見出し画像

【 #3Dプリンター 】Nova 3D: Bene 5【レビュー】


323工房のオペレーターJです。

当工房での3DプリンターはNova 3D社製で開始し、現在4台のプリンターで活動していますが、そのうち3台はNova 3D社製となっています。

3Dプリンターを使っていると、

「どの機種が良いの?」

「どうやってその機種を選んだの?」

という質問をいただく機会が多く、せっかくですので、3Dプリンターのレビューも少しづつ増やしていきたいと思っています。


今回紹介するのはAmazonのリンクも貼っていますが、中国のメーカーであるNova 3D社製のBene 5になります。

お値段としては3万円弱とホビーユーズとしても求めやすくなっており、気になっている方も多いのではないかと思います。

当工房ではこの前の機種であるBene 4 monoも絶賛稼働中で、その出力安定性から多くの製品を生み出している主力機となっています。


Nova 3D社は他社製に比べると、その扱いやすさでは(一部を除いて)一歩前に出ている印象で、私たちも多くの人に進めています。

それでいて値段もお手頃となっています。

ただし、少し気をつけなければいけない点もありますので、その部分にも触れていきます。

【良い点1、堅牢な作りで故障が少ない。スクリーンはモノクロパネル。】

 3Dプリンターを選ぶうえで重要な点です。

 せっかく買ったのにすぐに故障してしまうようでは、どんなにお手頃価格でも意味がありません。

 その点、Nova 3D社は廉価版のElfinでもかなり粗い使い方をしながら1年以上は持ってくれたので、もっと丁寧に扱えば1年以上、更にそのElfinよりも丈夫な設計のBeneシリーズであれば、数年は間違いなく動いてくれます。

 3Dプリンターがどうしても直せなくなる故障の原因として大きいのは内部のCPU基盤かUVライト呼称で、こうなるとメーカーによる修理か新規に購入するかといった選択になってしまいます。

 それらの故障としては熱による劣化、もしくは3Dプリンター製品の材料であるレジンが付着してしまう、という原因が真っ先に考えられ、熱対策とレジンが触れないようにする対策、がいかに取られているかが重要です。

 Beneシリーズは熱対策のファンとフィルター、スクリーン周りからレジンが漏れないようにし、安定感が強いです。

 ただし、そのためにBeneは筐体の奥に大型のフィルターとファンを装備しているようで、他機種に比べると奥行きのスペースが必要になりますので、サイトで筐体のサイズはチェックしておく方が置き場所には困りません。

画像3

 *Bene5で造形中の様子

 もう一つはレジン製品を作成するために上下するアームとそれを支える筐体の強度です。

 この点、Beneシリーズは筐体に金属を使用していますので、強度が高く、よっぽど荒い扱いをしない限り、アームと筐体周りでの故障で困ることはないでしょう。

 時折、アームの軸を拭いてあげるだけで十分そうです。

画像1

Bene 5のアーム写真。

画像2

ちなみにBene 4では金属アームの支えのサイズが若干大きめでした。

しかし、これでは強度は十分すぎるのにコストがかかったのか、Bene5では少し薄目となっています。


【良い点2、バットの接続の仕方が考えられている。シート張り替えはモジュール式】

 Nova 3D社製の3Dプリンターはとにかくバットが良い印象です。

 Beneシリーズはバットが金属製ですので安定性が高く、がっちりとネジで固定されますので、印刷中もずれることはほぼありません。

 そして重要な点として、シート張り替えがモジュール式なので、メーカー販売のシートを購入すれば最低限のネジ締めで済むうえ、フィルムの張力調整が要りません。

 当工房ではこのモジュール式フィルムが当たり前だと思っていたところ、他メーカーでは自分でフィルムを張る形だったため、最初は大変戸惑いました。

 FEPフィルムは非常に薄くて傷つけやすく、傷が入ると造形物の生成に問題が出たり、最悪フィルムが破れてしまうとスクリーンにレジンが零れて故障の原因になったりします。

 その点、Nova 3D社製のプリンターですとフィルム交換が原因で事故が発生することが少ないので、とても助かっています。

 なお、モジュール式のバットは大型のプリンターの場合は現在はまだ採用されていないようなので、今後の採用を期待しています。


【良い点3、Wifi機能装備。】

 当工房としてはとても重要な装備の一つです。

 Wifi接続がなくても、USBに入れて接続するだけの手間なのにそんなに重要なの?と思われるかもしれませんが、実際とても重要です。

 3Dプリンターの作成ではデータの直しが非常に多いです。

 ちょっとした造形の違いや、設定(照射時間やアームの上下の速度)の違い、温度による違いで、造形物が上手く生成されないのは日常茶飯事です。

 そんな時にちょっと調整したデータをUSBに入れて、それを3Dプリンター側に接続して……と繰り返していると結構な工数になります。

 Wifiがついていれば、データを作った傍から3Dプリンターに転送できますし、どんなデータが3Dプリンター側にあるのかも確認できます。

 Nova 3D社製は安価なプリンターでもWifi機能が付いているのでとても重宝しています。


【良い点4、クリーニング機能あり。】

 これはどういう機能かと言いますと、ボタンを押すとバット内に一枚の薄い板を生成してくれて、生成中にできた破片やゴミがバットの底に残ったものを固めてくれるというものです。

 なので、清掃する際は、この板を剥がしてしまえば、バットが綺麗になるという寸法です。

 Bene 4 monoまではこの機能がなかったのですが、Bene 5では晴れて実装されました。

 他の3Dプリンターではお馴染みの機能だったのですが、コスト面から恐らく省略されていたようです。

 一応、薄い板のモデルを作って、プラットフォーム(造形物が付着する板)を外して作成すれば、同じような効果が得られたのですが、システムとして存在暮れる方がわざわざプラットフォームを外す手間もないので便利です。

画像4

Bene 5の設定画面。下段一番右に「バットを洗浄」が追加された。

画像5

こちらはBene 4 monoの画面。

微妙な変更点としては、スクリーンチェックがLCDチェックになり、言語設定は全般設定に組み込まれた。


【良い点5、音が静か。】

 メーカーはかなりこの点を売りにしていますが、実際に静かです。

 ほぼ同じ作りのBene 4 monoに比べるとアームの動作が柔らかくなり、音も静かになりました。

 ただ、正直Bene 4 monoでも十分静かだと私の環境では思いましたので、他機種を更に引き離すほど静穏性を追求する意味はあるのかな?という気もします。


【良い点6、値段が安い。】

 お給料の安い勤め人にとって大変重要なことです。

 このような良い機械がたった3万円弱で手に入る今の時代に感謝したいです。

 ただし、このコストカットのために、微妙に問題になった点もあるように思えるので後述していきます。


【微妙な点1、USBの接続が悪い。】

 Bene 5の微妙な点でとにかく残念なのがこれ。

 Bene 4までは内臓のデータストレージをもっていたのですが、Bene 5では外され、すべてUSBメモリで行うようになりました。

 結局USBのデータを読み込むので、わざわざUSBメモリから本体ストレージに移して……とやるよりは、USBのデータを使って印刷すればよいじゃん、というのは合理的そうです。

 しかし、その変更をしたにもかかわらず、USBメモリを接続する箇所が非常に弱い。そして、接続が切れやすい。

 このせいでなにが起きるかというと印刷中に接続が切れると、そこで中断された印刷物は中途半端なまま取り外して、また最初からやり直し、となってしまうのです。

 私はこのエラーで結構な数の印刷物を喪失しました……。

画像6

 ピンク色に光っているのが筐体の裏に接続するUSBメモリです。

 確かに筐体は3Dプリントしている際に微妙に振動しています。

 しかし、その振動程度でUSBメモリの接続が切れてしまうのはいかがなものか。

 差し方が悪いのかと思って何度も試してみましたが、根本的な解決になりませんでした。

画像7

 結局どうしたかというと、まぁアナクロ的なガムテープでメモリを固定して外れないようにするという応急処置。

 これでしばらく持てばいいのですが、結局Wifi機能主体なので、「本体ストレージは残してほしかった」というのが本音です。

 *しかし本体ストレージが壊れたらUSBから印刷できないとメーカー修理になってしまうので、それはそれで大変だろうと思うのですが、だったらUSB固定部分の設計は考えてほしかったところ。


【微妙な点2、メーカー製のスライサーは使いにくい。】

 3Dプリンター界隈には昔から"Chitu Box"という強力なスライサーツールがあり、無料でも十分すぎる機能を持っています。

 他の3Dプリンター機種はこのChitu Box利用を前提なのですが、Nova 3D社はどういう関係なのか、Chitu Boxをスライサーとしては初期段階では使えません。

 代わりにメーカー製のNova Makerなるスライサーソフトがあるのですが、これが機能は少なく、作られるサポートは外れにくく、サポートの設定もしにくいという、なんともなソフトでした。

 Nova 3D社としては自社製のスライサーを使ってほしいのでしょうが、Chitu boxの便利さには勝てないので、結構なユーザーは他のソフトを駆使して、Nova 3D社製プリンターに取り込めるようにしていた……のですが、いつまでもこのままではいけないと、最近 Nova 3D社も改良したNova makerを発表……したのですが、とてもChitu boxらしいUIと機能はあるものの、やっぱりイマイチ安定しないという出来でした。

 結局、Nova 3D社側も微妙に折れて、Chitu boxでスライスしたデータをNova 3D社のプリンター向けに変換できるようにしたプラグインを公開しています。

画像8

 Nova 3D社オフィシャルページから各製品のDownloadに行き、"ChituBox V1.0.7 Plug-in"をダウンロードする。


 なので、Chitu boxにこのプラグインを導入してデータを変換した後、Nova makerでWifiを使ってプリンターに転送しています。

 一応は解決……できるものなのですが、微妙に面倒くさいですね。


【微妙な点3、サイズ制限が(用途によっては)少しきつい。】

 これはもう3Dプリンターで生成したいものとその用途次第なのですが、130*80*150mmというサイズをどう捉えるかになります。

 現状、大型の印刷ができる機種もあり、それと比較してしまうと、Beneシリーズが一歩劣ります。

 しかし、生成物を安定してたくさん印刷したい、メンテナンスは簡易なほうがいいとなると、間違いなくこのサイズの機種を選んだ方が良いといえます。

 大型の3Dプリンターについては別途レビューも考えていますが、メンテナンス性はどうしても初心者には難しいです。

 特にスクリーン張り替えは難所で、これを避けられるだけでもBene 5を扱う理由はあります。


 サイズ的には数字だといまいちピンと来ないかもしれませんが、大体手のひらに乗せるくらいをイメージするとよいかもしれません。

 小物ぐらいならちょうどよいかもしれませんが、プラモデルを一セット作ろうと思うのでパーツ分割をしないと物足りないものしかできない感じです。

 しかし、光造形3Dプリンターは微妙にパーツ造形に難があるところもあるので、パーツ分割を増やすのは考え物……という煮え切らない話になってきます。

 今後、新機種や新たなアイデアによって便利になっていくとは思いますが、現状安定した機種だとこのサイズ、というわきまえが必要だと思っています。


【総評】

 間違いなく初心者向けとしては現段階でベストな選択といえます。

 しかし、USB周りとスライサーには注意が必要です。

 スライサーは仕方がないにしてもUSBはどうにかしてほしかったので、評価としては4/5としたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?