挑戦しているすべての人へ


名前の知らない君へ

君は偶然、私の横に座っていた。紺色の制服に包まれた君。

ノートにせっせと何を書いていたのか、知らない。テスト前なのか、受験前なのかも知らない。

大学生活やバイト、彼氏の話で盛り上がる女の子たちを気にしていたのかも知らない。

ただ、一生懸命何かを勉強していたのは知っている。メタリックピンクのイヤホンを耳にかけ、時々アイスカフェラテを飲んでは、教科書か参考書のようなものをにらみ、ノートに書き込んでいた君。

挑戦している君を見て、「私も負けてられないな」と仕事の続きを始めたんだよ。


公園で見た君へ

「あきらめなよ」と男の子に言われながらも、あきらめなかった君。

何度も何度も鉄棒に向かい合い、地面を蹴って、空を見上げては、両足をドタドタッと鳴らしていた君。

「はいはい、無理〜」と罵られながらも、あきらめなかった君。

鉄棒をギュッと握って、勢いよく足を動かして、体がほんのり浮いて…を繰り返し続けた君。

私も君と同じで、何度挑戦してもできなかった。でも繰り返すとだんだん体が分かってきて、そのうちグルッと回れるようになったんだ。あきらめない君ならきっとできるし、あの子もきっと一緒に喜んでくれるよ。


お店にいた君へ

『研修中』を胸に下げて、初々しい赤のエプロンをつけていた君。

ぎこちない手つきで私が置いたカゴに手を伸ばし、のんびりと、でも確実に仕事をしていた君。

袋をお願いしたけれど、渡し忘れていた君。「あー!すみません!!」とちょっと大声で謝った君。大丈夫、大丈夫だよ。私のほうこそ、袋を持ってくるの忘れてごめんね。

君を見て、昔の私を思い出したよ。見られながら働くのって緊張するよね…。すごく分かる。私は大声で「ありがとうございました」ってなかなか言えなかった。

慣れるまで大変だけど、誠実さがにじみ出ている君なら大丈夫。先輩もお客さんもいい人が多いところだから、きっと大丈夫だよ。


スポーツ選手の皆さんへ

主にテレビで拝見し、たまに試合会場で応援する。

年に一度の大会や、オリンピック。計り知れない練習量の上に試合がある。限られたチャンスをつかむため、何試合も何試合も挑み戦い続ける姿に毎年胸を打たれる。

涙を浮かべる選手もいれば、弾けるような笑顔を見せる選手もいる。見ている私も泣いたり、笑ったりする。飛び跳ねて応援する日も。

お互いに譲れず、なかなか決着がつかない試合を見ていると「あぁ、どうにかして2人とも優勝にならないかなあ」と思ってしまう。

テニスにサッカー、野球、ラグビー。忘れられない試合がいくつもある。夢に向かって挑戦し続ける皆さん。ずっとずっと尊敬し、応援しています。


頂上を目指す方々へ

ノーベル賞、パルム・ドール、アカデミー賞、グランドスラム、金メダル、リーグ優勝、M-1グランプリ、グラミー賞、他多数。

世界各地で毎年のように、受賞者を決めるコンテストや大会が開催されている。

合唱コンクール、文学賞、社内コンペ、学内コンテスト。

広く名を知られている大会から、小さな枠で開催されているコンテストまで、あちこちに受賞者がいる。

スポーツ、音楽、映画、小説、お笑い、ゲーム、ファッション、習字、漫画。ジャンルは多岐にわたる。

まっしぐらに頂上を目指す方々を見て、胸が熱くなる。胸を締めつけられる。受賞した方の涙を見ては、受賞できなかった方の涙を見ては、私も涙を流してしまう。

頂上を目指し、あきらめずに立ち向かう方々。その揺るがない姿に、とても勇気づけられています。


会ったことがないあなたへ

私はあなたの本名を知らないし、聞かない。

あなたがどんな風に生きてきたのか、普段どんな生活を送っているのか、ほんの少ししか分からない。

会ったことがないし、今後会う約束をするのかどうか、会えるのか、分からない。

だけど、私はいろんなあなたに会っている。

時間をかけて描いたであろうイラストを「下手絵でごめんなさい」と載せるあなた。

経験を積み重ねたと分かる文章とともに「よかったら読んでください」と紹介するあなた。

使い始めたばかりのツールで完成させた作品に「やっとできた!」と喜ぶあなた。

何かを完成させるなんて、とってもとっても凄い。なかなか言葉にできず、ハートのアイコンを押すことしかできていないけれど、挑戦する日々を見守り、応援しています。


夢を追いかけた友人へ

大学に通いながら、声優への道をあきらめなかった友人。バイトで貯めたお金を、専門学校に通う資金にした。

最後に会った日、「たまに結婚式で司会をしている」と話した友人。

声優の道は遠かった。でも、挑戦した日々を笑いはしない。

また違うことに挑戦するとしても、私もまた応援するだけだよ。もう気軽には会えないけれど、いつだって幸せを願ってるよ。


ゲーム開発している夫へ

あなたがゲーム開発に挑む姿を、誰よりも見てきた。

真横に座るあなたはバグと戦い、毎回とても苦しそう。時々聞ける「できたー!見て見て!」を私はいつも楽しみにしています。

売り上げはまだまだ少ない。でも、めげずに開発を続けるなんて、働きながら平日の夜や土日にゲーム開発をするなんて、並大抵のことじゃない。あなたと長年一緒にいること、誇らしく思います。

これまで作ったゲームを、世界で最初に目にしてきた。プレイした方のコメントに、ともに一喜一憂してきた。

きっと…いや、絶対に。絶対に、あなたの作ったゲームをもっともっと多くの人がプレイする。そんな将来を信じています。


挑戦しているすべての人と

挑戦とは挑み、戦うこと。
そう、挑戦している人は皆戦っている。

時には、思わぬ言葉が降りかかるかもしれない。

「やっても無駄」
「お前にはできない」
「今から始めても遅い」

でも、でもでも。

なぜ無駄だと分かるのか?
続けたらできるのではないか?
何を根拠に「遅い」と断言できるのか?


挑戦し続ければ、いつかできるかもしれない。大器晩成かもしれない。

「かもしれない」を信じない人の言葉なんて、気にしなくていい。気にしない。どうせだとか、今さらだとか、そんなの挑戦してみなきゃ分からない。

挑戦に無駄なことなんてないし、何歳から挑戦したっていいし、挑戦し続けると応援してくれる人がふっと現れる。



挑戦を続けても、なかなか結果が出ない人のほうが多い。メダルを獲れなかった人のほうが断然多いし、受賞できる人もほんのひと握りだ。

でも、自分の全力を尽くした挑戦を、無駄だなんて思わない。挑戦したことは、ある日不思議とどこかでつながる。「あの時、がんばってよかった」と思える。



仕事しながら学校に通い、資格取得を目指した時期がある。

資格を取ると決意し、学校に通うことを当時働いていたお店の社長が知ったとき、「資格なんて、そんなの何にもならない」と言われた。

いくつかの科目は合格点に達したものの、結局資格は取れなかった。


だけど、挑戦したあの時期は何も無駄ではない。休みの日を勉強に費やし、働きながら資格取得を目指した日々は今の土台になっている。

幅広く勉強したお陰でいろんな知識が身につき、今こうして記事を執筆する仕事につながっている。「がんばってよかった」と身にしみて思う。

「何にもならない」と言った社長を、あきらめさせるような言動を、私は未だに忘れてはいない。

それに、取得した資格を仕事で活かしている人たちに対し、大変失礼だ。



この世に産まれ、ハイハイをして、立ち上がり、だんだんと言葉を覚える。
そのうち、走り回ったり、ケンカしたり、学んだりする。
勉強しては成績を比べられ、運動でも比べられる。
働きながら、子育てや家事や副業や趣味を続ける。


まだ上手く話せない赤ちゃんも、わいわい話す学生も、ビールを飲み干す社会人も、皆何かを叶えるために挑戦してきた。

補助輪なしで自転車に乗りたい。
もっと上手にキャッチボールしたい。
告白して気持ちを伝えたい。
来年こそ志望校に合格する。
社内でトップの成績を収めたい。
リハビリを続けて自分の足で歩く。
漫画雑誌で連載したい。
オリンピックで金メダルを獲りたい。
スマホを使って孫と話したい。
長生きしたい。


未知の世界に挑み、ライバルや記録と戦う。日々、自分と戦い続ける。

挑戦している人、皆が皆かっこいい。たとえ結果が出なくても。
挑戦している人を笑う人、否定する人、けなす人とは絶対に仲良くしない。

これからも挑戦している人たちを応援し続け、ともに歩み、私も挑戦をやめない。



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