心理学実験Ⅰ 系統位置効果課題レポート【評価S】(聖徳大学)表・図・考察・引用文献付き
自由再生法による系列位置効果
問題
系列位置効果とは、リスト形式で呈示された材料を記銘・学習する場合、各項目の成績が リスト内でのその項目の位置の影響を受けることをいう(篠原,2004)。リストの冒頭部で呈示された項目の成績が優れていることを初頭効果、終末部で呈示された項目の成績が優れていることを新近性効果と呼ぶ(佐藤,1999)。系列位置効果はきわめて頑強な現象であり、系列学習、自由再生などさまざまな実験パラダイムで観察される。また熟語などの言語材料のみならず、音や線画など非言語材料の記憶でもみられる。
一定の刺激材料を継次的または同時に提示し、適当な時間経過の後に記銘された材料の再生を求める方法を再生法という。そして、再生の順序に条件を設けず被験者の自由に任せる場合を、とくに自由再生法という(海保,2005)。
記憶研究の古典である短期記憶と長期記憶という概念は、この研究方法から生み出されたものである。
目的
自由再生法の課題において、直後再生条件と、妨害課題を挿入したあと再生させる遅延再生条件とを設け、それらの間で項目の提示順序と再生できる確率を比較する。
<仮説>
1. 各条件における新近性効果の比較(妨害課題が再生率に及ぼす影響)
直後再生条件には効果が見られるが、延滞再生条件には見られない。
2. 各条件における初頭効果の比較
初頭効果は各条件において同程度に見られる
方法
参加者 日本語を母国語とする者
装置 一定の時間間隔で学習条件を1つずつ提示する刺激提示装置(カードの束等)
学習材料
・課題リスト:親密度が高い(NTTデータベースで5.0以上)漢字熟語40語
・解答用紙
実験条件
本実験では参加者を2グループに分け、一方を直後再生条件、もう一方を延滞再生条件に参加させた。
直後再生条件:刺激提示後、即座に再生を求めた。
延滞再生条件:刺激提示後暗算をさせ(妨害課題)、その後再生を求めた。
手続き
刺激語をランダムに並び替えて、課題リストを作成した。A4サイズのコピー用紙1枚を横向きに使用し、1行あたり10単語ずつ、4行に分けて上から下に記入した。
直後再生条件:実験者は参加者に、「これから漢字2字の熟語10個を、1個につき1秒ずつ順番にお見せしますので、それを一度声に出して読み、よく憶えてください。提示が終わりましたら、どのような熟語があったのかを思い出して、思い出した順に記録用紙に記入してください。記入する順番としては、提示した順序と違っていても構いません。また、漢字で書けない場合は、ひらがなでも構いません」と教示した。そして、「始めます」の合図とともに、刺激リストを1枚1秒の割合で参加者に提示した。提示方法は、課題リストの紙の上に白紙を重ねて、その白紙を1語分ずつ実験者がずらしていった。解答用紙への記入時間は60秒間に設定した。これを1セットとし、計4セット実施した。記入が終わったら、参加者が記入した熟語が何番目に提示されたものであったのか、つまり系列位置は何番かを集計した。
遅延再生条件:実験者は参加者に、「これから漢字2字の熟語10個を、1個につき1秒ずつ順番にお見せしますので、それを一度声に出して読み、よく憶えてください。提示が終わりましたら、2桁の数字をお伝えしますのでその数字に7を足し、その値にまた7を足し続けてください。90秒間計算をしていただき、“はい、やめて下さい”と合図しますので、漢字熟語に頭を戻し、どんな熟語があったかを思い出して、思い出した順に記録用紙に記入してください。記入する順番は、提示した順序と違っていても構いません。また、漢字で書けない場合は、ひらがなでも構いません」と教示した。そして、「始めます」の合図とともに、刺激リストを1枚1秒の割合で参加者に提示した。提示方法は、課題リストの紙の上に白紙を重ねて、その白紙を1語文ずつ実験者がずらしていった。ここでの記録用紙の記入時間は60秒間に設定した。これを1セットとし、計4セット実施した。記入が終わったら、参加者が記入した熟語が何番目に提示されたものであったのか集計した。
結果
本実験では再生率をデータとして扱った。参加者ごとに系列位置別の平均再生率を算出した(正解したのが4セットなら100%、3セットなら75%、2セットなら50%、1セットなら25%)。1人ずつ正答率を算出したのち、条件別に平均正答率を算出し(表1)、折れ線グラフによって条件間の比較を行った(図1)。
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