マガジンのカバー画像

安全保障の書評と評論

80
運営しているクリエイター

2018年7月の記事一覧

書評:『ローマ人の物語』(塩野七生)全巻



塩野七生さんの『ローマ人の物語』を全巻kindle版で読んだ。本当に読んで良かったと思うし、面白かった。

この本は、ローマ帝国の成り立ちから、西ローマ帝国の滅亡までを一貫して描写した本である。ローマ皇帝というリーダーが何をしてきて、ローマ帝国という組織がどう運営されてきたのかが、よく分かる。

その中で、勉強になるのが、リーダーの在り方である。成功した有名な皇帝のやり方や組織運営の仕組みも大

もっとみる

書評:『ローマ世界の終焉──ローマ人の物語[電子版]XV』(塩野 七生)



ローマ帝国を滅ぼしたのはローマ人とローマ皇帝自身であったと思う(ちなみに、この本が描くローマ帝国は、分裂後の西ローマ帝国であり、東ローマ帝国はしばらく生き続けるが、ローマ帝国的ではない)。

まずは、最後のローマ人と言われた蛮族の父を持つ将軍スティリコ。繰り返す内戦で弱体化したローマ帝国において、軍を組織して、蛮族を叩き続ける。蛮族と戦えば勝てるのであるが、蛮族が領土に入ってくる前に叩くのでは

もっとみる

書評:『キリストの勝利──ローマ人の物語[電子版]XIV』(塩野 七生)



今のイスタンブールに首都を移し、キリスト教の国に衣替えした皇帝コンスタンティヌス。その次は、3兄弟と2叔父の分散統治から始まるはずであったのだが、実際におきたのは兄弟喧嘩でしかなかった。

生き残ったのは、次男の皇帝コンスタンティウス。まずは叔父を殺し、兄弟を殺しとやっていて、いざ唯一の皇帝になってみたものの、この時代は、蛮族が略奪を繰り返しているので、一人では広大なローマ帝国を統治することが

もっとみる