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消えない自己同一性

朝、部屋を覗くと、認知症の義母は、

「おはようさん」

と挨拶をする。

食べ物や自然、挨拶など多くの言葉に「さん」づけするのは関西特有の言い方らしい。
「お豆さん、お芋さん、お揚げさん、神さん、仏さん、お馬さん、おめでとうさん、お月さん、うんこさん…」

アメ玉だけは親しみやすいように「ちゃん」づけで「アメちゃん」になったそうな。

以前の義母のバッグには、必ずアメちゃんが入っていて、「アメちゃん食べや」とよく配っていた。
まさに、典型的な「大阪のオバチャン」だった。


とある朝の、夫(義母の長男)と義母の会話

「おはよう。」

「おはようさん。」

「ほな、会社行ってくるで。」

「えぇーー!?行くのー?飛行機で?」

「あ、あぁ、電車やけどな、ほなな。」

「しょうちゃん(義母の兄)は、朝早いんやなあ。」

息子がわからなくなることがあっても、乗り物がわからなくなることがあっても、毎朝「おはようさん」と言う義母のアイデンティティーは、変わらず大阪人なんやなあ、と思った。

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