見出し画像

自分の居場所を探す旅 『NATURAL』 #278

「申し訳ありません。すいません」

簡単に謝罪の言葉を言う後輩に、「なんで謝るの?」と聞いてみました。考えてみるといけずな質問ではありますよね。案の定、返事は。

「無理をお願いしてるのでなんとなく」

わたしは「謝罪」よりも、「無理を通す」ことのない進行ができるようになってくれる方がうれしいので、そのことを伝えて、こう言います。

「簡単に謝っちゃダメ」

一方で、謝罪という言葉が辞書にないのか!?と感じる人もいます。たとえば、うちのダンナです。これは話が長くなるので、また今度。

謝ることの難しさ。タイミング。そして、謝罪を受けてどのように“許し”を伝えるのか。

わたしは成田美名子さんのマンガのファンで、昔からずーっと読んでいます。「自分の居場所を探している」人物たちが登場するのですが、『NATURAL』で描かれたのは、故郷を離れた少年の“居場所”探しであり、“許し”のあり方でした。

9歳でペルーから日本へとやって来た少年・ミゲール。養父母の家から日本の学校に通い、バスケ部と弓道部に所属する高校生です。少しずつ日本の生活になじんできた彼に、ペルーでの悪夢が蘇り、身の危険が迫って来て……というお話です。

外国人の友人の差別問題、弓道の先輩との関係、義姉である理子への想い。

青春ストーリーに、異邦人の目線が加わるので、深い感動を味わえたマンガでした。

たとえば、ミゲールの友人アリーシャの話。黒人系イギリス人の父と日本人の母をもつアリーシャは、母との折り合いが悪く、母の恋人に狙われていることも感じています。大好きなジュニア(ミゲールの友人)はいまいち相手にしてくれない。

そんな中でイギリスの父を訪ねたアリーシャは、自分の“日本名”を知ります。

「初めて大地に立った気がしたの。わたしがわたしになった気がしたの」

ふたつのアイデンティティを持ち、黒人の肌の色を受け継ぎ、日本という均質化された国で生きるのは簡単ではなかったことでしょう。彼女にとっては“日本名”が、「ここで生きてていいんだよ」という“許し”であり、“居場所”だったのです。

ミゲールはペルーでとある事件に巻き込まれ、日本に避難することになったわけですが、日本では考えられないほど厳しい現実を生きてきたらしい。そんな彼にとっての“許し”は、正義を振りかざすのとはまったく違っていて、「やさしい」という性質の意味も考えさせられました。

『NATURAL』は、昨日ご紹介した『花よりも花の如く』のスピンオフ作品。ミゲールが通っている弓道の先生が、榊原憲人のお父さんなんです。憲人の弟で、青森に養子に行っていた榊原西門が、めっちゃ「いい男」として登場しますよ。

故郷を離れたことがある人とない人では、さみしさのあり方が違うのかもしれません。

こちらもKindle版が出ています。

コミックシーモアはこちら。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?