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第164回 芥川賞予想その②

3. 砂川文次 「小隊」

「小隊」というタイトルからはにわかに中身の想像が難しかった作品。読み進めていくうちに、状況が少しずつつかめてきます。現代に戦争が起こったら?その前線にいる小隊に属する者の視点。ある意味、SFなのだが、戦局の状況や、当たり前に登場するSNSが、危機感も安堵感もないまぜになって流通する現代社会をよく現していると感じました。前線の雰囲気がリアルなだけに、ふと現実にも感じられる描写は巧みです。登場人物の会話がライトで良い。

序盤の評価:★★★☆☆

4. 木崎みつ子 「コンジュジ」

主人公はせれなという少女で、せれながリアンに恋焦がれるというお話。まだ序盤だけれど、私は「せれな」と「リアン」に恋をしてしまった。いきなり何をと思われるかも知れませんが、理屈ではないのです。惹き込まれる。それが、この小説の力なのかもしれません。

主人公はなかなかに残酷な境遇に置かれていると思うが、シニカルでウィットに飛んだ情景描写とテンポの良さが痛快です。ここでは1番心に来た部分を抜粋したいと思います。

"「リアン・ノートン」呪文を唱えるように呟くと、体が風船のように膨らみ、小鳥と一緒に青空を飛べそうなほどの幸福感に包まれた。同時に小鳥にくちばしで風船を割られ、真っ逆さまに墜落するような切なさも込み上げてきて、今にも気が狂いそうだった。愛は苦しいものだ。だが水を得た魚のように気分がいい。心臓も金色に輝き出しているはずだ。"

如何でしょうか。言葉が軽やかに連ねられていて、心地よい浮遊感とリアリズムがやって来ませんか。私にはそう感じました。

序盤の評価:★★★★★

以上で、4冊のレビューは終了です。それで受賞作品の予想はどうするの?とお思いかも知れません。

予想は、宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」にしたいと思います!

レビュー書いてないのにめちゃくちゃかもしれませんが、まずタイトルにやられましたし、題材の秀逸さと話題性から、これしか無いと思います!

さて、発表が楽しみですね。受賞作品が発表されたら、最後まで読んでまたレビューしたいと思います。また、受賞に関わらずコンジュジは気になるので読みたいですね。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

予想が当たったら受賞作の単行本を購入してレビューしたいので、宜しければポチッとお願いします。



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