技術展で見つけた最新テクノロジー2選 @大阪産業創造館(元教授、技術展に行く。その8): 定年退職82日目
今回は、5月24日および6月12日に大阪産業創造館で開催された「接着・粘着技術展」および「Web販促&デジタル活用展2024」(タイトル写真:同展パンフより)で、特に衝撃を受けた2つの技術について報告します。
1.接着・粘着技術展
これらの技術は5月初旬に開催された「高機能素材Week @インテック大阪」でも注目を集めていた分野で、今回も進化に驚きました。特に注目したブースは、(株)セイホウの「多層ラベル」です。同社は医療や化粧品に特化したラベルの制作を行なっており、ブースでは高精度なラベルを実演していました。品質管理の検査手法も興味深かったのですが、今回は最新のラベルについて紹介します。
・ オーバーラミラベル
輸送中のラベルの不正開封を解決するために「オーバーラミネート」加工が施されたラベルです。このラベルはビンなどに自由に貼り付けられます(下写真)。ところが、一度剥がすと「VOID」という文字が浮き出て、再度貼り付けてもその字が残り、開封済みであることがわかるのです。医薬品などのセキュリティに重宝されると思われます。
・ バイアル多層ラベル、スクラッチラベル
最近では、薬品の詳細情報を紙の添付ではなくラベル内に記載するニーズが増えており、多層型ラベルが開発されました。記載事項の詳細が必要なときには、1層目のラベルを剥がすと中の情報が確認できます(下写真)。
また、「お薬服用確認カレンダー」の写真(下左)を見てもらうと、服用日にこのシールを貼っておき、のみ終わったら中の「のむ日」のシールを剥がすと「OK」の表示が出る仕組みで、忘れやすい人にとっては非常に助かるアイデアです。
さらに、スクラッチになっている多層シールもあり、何段階かで剥がしたり削ることで、下の文字が読めるので、楽しい使い方ができます(上写真、右)。医療用途だけでなく、パーティーグッズなど、さまざまな活用が期待されます。
2.Web販促&デジタル活用展
もう一つの注目技術は、アナログ業務のデジタル化を目指すこの活用展で見つけた、VR システムでした。VR 「Virtual Reality(仮想現実)」は、実際には特殊な VR ゴーグルを装着します。すると、映像が本物のように感じられ、さらに手の動きに応じてリアルに変化していきます。私は、(株)ファインのブースでこの VR システムを使った体験をしました。
・ VR システムを使ったさまざまな体験
VR を使った「住宅販売」のシミュレーションですが、驚きました。十年ほど前の VRでは、ほとんどがアニメ調で動きもぎこちないものでした。しかし今回は映像が自然で、外装や内装を自由に変えたり、時間ごとの景観シミュレーションができ、ほぼリアルの空間体験ができました。さらに、複数人で同時に回ることで、離れたところにいても共に体験し議論ができる点も画期的です。また個人的には、対面では気を使いますが、それがなくなることも嬉しく思いました。一方会社側も、従来の展示会を VR に置き換えることで大幅な費用削減と業務の効率化が期待できます。
今回は住宅販売の内覧会の例でしたが、自動車などのショールーム、工場見学、さまざまな空間シミュレーションなどに利用可能です。さらに、このバーチャル空間での様々な体験手法は、日本の高齢者問題の解決にも貢献するのではと感じました。
このようなメタバース空間の技術を体験すると、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「トータル・リコール」(1990)という映画を思い出します。その中で、彼は VR を使って火星旅行に行くのですが、途中から現実と仮想の境界がわからなくなっていきます。映画としてはそこが面白いところなのですが、どこか恐ろしさも感じました。もう、遠い夢の世界のことではありません・・・。