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水野ダイアリー 3月1日〜31日

【水野ダイアリーとは】
水野がデイリーに書いた手記を1ヶ月分まとめて公開しているものです。

3月1日 「終末感」
3月2日 「自力覚醒顔」
3月3日 「疑惑」
3月4日 「宇多田のボイラー」
3月5日 「鍋なのに」
3月6日 「平成のデタラメ」
3月7日 「バランス(厳しめ)」
3月8日 「日本兵」
3月9日 「信じております」
3月10日 「「確率」
3月11日 「向こう側」
3月12日 「自分の利益に対してどこまでも貪欲にならなければ原宿(このまち)で生きていけない」
3月13日 「感動体験創造企業」
3月14日 「こないなーじゃなくて」
3月15日 「霊体喫茶」
3月16日 「木 VS 現代音楽 」
3月17日 「バナナワニ」
3月18日 「がんばっちゃ王」
3月19日 「好きなインチキで生きていく」
3月20日 「マジレス」
3月21日 「聴こえ」
3月22日 「全く記憶がない」
3月23日 「ボンカレー」
3月24日 「サタニズムの信奉者」
3月25日 「マルサ vs ヒーリング」 
3月26日 「自覚」
3月27日 「買わねば(嘘)」
3月28日 「宝石と庶民」
3月29日 「続・アンダーのヤクザ」
3月30日 「はがし」
3月31日 「finalfantasy(公式)」

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3月1日 「終末感」

 世間はどうなのか分からないが、最近身の回りの人は全くテレビを見ていない。自分も銭湯に行ったときくらいしか見ないが、久しぶりに家で視聴したら、ひたすら有名焼肉チェーン店の人気メニューランキングをお笑い芸人が当てたり、ローソンおにぎりのこだわりのクイズにみちょぱのような方が答えるなどの企業案件を公共の電波で放送し続けるという想像以上の末期的様相を呈していた。しかもPRみたいな番組の合間にも普通にCMが入ってくるので意味が分からない。まだまだやっていけている感じはあるものの、これから先の数年で今まで当たり前だったものが終焉になっていくところが見られるんじゃないだろうか。mixiやニコニコ動画から人がいなくなって閑散としたときのことを想像した。状況を見届けたい。欲を言えば、せっかくだからもっと終末の感じを出して欲しいのに、テレビ独特の予定調和で無難な感じだけはしっかりと維持されている点が気になる。もっとしっちゃかめっちゃかにならないとダメだろう。これからはサービス終了直前で毎日ダイヤ1000個配布しているソシャゲのような禍々しさを画面全体からガンガン醸し出していくべきなんだよ。閑散としているときのmixiって案外居心地良かったし、全国で300人くらいしか見てないぐらいの感じになったら放送枠を買って楽天市場の最悪レビューをひたすら読み上げるだけの番組をやってもいいなとか思った。

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3月2日 「自力覚醒顔」

 自力覚醒顔ってありますよね、と言われて、私の脳裏に岡本太郎、コシノジュンコ、草間彌生、川端康成などの自力覚醒偉人の眼差しが光った。確かに自力だ。せっかくなので他力覚醒顔と比較してみようと思って薬物で逮捕された芸能人を検索したところ、他力覚醒顔というか薬物で覚醒している感じになっている人は、本人は覚醒しているつもりでもはたから見ると覚醒とは逆のような状態に陥っているので、やはり覚醒は自力に限るんだなと思った。川端康成は睡眠薬などの愛好家としても有名だけど、覚醒の方に関しては自前でやっている説得力を目の奥に感じた。

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3月3日 「疑惑」

 テレビを付けたら羽鳥慎一の目が死にきっていた。目が死んでる人はたまにいるけど、死にきっている人は見たことがない。鯛の有頭活け造りのような目である。大丈夫か、と思ってたら「花粉症で目が大変なことになっているのでみなさんも気をつけてください」とか言っていた。花粉症だけで、こうも目が死に切るだろうか。私の中に一つの疑惑が生じた。

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3月4日 「宇多田のボイラー」

 私の実家は日本酒を造っていて、冬になると新潟の農家の人とかが出稼ぎで働きに来ていた。その人たちが宿泊する社宅に大きい風呂を沸かすボイラー室があった。私は大体その辺りで隠れてゲームボーイをやっていた。そうするといつも、ボイラーの機械がシャワワアァァーッと派手に唸る音を上げていた。その音が宇多田ヒカルの楽曲『cay you keep a secret』のサビ前の

少しの冒険と傷付く勇気もあるでしょ fuuu haaann~

の後に流れる謎のSFっぽい音に酷似していたので、私は『cay you keep a secret』を聴くと毎回ボイラー室の匂いを思い出す。人生の角はそういう記憶で徐々に取れていってまろやかになるんだと思う。今日もそういう感じだった。春っぽくなってくる感じの角が年々取れて相当まろやかになっている。寿命際くらいになったら季節感の角が取れすぎて湯気みたいになっているのだろうか。老人の方が俳句がうまいのはそういうことだと思った。

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3月5日 「鍋なのに」

 読んだら絶対に影響されちゃうだろな〜と思いながら土井善晴『一汁一菜でよいという提案』を読んだ。二日前に読んだ。今日の私はamazonから午前便の宅配で「一汁」を作るための一人用の土鍋が到着するのを今かと待ち焦がれている。届いた土鍋を即開封すると、想像以上に焼きが甘い。ふわふわしている。空気を多く含んだ焼き味が味を美味しくするとか書いてある。「味を…?」と思ったが、とにかく土鍋を使いたくて仕方がない。ところが説明書を読み進めると「目止め」をしてください。と書いてある。「目止め」とは。土鍋には微細な穴があり、そのまま使うと漏れが発生することがあるので、定期的にデンプンを含んだお湯で煮込む必要があるらしい。そんなことって、あるんだ。考えてみれば、世の中はIT以外の技術も日々進歩しているので漏れる可能性があるものってもう身の回りには全然ない。「漏れ」という漢字を見るのも、『サクラテツ対話篇』(漫画『封神演義』の作者、藤崎竜が週刊少年ジャンプに連載していた中篇漫画。主人公の一人称が「漏れ」。2000年代のネットスラングを引用しているものと思われる)以来だ。長年身の回りになかったから、「漏れ」にウケてしまった。鍋なのに。

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