心理学実験Ⅰ パーソナルスペース課題レポート【評価S】(聖徳大学)表・図・考察・引用文献付き

パーソナル・スペースの構造

 

問題

 Sommer(1959) によれば、人にはそれぞれ侵入者が入れないように個人の身体を取り囲む目に見えない境界をもった領域がある。この領域は、地理的な照合点をもたず、個人とともに移動し、環境や周囲との関係によって伸縮する。このような、いわば心理的な縄張りは、個人空間とよばれる。個人空間には、他者との境界を作り他者の侵入を防ごうとする機能(防御機能)と、他者との関係性の中で親密さを維持しようとする機能(親密機能)が考えられる(Hayduck,1978;渋谷,1990)。

 本実験では、身体の各方向における対人距離を測定し、個人空間の存在とその構造を探り(田中, 1973)、同時に性差や個人特性といった要因が個人空間に与える影響を調べ、個人空間の特性を考 察してもらう。

 

方法

参加者 女性 56 名,男性 24 名

実験器具 メジャー、記録用紙、質問紙

手続き

実験開始前に参加者の性格要因を測定するため1つの尺度に回答を求めた。使用する尺度は親和動機測定尺度(岡島、1988)であった。全26項目のうち、20項目のみ使用した。

 パーソナル・スペースの測定にはstop-distance法(Hayduck, 1978)を用いた。接近方向は、前面、背面、ならびに側面(右側面または、左側面)からの、全部で4方向とした。測定順序はランダムに行った。今回の実験では、対象者(接近者)は参加者と生態学的同性とした。対象者は参加者に向かってゆっくりとした一定の歩行速度で接近した。参加者は常に前方を向いて位置し、接近してくる対象者に「これ以上接近されたくない」と感じた時点で「ストップ」と声をかけた。観察者1(測定をする者)は、この時点での参加者と対象者との距離を測定した。観察者2(記入をする者)が報告された距離を測定用紙に記入した。

 視覚的接触について、以下の条件で4方向すべてにおいて距離を測定した。

・直視条件

前方正面からの接近については、対象者と参加者はお互いを直視し、アイ・コンタクト(eye-contact)をとった。側面からの接近の場合には、参加者は前方を向いて位置し、対象者は参加者の横顔を直視した。背面からの接近の場合には、対象者は参加者の後頭部を直視した。実験開始にあたり、参加者には以下の教示を与えた。

「床の印を付けた位置に、常に前方正面に向かって自然な姿勢で立ちます。対象者が所定の方向から接近してきますから、あなたがもうこれ以上は近づかれたくないと感じた時点で『ストップ』と声をかけてください。対象者は、背面を含めどの方向から近づく場合でも、あなたを見つめています。」

 

結果

 まず、男女別に4 方向の測定値と親和動機測定尺度の、平均値と標準偏差を算出した(表1)。4方向の測定値をもとに、男女別に個人空間の大きさと形状をプロットした(図1)。

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