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変化のタネは自分の中に 『Alexandrite』 #279

光によって、色が変化する宝石があるのだそうです。代表的なのが「アレキサンドライト」。太陽光の下では、深い緑色、白熱灯の下では、艶やかな紫へと変色します。この特性から、「宝石の王様」、「神様のいたずら」とも呼ばれているそう。

希少性の高い、当然お値段も高い「アレキサンドライト」の指輪を母から譲られたレヴァインは、自分にその価値があるのだろうかと悩みます。女性名で女顔のためいじめられっ子だった彼の、自分探しの物語が成田美名子さんのマンガ『Alexandrite』です。

主人公のレヴァインがアメリカのコロンビア大学の学生という設定なので、日本とはだいぶ違うキャンパスライフが描かれます。実際、日本からの留学生・ハットリは、日本の学校システムに疑問を感じて留学したと語っています。

めちゃくちゃ手がかかるけど単位にはつながらないクイズ課題、サプライズ企画など、アメリカの大学生活って大変そー!

レヴァインの母は10代の頃、ギリシャからの留学生だったアレクサンドロスと知り合います。故郷のクーデターに参加するため彼は帰国。生死も分からなくなってしまったところに、妊娠が発覚し、彼女は生む決意をする。

そうして生まれたレヴァインは、空手と柔道の有段者なのに、とにかく自信がないんですよね。義父との関係はぎくしゃくしているし、初恋の相手アンブローシアは個性の強い人だし、親友のジェイクは変わり者だし。

周囲の目を気にしすぎてしまう性格だったレヴァインが、自分のチカラを再発見するシーン、「ただ生きるって、こういうことか」と納得するシーンは感動的でした。

「成長」という言葉には、元々自分の中にある能力を伸ばす「伸張」と、今までできなかったことができるようになる「拡大」があると思います。もちろん相互に関係しながら自分を育てていくわけなので、今までできなかったことをできるようになりたい、と思っていたら、そちらには手が届かなかったけど他の能力がめっちゃ伸びてた、ということもあるはず。

光によって色が変化する宝石「アレキサンドライト」は、変化する要素を自分の中に持っています。光の当て方で見え方が変わるだけ。まったく違う自分へと脱皮するのではなく、そのどちらも自分。レヴァインのように自分を「発見」できるといいな。


『Alexandrite』はKindle版が出ています。

コミックシーモアはこちら。


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