「いわて環境塾」第1回レポート

 岩手県生活環境課生活環境企画室主催の「いわて環境塾」の第1回が2020年7月26日、滝沢市の岩手県立大学にて開校。参加者はオンライン参加者を含め、北海道から沖縄まで全国に及びました。

 環境問題に関し多岐に渡り活躍をされている岩手県立大学教授 渋谷晃太郎氏を講師に招き、説明をいただきました。
 テーマは大きく分けて3つ。1つ目が、岩手県内での環境問題やSDGsの現状について学ぶこと。2つ目が、世界中で起きている諸問題を自分ごととして捉え、意識の変化や行動変革を促すこと。そして3つ目が、持続可能な社会を構築していくために、どのような取り組みが必要なのかを受講者自らが考える機会とすることです。

【岩手の大気環境についての説明】

 まずは岩手県の大気環境について説明がありました。一言でいえばとても綺麗な状態ですが、光化学オキシダントは観測する5市の5測定局いずれにおいても環境基準を未達成という状況でした。
 水環境は、観測した96地点すべてで環境基準をクリア。一方で地下水の井戸は一部基準値を超過しました。環境放射能は精米や野菜、牛乳、ホタテ貝で放射性核種セシウム137が検出されたものの、一般と比べて低い値であり、超過はありませんでした。また野生鳥獣肉でも放射性セシウムが検出されていますが、基準値を下回ったシカ肉についてはすでに出荷できるようになっています。

 一般の廃棄物についても説明がありました。岩手県内のごみ排出量は平成29年度で42.6万トン。一人当たりのごみ排出量は922グラムでした。

【岩手の自然環境はどうか】
 続いて自然環境についての説明がありました。岩手県は北海道に次いで全国2位の森林面積を誇ります。八幡平などの国立公園には野生生物が生息するなど、自然環境は良好ですが、実は原生的な自然は少なく、人の手が加わった二次的自然が多いといいます。

 岩手県の環境対策については、地球温暖化防止対策と再生可能エネルギーによる電力自給率のデータを挙げて説明されました。地球温暖化防止対策は現在目標を計画中ですが、再生可能エネルギーによる電力自給率は平成22年度の基準、18.1%から令和4年度までに37%に上げることを目標にしています。

 続いて岩手県における開発と環境問題の歴史を振り返りました。上川や石淵のダム開発や北上川総合開発、国営岩手山開拓事業、広田湾コンビナート計画などの説明がなされたほか、かつて田老町に原発誘致計画があったことが明かされました。こうした開発などによる松尾鉱山の鉱毒水、または青森・岩手産廃不法投棄事件など環境悪化が懸念される事態も起きています。

 最近の環境問題としては、森林病害虫の拡大や、イノシシ、シカ、ツキノワグマによる農作物への被害や、生態系の乱れが懸念事項として挙げられました。

【東日本大震災の災害廃棄物について】

 次は東日本大地震で生じた災害廃棄物についての説明がありました。種類別では津波堆積土やコンクリートがらなどの不燃物が85%を占め、平成23年からの3年間、1都1府13県の協力を得て広域処理にて完了しました。処理費用は2,687億円かかったものの、全て国が負担したといいます。
 また災害廃棄物の漂着問題についても触れられました。すでに一部がアメリカ西海岸に漂着していますが、この処理費用としてはアメリカの州政府が対応しているものの、日本の基金が援助をしている状況とのことです。

 災害は気候変動によってももたらされています。海の酸性化が進行したり、酷暑日が増加したり、短時間の強雨が増えるなどの可能性がある一方、葛巻町では2015年に新エネルギー宣言をして以来、風力発電所をはじめ太陽光発電、バイオマス発電など様々な再生可能エネルギー施設を有しています。8月29日のいわて環境塾でこれらの事例を現地で説明することを紹介しました。

 その他海洋プラスティックの問題も取り上げつつ、最後に持続可能な開発目標(SDGs)の説明がなされました。SDGsに根ざした業務を行う会社として岩手県内で印刷電力のCO2排出ゼロを目指す杜陵高速印刷株式会社が紹介されました。杜陵高速印刷株式会社ほか、リコーなどのSDGs先進企業から先駆的な取り組みを11月15日の第5回講座で紹介する予定です。

 現在、新型コロナウィルスの影響により社会や経済が打撃を受けていますが、これを脱炭素やSDGsに則り“グリーンリカバリー”しようという考えが進んでいます。今後の未来をより良くしていくためにも、環境を保全しながら発展を続けていきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?