天然パーマに補助金を
梅雨が終わらない。当たり前のように、毎年恒例行事と言わんばかりに、髪の毛が爆発している。アイロンで整えても、ワックスで固めても、高級シャンプーを使っても、髪の毛は私の言うことを聞かない。私自身、親の言うことを聞かないことなんてほとんどなかったのに。自分の髪の毛の方がよっぽど自我を持っているの、なんなんだ?
進化の中で「天然パーマ」という毛質を生み出して、人間はどうしたかったのだろうか。毛根をクネクネフワフワに曲がらせることによって、頭へのクッション性を上げようと思ったのだろうか。大昔はストレートより天然パーマのほうがモテて、子孫を残しやすかったのだろうか。考えるほど、自分の天パDNAへの諦念と怒り憎しみが込み上げてくる。
天然パーマは悲しい。いつだって髪がチリチリクルクルフワフワなのだ。健やかなる時も、病める時も、嬉しい時も恋している時も人に説教している時も、髪がチリチリクルクルフワフワなのだ。好きな髪型、おしゃれな髪型にするのも時間がかかる。例えばハーフアップ。表面の髪の毛をかきあげると、その中にある大暴れの髪の毛が続々と顔を出してくる。それらを丁寧に伸ばすところからヘアセットが始まる。ストレートヘアの人の2倍は時間をかけているのではなかろうか。これはストレートヘアに生まれていれば必要のない時間だったのだ。また、髪の毛に水なんて掛かったもんなら、天然パーマはらんま1/2のように一瞬で姿が変わってしまう。セットしたストレート→天然パーマへ。この間1秒だ。
私は天然パーマを許していないので、縮毛矯正を定期的に行っている。一回1万円強、2時間程度施術にかかる。高いし面倒臭いが、うまくいけばそれは魔法のようだ。自分が天然パーマであることを、数ヶ月間は忘れさせてくれる。罪人でもないのに、私はその数ヶ月間は何かに許された気持ちになるのだ。縮毛矯正をかけ始めた当初は、半年間はその魔法に浸れていたのだが、今ではどうだろう。1ヶ月半ほどで最初の暴走、うねりが始まるようになってしまった。ヤンキー生徒と同じなのだ。どんなに怖い先生が指導しても、慣れれば数ヶ月で目を盗んでタバコを吸い始める。これは死ぬまで終わらないイタチごっこだ。
天然パーマで良かったことと言えば、「パーマの強さでその日の湿度、この後雨が降るかがわかる」くらいだ。いらねぇ。マジいらねぇ。2020年やぞ。ネット社会やぞ。さらに日本に強く根付く「サラサラストレート女至高論」が天然パーマたちをさらに苦しめる。私も橋本環奈ちゃんや新木優子ちゃんみたいなサラサラロングヘア手にしてみたかった……天然パーマで美人って……いなくないか…………?
今の調子で縮毛矯正がどんどんかかりにくくなると、40・50代には私の髪はごくせん、クローズZERO、HiGH&LOWのようなヤンキーたちがやりたい放題で誰も手をつけられないチリチリフワフワゴワゴワヘアになってしまう。早く技術が発達して、髪の毛、いやDNAから曲がり切った根性を叩き直してくれないだろうか……ヤンクミみたいな……金八先生みたいな…………GTOみたいな…………そんな救世主を……………
とにかく、今は縮毛矯正をするお金がないので「天然パーマ補助金」が欲しい。天然パーマ、世間から優遇されないかなあ。