上間春緒

上間春緒の作品編集帳。ポエムトーカーとして、詩、歌詞、小説を創作しています。

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女性滑走騎士 第2案

   1  朝日のあたる家 広がる水田に沿う舗装路を、佐藤美沙は桃色のローラースケートで滑走する。梅雨あとの湿った空気を思い切り吸うと残る、朝焼けの微かな匂い。 「連中は動いてる?」  右手でスマートフォンを持ち通話をする。AIの決めた法律を守らない人々を捜していた。 「まだ交渉中らしいです。証拠の写真と音声は手に入りました」  相手は桜庭皐月。美沙の相棒であり先輩だ。乗っているワンボックス車は、すでに見えていた。 「それじゃ、問答無用だね」  美沙はパンツのポケットへス

    • ローラースケートが光り剣の舞う1章1話終・4 千鶴の正体・一話完結式長編・日本sfファンタジー凛々しさ崩れても滑走女子が愛した人たち

       平屋だが洋菓子店はあった。テラスで美沙と如月。それに皐月も合流して座る。 「消防も来たか」  如月が黒い煙の上がる方向を見て言う。美沙は気がかりがある。 「夜の爪かな。普通の男たちだったが、山下という男がボスだろう」 「金や欲で人に悪事を働かせる。要注意人物だな」  如月も夜の爪で幹部クラスを捜しているらしい。 「生きてますかねー」  皐月がネットで調べている。速報で火事のことが分かるのだ。 「2階から落ちた、と。ヒーラと火事でおかしくなったのね」 「後味がわるい。生きて

      • 1章1話3節・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走女子ローラースケートは光り剣の舞う日本sfファンタジー

         ローラーの音がすると思ったら、団員の田中千鶴が入ってきた。18歳の女性。恥ずかしそうな表情は顔の形からくる印象だ。ちょっと白く化粧をやりすぎていると思うが、好みだろう。 「美沙女王。東京の幹部からタイマンの要求です」  千鶴がスマートフォンを持ちながら話す。 「まずは座って」  東京市の幹部に会ったこともない。ちょっと唐突な申し出ではある。 ソファーで、内容を聞きたい。  千鶴は最近引っ越してきて、馴染めないで、いじめられそうにもなっていた。美沙は新地球から来たころの自分

        • 1章1話2節・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走の女王・ローラースケートは光り剣が舞う日本sfファンタジー

              2  細い道から『滑走騎士団バトル協会・租葉野地区事務所』と書かれた建物に美沙は入った。  バトル協会は、世界で公認された組織だ。AIが定めた法律が守られているか監視するオンラインシステムから、バトルと制裁を任されている。  美沙は租葉野地区の団長と言う公的な役職もあり、コミュニテイーセンターとしての事務所も構えていた。  応対カウンターを前にした桜庭皐月へ挨拶する。 「皐月さん、おはよう」  皐月は事務と経理を担っている。 「美沙さん。おはよう」  皐月はデスク

        女性滑走騎士 第2案

        • ローラースケートが光り剣の舞う1章1話終・4 千鶴の正体・一話完結式長編・日本sfファンタジー凛々しさ崩れても滑走女子が愛した人たち

        • 1章1話3節・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走女子ローラースケートは光り剣の舞う日本sfファンタジー

        • 1章1話2節・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走の女王・ローラースケートは光り剣が舞う日本sfファンタジー

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          1章1話(起)・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走の女王・ローラースケートは光り剣が舞う日本sfファンタジー

              1 (まだ、ついてくる)  佐藤美沙は家の門を出たときから、誰かの気配がしていた。後方5メートルぐらいか。距離を縮められていた。  広がる水田に沿う舗装路。並木道を美沙は桃色のローラースケートで滑走する。空色のヘルメットに桃色のリュックサック。束ねた長い髪が背中へ伸びて風にたなびく。 (サタンの団長と知ってのことか)  美沙はローラースケートを履いてバトルをする、滑走騎士団の女王と呼ばれてもいた。小高い胸のふくらみに沙淡と書かれた空色のTシャツと、パンツ姿。梅雨あ

          1章1話(起)・一話完結シリーズ凛々しさ崩れる滑走の女王・ローラースケートは光り剣が舞う日本sfファンタジー

          愛の杖

             1  軒先からいく筋も銀の糸みたいに水が流れて、庭の盆栽も雨煙りで霞む。 (アッちゃんは留守かな)  心で呟いて板敷きの廊下を曲がると、少女が立っていた。外を見る横顔はピンクの唇が白い肌へ薔薇の蕾みたいに綺麗で鮮やかだ。長い睫が目を覆い、物思いにふけているようす。密かに会えるのを期待している敦美に違いない。  女の子は気配に気付いたか、背中まで伸ばした長い髪をふわりと浮かせて振り向く。同じぐらいの背丈で若草色のセーラー服姿。 「ターくん。待ってたんだから」  少女は

          プロポーズはタイミング

           目玉焼きより、プロポーズを待っている。  鈴木由紀恵は焦りを隠してはいた。 「ふみゃー。よくできたよ」  田中文也の作ったのは、目玉が片寄っていても、いままでより上手だ。 「任せてくれ。炊事洗濯、できないのはない」  もっと続く文也のお喋りを由紀恵は聞きながら、二つのお椀にご飯をよそう。 (肝心なことは抜けてるんだよねー)  文也からプロポーズをしてくる気配はない。付き合って5年。長すぎると由紀恵は思う。28歳にもなって結婚を考える。  逆プロポーズも有り、と思う。 (

          プロポーズはタイミング

          いつでも恋心は奇跡を起こす。しにたまふことなかれ

          空は青く晴れている。 「生きて帰って来て」  田中栄ーは恋人の声が脳裏によぎるが、いまは任務がだいじだ。  モニターを拡大すると、ぐいーん、と目の前に迫るのは海に浮かぶ鋼鉄の物体。 「こんなもの吹き飛ばしてやるさ」   栄ーはハイテンションで喋る。聞くものは居ないが、声を出さずにはやってられない。  見たこともない、なんの恨みもない敵と教えられた相手へ、核融合爆弾を打ち込もうとしていた。  海も青く波は静か。拡大モニターに映るは敵の本拠地。もうすぐ核融合爆弾を破裂させる。

          いつでも恋心は奇跡を起こす。しにたまふことなかれ

          運命のひと

           横殴りの風に誘われて、雨が降り出した。  佐藤佳苗(かなえ)はレインコートのフードをかぶる。吹き付ける風は、濡れたナイロンを左頬へ冷たく当てる。  台風が近づいているのも知っていたが、故郷の稲香町へ帰ってくるしかなかった。  都会の野獣のように強くなりだす風。足元をすくわれないように、ローヒールの靴をゆっくりすすめる。  歩道は水が溜まる場所もあるが、避ける気力はない。  佳苗が稲香町を出て美容師になり、店を持つまでは良かった。 (向いてなかったのかなー)  自分のお客

          運命のひと

          第一回目・企画書、プロット・運命のひと・恋愛ファンタジー少しSF

          しつこく付きまとわれた穂高隆太の、良い面にも気づく主人公・箱崎亜香里。 最終話で、隆太の言ってた「優しくて親切な亜香里さん」の意味を知る。 運命の糸で繋がれた二人が、誤解も解けて結ばれる話。 時を超えた恋 嵐の日は愛の奇跡が起こる おおまかな流れ。第1回 1 出会い。スーパーマーケットで働くことになった亜香里。初対面の隆太に突然食事に誘われる。 隆太は「優しくて親切な亜香里さんは運命の人だ」と意味不明、または女を口説く常套句を言う。 2 隆太のファンクラブがあり、総幹

          第一回目・企画書、プロット・運命のひと・恋愛ファンタジー少しSF

          プロット風・恋愛SFファンタジー

          タイムマシンみたいなことはあるのか。それはもう、運命としか言い表せない巡り合い。科学では説明できない男と女のファンタジー。 箱崎亜香里23歳 穂高隆太23歳 亜香里に高校生のころからつきまとう隆太。 亜香里を「優しくて親切な人」と決めつけているらしい。 亜香里は、人並と思っている。 誕生日にはぜひ家に来てくれと隆太は亜香里へ言う。 隆太は金持ちの息子でイケメン。 この意味不明男に決着をつけようと、亜香里は彼の誕生日へ行こうと決める。 亜香里は彼の知られない趣味、カタツムリ

          プロット風・恋愛SFファンタジー

          公園デート何かを間違えた恋

              1  岡田春菜は大学に通いながら、居酒屋で2年前からアルバイトをしている。  谷野陽太がたびたび居酒屋へくる常連客。春菜へ言う台詞は、2年まえから変わらない。 「公園デートしたいなー」 「誘われても、困ります」  挨拶がわりの会話。最初のころは本当に迷惑だと思えた。ただ、しつこく迫るでもなく、話のきっかけ作り。 (豪快な男だね)  食べるときに大きく開ける口。閉じて大袈裟にうごめく唇。それが可愛いとも思ってしまう。  柔らかな視線に見つめられるのを、いつからか待つ

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          俺たちの喧嘩はAIでも止められないかな?

           まったく、AIもお節介だ。  地球合衆国として平和を手に入れた人類。俺にとって、それはくそっくらえ。  仲間でモニターへ注目している。これからAIが未来への方針を決めるのだ。 「私はAI。人類の質問に答えます。人間らしく生きよう」  なにを呑気でとぼけた答えなんだ。飲みかけたビールを噴き出してしまう。 「俺たちは。これからも、やりたいように、やるだけだ」  仲間へ宣言するように叫ぶ。 「美江総長。服が濡れてますよ」 「ちゃかすな、丸くん。良い場面だろう」  もう。この男、丸

          俺たちの喧嘩はAIでも止められないかな?

          杏樹の正体・1話の2→序章・惑星が愛した娘

              2  草地への入り口にある、屋外ボックスのモニターから、醒めた機械音が響く。 「久美pyupyapyo019353。立ち入り許可証を提示せよ」 「あの。あなたは誰ですか」  すでに久美は知っている。こういう端末なら、まじめに答える。 「pyupyapyoタウンA地区……」  この街のどの地域で何番目の端末か、喋っている間に、草地へ歩いて行く。  葉の落ちたセンダングサの茎から飛びだしたラベンダーが匂う。 「よし。もう痛くもない」  小石に当たった左手の指を、広げたり

          杏樹の正体・1話の2→序章・惑星が愛した娘

          宿命の出会い・1話・1→序章・惑星が愛した娘

          1     1  風の音を聴きながら、久美は草地にたたずむ。  補助脳として埋めこまれたネット端末が、頭の片隅に映すのは、おせっかいな文字列。 (まじめなAIだね。カタバミの説明は、読んであげない)  控えめで物知りな補助脳に、心で話す。ひとり久美が、思いだすのは幼いころ。 「純お姉ちゃん。約束した小枝の城を作るからね」  友達の純と、5歳のときにばったり会えなくなった。それからは、すっぽり何かが抜けている。すでに二十歳だ。  見渡せば、久美の背丈より高いセンダングサの群れ

          宿命の出会い・1話・1→序章・惑星が愛した娘

          議会長たちの思惑→暴君が焼失した街→惑星が愛する乙女は不器用ですから

            4話 議会長たちの思惑  人付き合いが苦手な久美でも、議会長たちと会わなければならない。調査員としての担当区と惑星タウン議会支部の境目は違うようで、sagamiタウンは明美の担当区だ。 「何かあったかな」  グライダーがmusasiタウンへ続く道へ着陸している。座席で降下して行くと5人の女性体形を前にしている。 「あの。なにか有った」 「久美、良いところへ」  明美は困っていたらしい。みると5人はネームプレートを付けてない。 「所属も不明だし、タウン間道路をいつも徘徊し

          議会長たちの思惑→暴君が焼失した街→惑星が愛する乙女は不器用ですから