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ピカピカの靴で出かけたい 『大東京ビンボー生活マニュアル』 #283

怒らない人、というのは信じてもいいのか、気持ちを隠しているのか、ちょっと戸惑うことがあります。

たとえばSNSのプロフィール欄に「発言は個人の見解です」と書いてあると、なんだかモゾモゾしてしまうのです。「言いたいことは言わせてもらいます。でも会社とは関係ないし、責任はとれませんから」と、予防線を張られているような気がして、やっぱり信じてもいいのか、気持ちを隠しているのか、戸惑います。個人アカウントって個人の発言じゃないの? それをわざわざ断らないといけないの?という気がしてしまうから。

『大東京ビンボー生活マニュアル』の主人公コースケは、「怒らない人」です。どちらかというと無口で、できないことをできると言ってしまうタイプでもない。だからなのかな。のん気にブラブラ暮らしているコースケには、ウソがない印象があります。

彼はあまりイヤな目に遭わないのですが、それは彼がネガティブな受け止め方をしないからかもしれません。だからといって、何も感じてないわけではなく、東京生活を自分のペースで送る青年の物語。それが『大東京ビンボー生活マニュアル』です。

東京で、ビンボーだけど豊かに暮らすために欠かせないこととは?

靴をピカピカに磨いておくこと!!

究極の「持たない暮らし」をしているコースケの持ち物は、お父さんからもらったカシミアのジャケットと、革靴くらい。テレビもラジオもありません。ポテトチップスをスープにしたり、牛丼の食べ方にこだわったり、たぶんめちゃくちゃ、みみっちい話なんだけど、すごく気持ちが楽になるんです。

「怒らない人」だからイヤな目に遭わないのか、ネガティブに受け止めないから結果的にイヤな目に遭ったと考えずにすんで「怒らない人」になれるのか。

卵が先か、鶏が先かみたいな話ですが、なぜコースケはこんな暮らし方ができるのかという疑問もあるんですよね。時代としてはバブルの頃らしいので、世の中の浮かれっぷりとは別世界すぎて。

欲がないから。

それが原因なのかもしれません。コースケには定職がなく、時々頼まれてアルバイトをするくらいです。モラトリアムな生活ともいえますが、刹那的でもないし、「何者かにならなければ」という焦りもない。でも、彼を笑う気持ちにはなれないんです。以前のような「欲」に支配された生き方はもうできない気がするから。

半強制的な「巣ごもり」状態を経て、今後は働き方も暮らし方も変わっていくと思われます。家時間を充実させる情報も、苦境に陥ったお店をサポートするシステムもあるけれど。まずは自分を機嫌良くさせたい。

今度、外に出かける時には。

ピカピカの靴で出かけたい。


『大東京ビンボー生活マニュアル』はKindle版が出ています。1話完結なのでサクサク読めますよ。

コミックシーモアはこちら。


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