のようにグオーっとエンジンがかかり、私が「やりたい」と思うことを地味に地道に続けている。
体力も時間もあった20代は自分でエンジンをかけ、勢い任せで進んだ。「あのゴールを目指して漕ぐ!」と決めて、ゴールまで駆け抜けた。
しかし、30代ではそうもいかなくなった。仕事や将来や結婚や親など、考えることが格段に増えた。エンジンをかけられない日もある。やがて、「どうやら勢いだけでは進めないな」と気づく。
そう、ようやく気づいた。私は、自転車を買うところまでは得意なのだ。少しずつ漕ぎ、ゴールを目指すのがだんだんと面倒になる。なんなら、ゴールを決めず、とりあえず自転車を買ってしまう日もある。
オリンピックで金メダルを目指すスポーツ選手、コンテストに挑戦する芸人、地域のために働いている商店街の人、心震える映画を作った監督、死ぬ気で音楽を続けているミュージシャン。
日々いろんな人に触れて、「私のゴールは何なんだろう?」と考えたり、エンジンが急にかかったりして、私もまた何かを作る。好循環とは今はいえないかもしれないけど、そうやって少しずつ進むのも悪くないと思うのだ。
自転車には、ママチャリに折りたたみ自転車、電動アシスト自転車、マウンテンバイク、いろんな種類がある。今の私が乗っているのは補助輪付きの自転車かもしれないし、三輪車ばかりをどんどん増やしているかもしれない。
もしも私の4コマやエッセイや小説で誰かのエンジンがかかったなら、それほど光栄なことはない。必死で自転車を乗り回している私を知り、誰かが自転車を漕ぐきっかけになったなら、本当に本当に奇跡だ。
三輪車だっていい。進んでいるなら、少しずつでもいい。今年も来年も10年後も20年後も、たくさんの奮闘に触れながらエンジンをかけ、何かを作り続けたい。
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